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本屋大賞を批判する人が知らない5つのこと

公開日:2014/04/07  更新日:2016/10/05
本屋大賞への批判

本が売れない時代。
理由は色々ありますが、とにかく本が売れません。出版業界の売り上げは年々減っていく一方です。

そんな出版業界において1つ、発表されるとメディアがこぞって取り上げる文学賞があります。
それが「本屋大賞」です。

本屋大賞は、いまやベストセラーを生み出す最強の文学賞と言っても過言ではありません。
中には本屋大賞に批判的な意見も存在します。
そんな本屋大賞についてアツく語る上で欠かせない5つのことをしっかりとおさえ、心ゆくまで本屋大賞について語ろうではありませんか。

【目次】

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【必修1】なぜ本屋大賞が生まれたのか?

日本の文学賞で最もよく知られているのは直木賞(直木三十五賞)芥川賞(芥川龍之介賞)の2つ。
しかし、2013年1月26日付の日本経済新聞の記事によれば、日本には文学賞が合計で200ほどあると言われています(漫画をのぞく)。

ここ数年で文学賞の数は増加傾向にあります。
本の販売額が下がり始めたのが2000年頃からですので、出版社や新聞社が本への注目を集めるために多くの文学賞を創設したといえるでしょう。
文学賞は本のジャンルや出版社、新聞社や自治体などが設けます。
よく知られている文学賞は主に出版社が主宰するものですが、中には自治体が観光客を集めるために創設した文学賞も存在します。

そんな文学賞の中でも異彩を放つ本屋大賞はなぜ生まれたのでしょうか。
本屋大賞を運営する「NPO法人本屋大賞実行委員会」の設立趣旨書にはこのように書かれています。

出版市場は書籍、雑誌とも年々縮小傾向にあります。出版不況は出版社や取次だけではなく、もちろん書店にとっても死活問題です。一方、出版点数だけは年間7万冊と年々増え続け、読者である一般市民にとっても膨大な新刊書籍の中でどの本を読んだらいいのか、送り手である出版社の一方的な情報だけでは判断できにくく不利益な状況にあります。
そういった状況の中で、商品である本と顧客である読者を最も知る立場にいる書店員が、企業の枠や日常の利益を超えて交流し、広く一般市民に対して本当にお奨めしたい書籍の情報を啓発する手段として本屋大賞を設立しました。
(中略)
これからも、より書店員の持つ読書情報を広く一般市民に伝えていくことで読書推進活動及び国民の文化向上に寄与していくために、本屋大賞の更なる発展、ホームページでの広報事業、一般に向けた機関紙の発行等の事業活動をおこなっていく予定です。(「本屋大賞」がNPO法人になりましたより)

このような経緯で本屋大賞は生まれましたが、なんと言っても重要なのが「書店員が選ぶ」文学賞である、という点です。
本屋大賞のコンセプトはひとことで言えば「売り場からベストセラーをつくる!」というもの。
直木賞や芥川賞をはじめとする、出版社主宰の文学賞は選考委員が作家のケースがほとんどです。
作家が本を選ぶため、どうしても一般読者の目線で選考をすることが難しいと言わざるを得ません。

書店員は自分が読んで、純粋に面白いと思った本を本屋大賞に推薦することができるため、一般読者に限りなく近い目線でオススメできるのです。

【必修2】どのようにして本屋大賞は決まるのか?

本屋大賞がなぜ生まれたのかを理解した上で、次におさえておきたいのが「本屋大賞の決め方」です。
従来の文学賞、たとえば直木賞や芥川賞は料亭に有名作家が集まって賞を決めていました。

一方の本屋大賞は書店員の投票のみによって決まります。具体的にみていきましょう。

本屋大賞はこうして決まる

  • 【選考期間】
    発表前年の11月〜当年の4月
  • 【対象作品】
    前々年の12月1日〜前年の11月30日の間に刊行された(奥付ベース)日本の小説(判型問わず)
  • 【投票参加資格者】
    新刊を扱っている書店の書店員(アルバイト・パート含む)
  • 【選考方法】
     1、 一次投票で一人3作品を選んで投票

    2、 一次投票の集計結果、上位10作品をノミネート本として発表

    3、二次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票。

    4、 二次投票の集計結果により大賞作品を決定
    投票の得点換算は、1位=3点、2位=2点、3位=1.5点 (2013年実施)

本屋大賞は毎年4月に発表されます。
投票に参加できるのは新刊を扱っている書店の書店員のみであり、古書店の書店員は参加できません。
まずは一次投票で選出された10作品がノミネート作品として発表されます。
その後、二次投票ではノミネート作品10作品をすべて読んだ上で、ベスト3を決めて投票を行います。10作品すべてを読む必要があるので、かなりのボリュームになる上、全作品に感想コメントを書く必要があります。
最終的には二次投票の集計結果によって本屋大賞が決定します。

毎年、獲得点数が本屋大賞のホームページに発表されますが、各年で得点数はだいぶ違います。
これは参加している書店員の数が異なること、そして圧倒的に人気のある作品があったり、その反対に得票の少ない作品があったりするため、得点数にバラつきが見られます。
ちなみに、2014年現在までの本屋大賞で過去最多得点を獲得した作品は2012年本屋大賞受賞の『舟を編む』三浦しをん(光文社)の510点です。

【必修3】本屋大賞の仕掛け人「杉江由次」

2004年にスタートした本屋大賞。その本屋大賞を立ち上げたメンバーの1人が杉江由次という人物です。
本屋大賞はいかにして作られたのか。その答えを杉江由次さんはこのように語っています。

2003年の1月発表の直木賞は「受賞作なし」でした。
私は出版社の営業マンとして書店員さんたちとはよく飲み会でお話をするのですが、この結果にはみんな落胆していました。有力な候補作がいくつもあったし、直木賞は売り場が動く賞ですからね。本が売れなくなってきている危機感を持つ書店員にとっては「それはないでしょ」という気持ち。「じゃあ、自分たちで何かをつくろう」というのが始まりでした。(「本屋大賞にはハズレがない」より)

杉江由次さんは書店アルバイト、医学書専門出版社を経て本の雑誌社に入社。現在は本の雑誌社で書店の営業をされています。
書店の現場、編集、営業と出版関わるあらゆる仕事を経験した上で、売り上げの伸びる直木賞が「受賞作なし」となったことに対しての危機感、そしてそれによって影響を受ける書店の将来を考えた結果、新しい文学賞をつくろうというのがはじまりだったのです。

【必修4】本屋大賞の受賞作を振り返ろう

本屋大賞を語る上で欠かせないのが過去の受賞作。
最新の受賞作だけでなく、過去の作品についてもきちんと語ることができれば本屋大賞がもっと楽しくなるはずです。
それでは2004年〜2014年までの受賞作品とノミネート作品を一挙に振り返ってみましょう。

2004年本屋大賞(書店員のエントリー数299名)

  • 【大賞】『博士の愛した数式』小川洋子(新潮社)202点
  • 【2位】『クライマーズ・ハイ』横山秀夫(文藝春秋)148点 
  • 【3位】『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎(東京創元社)111点
  • 【4位】『永遠の出口』森絵都 (集英社)109点
  • 【5位】『重力ピエロ』伊坂幸太郎(新潮社)99点
  • 【6位】『4TEEN』石田衣良(新潮社)76点
  • 【7位】『デッドエンドの思い出』よしもとばなな(文藝春秋)54点
  • 【8位】『終戦のローレライ』福井晴敏(講談社)51点
  • 【9位】『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦(講談社ノベルス)38点
  • 【10位】『ららら科學の子』矢作俊彦(文藝春秋)38点

2005年本屋大賞(書店員のエントリー数269名)

  • 【大賞】夜のピクニック』恩田陸(新潮社)374点
  • 【2位】『明日の記憶』荻原浩(光文社)302点
  • 【3位】『家守綺譚』梨木香歩(新潮社)274点
  • 【4位】『袋小路の男』絲山秋子(講談社)185点
  • 【5位】『チルドレン』伊坂幸太郎(講談社)155点
  • 【6位】『対岸の彼女』角田光代(文藝春秋)153点
  • 【7位】『犯人に告ぐ』雫井脩介(双葉社)138点
  • 【8位】『黄金旅風』飯嶋和一(小学館)102点
  • 【9位】『私が語りはじめた彼は』三浦しをん(新潮社)92点
  • 【10位】『そのときは彼によろしく』市川拓司(小学館)74点

2006年本屋大賞(書店員のエントリー数368名)

  • 【大賞】東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー(扶桑社)279点
  • 【2位】『サウスバウンド』奥田英朗(角川書店)196.5点
  • 【3位】『死神の精度』伊坂幸太郎(文藝春秋)190点
  • 【4位】『容疑者Xの献身』東野圭吾(文藝春秋)184.5点
  • 【5位】『その日のまえに』重松清(文藝春秋)179.5点
  • 【6位】『ナラタージュ』島本理生(角川書店)162点
  • 【7位】『告白』町田康(中央公論新社)152.5点
  • 【8位】『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男(文藝春秋)152点
  • 【9位】『県庁の星』桂望実(小学館)141点
  • 【10位】『さくら』西加奈子(小学館)135点
  • 【11位】『魔王』伊坂幸太郎(講談社)103点
  • (一次投票が10位タイだったため11タイトルで二次投票を行った)

2007年本屋大賞(書店員のエントリー数779名)

  • 【大賞】一瞬の風になれ』佐藤多佳子(講談社)475.5点
  • 【2位】『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦(角川書店)455点
  • 【3位】『風が強く吹いている』三浦しをん(新潮社)247点
  • 【4位】『終末のフール』伊坂幸太郎(集英社)228点
  • 【5位】『図書館戦争』有川浩(メディアワークス)176点
  • 【6位】『鴨川ホルモー』万城目学(産業編集センター)175点
  • 【7位】『ミーナの行進』小川洋子(中央公論新社)152.5点
  • 【8位】『陰日向に咲く』劇団ひとり(幻冬舎)139点
  • 【9位】『失われた町』三崎亜記(集英社)127.5点
  • 【10位】『名もなき毒』宮部みゆき(幻冬舎)89点

2008年本屋大賞(書店員のエントリー数1,037名)

  • 【大賞】ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎(新潮社)509.5点
  • 【2位】『サクリファイス』 近藤史恵(新潮社)312点
  • 【3位】『有頂天家族』 森見登美彦(幻冬舎)280.5点
  • 【4位】『悪人』 吉田修一(朝日新聞社)233.5点
  • 【5位】『映画篇』 金城一紀(集英社)227.5点
  • 【6位】『八日目の蝉』 角田光代(中央公論新社)225点
  • 【7位】『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹(東京創元社)213.5点
  • 【8位】『鹿男あをによし』 万城目学(幻冬舎)196.5点
  • 【9位】『私の男』 桜庭一樹(文藝春秋)129.5点
  • 【10位】『カシオペアの丘で』 重松清(講談社)126点

2009年本屋大賞(書店員のエントリー数1,072名)

  • 【大賞】告白』湊かなえ(双葉社)411点
  • 【2位】『のぼうの城』 和田竜(小学館)328点
  • 【3位】『ジョーカー・ゲーム』柳広司(角川書店)243.5点
  • 【4位】『テンペスト(上下)』池上永一(角川書店)228.5点
  • 【5位】『ボックス!』百田尚樹(太田出版)214.5点
  • 【6位】『新世界より(上下)』貴志祐介(講談社)207.5点
  • 【7位】『出星前夜』飯嶋和一(小学館)203.5点
  • 【8位】『悼む人』天童荒太(文藝春秋)203.5点
  • 【9位】『流星の絆』東野圭吾(講談社)139点
  • 【10位】『モダンタイムス』伊坂幸太郎(講談社)135点

2010年本屋大賞(書店員のエントリー数1,072名)

  • 【大賞】天地明察』冲方丁(角川書店)384.5点
  • 【2位】『神様のカルテ』夏川草介(小学館)294点
  • 【3位】『横道世之介』吉田修一(毎日新聞社)270点
  • 【4位】『神去なあなあ日常』三浦しをん(徳間書店)256点
  • 【5位】『猫を抱いて象と泳ぐ』小川洋子(文藝春秋)237点
  • 【6位】『ヘヴン』川上未映子(講談社)220点
  • 【7位】『船に乗れ!』藤谷治(ジャイブ)209点
  • 【8位】『植物図鑑』有川浩(角川書店)182.5点
  • 【9位】『新参者』東野圭吾(講談社)130.5点
  • 【10位】『1Q84』村上春樹(新潮社)91.5点

2011年本屋大賞(一次投票には458人の投票。二次投票には439人の投票。)

  • 【大賞】謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)386.5点
  • 【2位】『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)354.5点
  • 【3位】『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦(角川書店)310点
  • 【4位】『錨を上げよ』百田尚樹(講談社)307.5点
  • 【5位】『シューマンの指』奥泉光(講談社)207.5点
  • 【6位】『叫びと祈り』梓崎優(東京創元社)263点
  • 【7位】『悪の教典』貴志祐介(文藝春秋)259.5点
  • 【8位】『神様のカルテ2』夏川草介(小学館)259点
  • 【9位】『キケン』有川浩(新潮社)241点
  • 【10位】『ストーリー・セラー』有川浩(新潮社)202点

2012年本屋大賞(一次投票には560人の投票。二次投票には371人の投票。)

  • 【大賞】舟を編む』三浦しをん(光文社)510点
  • 【2位】『ジェノサイド』高野和明(角川書店)355.5点
  • 【3位】『ピエタ』大島真寿美 (ポプラ社)324点
  • 【4位】『くちびるに歌を』中田永一(小学館)265点
  • 【5位】『人質の朗読会』小川洋子(中央公論新社)213点
  • 【6位】『ユリゴコロ』沼田まほかる(双葉社)208点
  • 【7位】『誰かが足りない』宮下奈都(双葉社)173.5点
  • 【8位】『ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち』三上延(アスキー・メディアワークス)153点
  • 【9位】『偉大なる、しゅららぼん』万城目学(集英社)137.5点
  • 【10位】『プリズム』百田尚樹(幻冬舎)72点

2013年本屋大賞(一次投票には598人の投票。二次投票には307人の投票。)

  • 【大賞】海賊とよばれた男』百田尚樹(講談社)278点
  • 【2位】『64』横山秀夫(文藝春秋)266点
  • 【3位】『楽園のカンヴァス』原田マハ(新潮社)238.5点
  • 【4位】『きみはいい子』中脇初枝(ポプラ社)212.5点
  • 【5位】『ふくわらい』西加奈子(朝日新聞出版)182点
  • 【6位】『晴天の迷いクジラ』窪美澄(新潮社)167点
  • 【7位】『ソロモンの偽証』宮部みゆき(新潮社)149.5点
  • 【8位】『世界から猫が消えたなら』川村元気(マガジンハウス)145.5点
  • 【9位】『百年法』山田宗樹(角川書店)139.5点
  • 【10位】『屍者の帝国』伊藤計劃、円城塔(河出書房新社)109点
  • 【11位】『光圀伝』冲方丁(角川書店)108点
  • (一次投票が10位タイだったため11タイトルで二次投票を行った)

2014年本屋大賞(一次投票には605人の投票。二次投票には386人の投票。)

  • 【大賞】村上海賊の娘』和田竜(新潮社)366.5点
  • 【2位】『昨夜のカレー、明日のパン』木皿泉(河出書房新社)332点
  • 【3位】『島はぼくらと』辻村深月(講談社)299点
  • 【4位】『さようなら、オレンジ』岩城けい(筑摩書房)274.5点
  • 【5位】『とっぴんぱらりの風太郎』万城目学(文藝春秋)267.5点
  • 【6位】『教場』長岡弘樹(小学館)243点
  • 【7位】『ランチのアッコちゃん』柚木麻子(双葉社)221点
  • 【8位】『想像ラジオ』いとうせいこう(河出書房新社)213.5点
  • 【9位】『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦(朝日新聞出版)156点
  • 【10位】『去年の冬、きみと別れ』中村文則(幻冬舎)136点

2015年本屋大賞(一次投票には580人の投票。二次投票には342人の投票。)

  • 【大賞】『鹿の王』上橋菜穂子(KADOKAWA)383点
  • 【2位】『サラバ!』西加奈子(小学館)310点
  • 【3位】『ハケンアニメ!』辻村深月(マガジンハウス)309.5点
  • 【4位】『本屋さんのダイアナ』柚木麻子(新潮社)239点
  • 【5位】『土漠の花』月村了衛(幻冬舎)236.5点
  • 【6位】『怒り』吉田修一(中央公論新社)231点
  • 【7位】『満願』米澤穂信(新潮社)185.5点
  • 【8位】『キャプテンサンダーボルト』阿部和重・伊坂幸太郎(文藝春秋)155点
  • 【9位】『アイネクライネナハトムジーク』伊坂幸太郎(幻冬舎)131点
  • 【10位】『億男』川村元気(マガジンハウス)42.5点

2016年本屋大賞(一次投票には552人の投票。二次投票には342人の投票。)

  • 【大賞】『羊と鋼の森』宮下奈都(文藝春秋)372点
  • 【2位】『君の膵臓を食べたい』住野よる(双葉社)327.5点
  • 【3位】『世界の果てのこどもたち』中脇初枝(講談社)274点
  • 【4位】『永い言い訳』西川美和(文藝春秋)261点
  • 【5位】『朝が来る』辻村深月(文藝春秋)229.5点
  • 【6位】『王とサーカス』米澤穂信(東京創元社)226.5点
  • 【7位】『戦場のコックたち』深緑野分(東京創元社)223点
  • 【8位】『流』東山彰良(講談社)99点
  • 【9位】『教団X』中村文則(集英社)93点
  • 【10位】『火花』又吉直樹(文藝春秋)46点

【必修5】本屋大賞の裏側に迫る!

最後に本屋大賞にまつわる数々のエピソードを紹介します。
本屋大賞の受賞作品を語るだけでなく、その周辺にまつわる話をすれば本屋大賞マスターといえるでしょう。

本屋大賞は発表の1ヶ月前に出版社と作者にのみ連絡が入る

本屋大賞はただの冠としての賞だけではなく、本を売り伸ばすことにも力を入れています。

従来の文学賞は選考結果が出たその夜に発表されます。そのため、書店と出版社は在庫を事前に準備することができませんでした。
直木賞などの受賞作は大きく売れるとはいえ、出版社に事前に連絡が入らず、重版など本を準備をすることができません。
一般読者が発表翌日に受賞作を書店に買いに行っても「在庫がありません」と言われ、入荷まで長くて2週間かかると言われてしまえば、そこで興味を失ってしまう可能性があります。

本屋大賞は発表の1ヶ月前に出版社と作者にあらかじめ連絡が入ります。もちろん、内密にです。
これによって出版社は受賞作の重版を進めることができ、「本屋大賞受賞」といったような本の帯を準備することができます。
また作者は発表会に出席するまでの段取りをきちんと行うことができるのです。
このような体制がしっかりとられているため、本屋大賞受賞作の売り逃し防ぐことができるのです。

本屋大賞に対する痛烈な批判

受賞作の売れ行きが大きく伸びる本屋大賞ですが、なかにはこの本屋大賞を痛烈に批判する声もあります。
批判理由としてわかりやすいのが作家の海堂尊さんが自身のブログで綴った内容です。

本屋大賞の本が百万部売れたとしても、本屋さん全体が総力を挙げて売るわけだから当然です。その裏側で「本屋さんが一番売りたい本ではない」本が、次々に討ち死にしていくわけです。本来、出版業界というものは本来、植林していかなければ滅びてしまうのに、本屋大賞は伐採商法なのです。(海堂ニュース「読まずに当てよう、本屋大賞。」より)

つまり、この批判は「本屋大賞以外の本が売れなくなる」ということを語っています。
大賞と2位の作品の得点数がわずか数ポイントしかない場合でも、本屋大賞受賞作のみが書店で平積みされ、2位以下の本はあっという間に店頭や平積みから外されてしまいます。
海堂尊さんは本屋大賞のキャッチコピーでもある【全国書店員が選んだ「いちばん!売りたい本」】についても批判しています。
これでは本屋大賞以外の作品が「そんなに売りたい本ではない」というメッセージになってしまうという意見です。

過去の候補作・受賞作の出版社と作者を数えてみる

本屋大賞で候補作になった作品と、大賞を受賞した作品。そして、それぞれの作家について整理してみることで、どの出版社・作家が本屋大賞に強いのかという傾向をつかめることができます。

【本屋大賞候補になった出版社[2016年4月現在]】()内は受賞回数

  • 新潮社 19作(3回)
  • ・講談社 18作(2回)
  • ・文藝春秋 18作
  • ・角川書店 12作(2回)
  • ・小学館 12作(1回)
  • ・幻冬舎 7作
  • ・集英社 6作
  • ・双葉社 6作(1回)
  • ・中央公論新社 5作
  • ・朝日新聞 3作
  • ・東京創元社 5作
  • ・河出書房新社 3作
  • ・光文社 2作(1回)
  • ・メディアワークス 2作
  • ・ポプラ社 2作
  • ・扶桑社 1作(1回)
  • ・徳間書店 1作
  • ・ジャイブ 1作
  • ・太田出版 1作
  • ・毎日新聞社 1作
  • ・マガジンハウス 3作
  • ・筑摩書房 1作
  • ・産業編集センター 1作

【本屋大賞候補になった作家[2016年4月現在]】】「◎は受賞作家」

  • 伊坂幸太郎(10回)◎『ゴールデンスランバー』
  • ・小川洋子(4回)◎『博士の愛した数式』
  • ・三浦しをん(4回)◎『舟を編む』
  • ・百田尚樹(4回)◎『海賊とよばれた男』
  • ・有川浩、万城目学、森見登美彦、有川浩(4回)
  • ・東野圭吾、西加奈子、吉田修一、辻村深月(3回)
  • ・冲方丁(2回)◎『天地明察』
  • ・和田竜(2回)◎『村上海賊の娘』
  • ・宮下奈都(2回)◎『羊と鋼の森』
  • ・横山秀夫、重松清、宮部みゆき、角田光代、桜庭一樹、柚木麻子、夏川草介、窪美澄、飯島和一、貴志祐介、川村元気、中脇初枝、米澤穂信、中村文則(2回)
  • ・リリー・フランキー(1回)◎『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』
  • ・佐藤多佳子(1回)◎『一瞬の風になれ』
  • ・湊かなえ(1回)◎『告白』
  • ・東川篤哉(1回)◎『謎解きはディナーのあとで』
  • ・恩田陸(1回)◎『夜のピクニック』
  • ・森絵都、石田衣良、よしもとばなな、福井晴敏、京極夏彦、矢作俊彦、荻原浩、梨木香歩、絲山秋子、雫井脩介、市川拓司、奥田英朗、島本理生、町田康、古川日出男、桂望実、劇団ひとり、三崎亜記、近藤史恵、金城一紀、柳広司、池上永一、天童荒太、川上未映子、藤谷治、村上春樹、奥泉光、梓崎優、高野和明、大島真寿美、中田永一、沼田まほかる、三上延、原田マハ、山田宗樹、伊藤計劃・円城塔、長岡弘樹、岩城けい、いとうせいこう、木皿泉、月村了衛、阿部和重、住野よる、西川美和、深緑野分、東山彰良、又吉直樹(1回)

本屋大賞に10回も候補作としてあがっている伊坂幸太郎の強さは圧倒的です。
書店員が売りたい本としての性質と伊坂幸太郎の作品の性質が合致しているという点が読み取れます。

本屋大賞【必修まとめ】

ここまで【本屋大賞必修】と銘打って5つのことを紹介してきました。
それでは、改めて必修項目をまとめてみましょう。

  • ・年々、本の販売額は減少傾向にある
  • ・本への注目度をあげるために、色々な文学賞が生まれている
  • ・今までの文学賞は作家目線で賞を選んでいた
  • ・今までにない、一般読者により近い目線で文学賞を選ぶために本屋大賞は創設された
  • ・本屋大賞の仕掛け人・杉江由次
  • ・本屋大賞は発表の1ヶ月前に出版社と作者にのみ連絡が入る
  • ・本屋大賞に対する痛烈な批判も存在する

以上、本屋大賞を語る前に知っておくべき5つのことを紹介しました。
この記事で紹介した5つのことをおさえておけば、本屋大賞でさらに盛り上がることができるはずです!

 


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