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本当に必要?本の消毒器を設置する図書館が増え続ける理由

公開日:2016/10/13 
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古本や誰かが読んだ形跡のある本に抵抗を示す人は少なくありません。
特に図書館に並んでいる本は不特定多数の人の手に触れているため、衛生状態を気にする声を多く耳にします。

そういった、いわば”潔癖”な人のために、最近の図書館では「本の消毒器」を導入するケースが増えています。

そもそも本の消毒器とはどのようなものなのか?そして、それは本当に必要なものなのか?考えてみましょう。

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キレイ好きが喜ぶ「書籍消毒器」とは?

おもに図書館に設置されている「本の消毒器」とは、文字通り本の消毒を行うための器械です。
図書館流通センターのHPによれば、この消毒器には以下の効果があるとのこと。

  • ・ページ間の清掃
  • 本の下から風をあて、ページ間に挟まったホコリ、髪の毛、フケなどを除去
  • ・殺菌消毒
  • 本を開いた状態で紫外線を照射し、ページの中まで殺菌
  • ・消臭・抗菌
  • 消臭抗菌剤を循環させ、煙草臭、ペットの臭いなどを除去

どんなカタチ?どうやって使うの?

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出典:図書館流通センターHP

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出典:図書館流通センターHP

イメージとしては冷蔵庫(あるいは電子レンジ)のような扉付きの機械です。
このなかに本を入れることで、殺菌・消毒をしてくれます。

使い方としては、借りた本を機械のなかに入れてスイッチを押すだけ。すると30秒〜1分で消毒が完了します。
紫外線による殺菌、消臭抗菌剤による消臭効果が見込めるとのことです。

ちなみに本って紫外線を浴びると日焼けして劣化するのでは?という疑問があるのですが、消毒作業によって本は痛まないのでしょうか。

なぜ本の消毒器を導入するのか?

そもそも、消毒器が設置された理由の1つに利用者からの苦情の声があります。

福岡県大野城市の市立大野城まどかぴあ図書館は昨年6月、貸し出しコーナーの隣に消毒機を設置した。「本に髪の毛が挟まっていた」、「たばこの臭いが染みついている」などの苦情を受けたためだ(毎日新聞「<書籍消毒機>導入の図書館が増加)

実際に利用者はどれくらいいるのかが気になるところですが、記事によれば1日約40回、これまでに1万4000回超の利用があったそうです。

子どもの衛生面を気にする親の利用者が多いとのこと。子どもが絵本や児童書などを口に入れてしまうことも多いため、あらかじめ消毒できるのは嬉しい、というのが消毒器支持派の考えるところでしょうか。

確かに、子どもが図書館の本を口にしてしまって体に害が出るのは避けるべきかもしれません。

「本の衛生状態が気になるから、図書館の本は借りたくない」という否定派の人に来館してもらえる効果が見込める可能性もあるでしょう。

図書館の本ってそんなに汚いの?

しかし、どうでしょう。一昔前は図書館に消毒器なんてありませんでした。
わたしも小さい頃はよく図書館で絵本などを借りたものですが、何事もなく育ち、いまこうして生きています。

多くの人が疑問に感じるであろうことの1つとして、「そもそも図書館の本ってそんなに汚いの?」ということです。

もちろん、見た目や臭いなどは体で感じることができる汚れかもしれません。しかし、それはあくまでも気持ちの問題。実用性について言えば、なんら問題はないはずです。

さきほどの記事によれば、「本に髪の毛が挟まっていた」程度で苦情が来るわけですから、ちょっと常軌を逸しています。

実際のところ、専門家は図書館の本について以下のように解説しています。

菌の繁殖に詳しい微生物化学研究所(東京都品川区)の五十嵐雅之研究部長(53)は「一般生活で付着する細菌といえば大腸菌とブドウ球菌ぐらい。大腸菌は乾燥に弱く、ブドウ球菌は全ての人が潜在的に保有している。また、インフルエンザなどのウイルスは、紙に長期間付着すると活性化しなくなる。細菌もウイルスも過剰に心配する必要はない(同上より)

借りるまえに本がキレイに消毒される様子を見てホッと一安心、「これで気持ちよく本が読めるね」という充足感が得られるのはいいかもしれません。
でも、本が原因でお腹を壊したり体調を崩したりなんてことは、専門家の意見からしても考えにくいはずです。

もう1つ問題があるのは消毒器本体のお値段です。それはそれは、高いのです。

1台85万円!?そのお金、蔵書の購入予算に使うべきでは?

本の消毒器は、そのニッチな領域も手伝って非常に高額です。前述のまどかぴあ図書館の機械、なんと1台約67万〜85万円もします。

それだけのお金をかけて、消毒をする必要があるのかは大いに疑問です。

だったら、そのお金を本を買う予算に回すべきではないでしょうか。85万円あれば、相当数の本が買えます。

さらに言えば、保守やメンテナンスにかかる費用も考えると、それ以上の予算が消毒器に使われていることになります。

キレイ好きに報いたい気持ちもわかりますが、蔵書数を増やしたほうがより多くの利用者に貢献できるはずです。

本が目の前でキレイに消毒される姿を見るのは、さぞ心地良いでしょう。でも、本に付着した細菌の影響がほとんどないことを考えると、疑問しか浮かびません。

これから消毒器の導入を考えている図書館関係者の皆様。その予算、どうか本の購入費用に充ててください。本の消毒器なんかなくても、子どもは健康に育ちます。無論、大人については何ら問題ありません。

消毒器ではなく本を増やしたほうが、読みたい本がたくさん揃った魅力ある図書館になるはずです。

 


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