「進撃の図書館」コミックの貸し出しが本屋を喰い潰す

大きく分けて、人には2つのタイプがあります。

1つは「本は買う派」。

もう1つは「本は借りる派」。

本好きの人は中古ではなく、きちんと新刊書店で本を買って、家に置いておきたいという立場が多いと思います。
でもそれと同じくらい「本なんか1回読んだら終わりなんだから、買わずに借りるのが賢い選択でしょ?」
って人もいます。

今回は後者の「借りる派」が多用しているであろう図書館の「コミックスの貸出し」について考えてみます。




図書館のせいで書店が圧迫されてしまう

新文化の記事によれば、愛知県にある稲沢市立平和町図書館の平成24年度の貸出し冊数は29万冊。
そのうちのなんと76%に相当する22万冊がコミックスでした。

この事実は見逃せません。
書店にとってコミックスの売り上げが大きな割合を占めるようになったいま、図書館でコミックスを借りられてしまっては明らかな民業圧迫です。

平和町図書館で人気なのが「ドラえもん」シリーズ。
ベスト5に4点ランクインしています。

またテレビドラマ化されたコミックスもやはり人気で「JIN-仁-」や「医龍」「失恋ショコラティエ」などは予約で常に貸出中となっていて、中には半年待ちという作品もあります。

コミックスというジャンルをどう捉えるか

平和町図書館の石垣哲也氏によれば選書の基準は「図書館にふさわしい内容か」で購入は1巻につき1冊が原則だといいます。

コミックスを扱う理由については「本に親しんでもらうためのキッカケになればという思い」があると語っています。

コミックスが果たして、本を読むキッカケになるか。そう言われると一概には言えない部分もあります。

そもそも活字が苦手だからコミックを読むという人は圧倒的に多いわけで、コミックを読んだことがキッカケになって小説を読むようになるというのはごく少数でしかないと思います。

もちろん、コミックを否定するつもりはありませんが、長期的な視点に立つとこれは明らかに書店文化への圧迫になります。

本という文化を広く誰にでも普及させるのが図書館の目的のはず。
その図書館が本の文化の原点である書店を喰ってしまうのは本末転倒です。

図書館には「貸出しする本の利用者数が市の評価につながり、それが予算額に反映される」という側面があります。

このあたりから考えても貸出し冊数を稼ぐためにコミックを扱っているのは明らか。
「コミックが本を読むキッカケになる」というのは建前であって、本という文化の本質的な部分を一切無視しているとしか考えられません。

書店の販売数は図書館の貸出し数に大きく離されている

2002年の書店の販売冊数は7億3909万冊。
一方の図書館の貸出し冊数は5億5727万冊。

この段階ではまだまだ、書店の販売数は好調でした。

しかし、2009年には書店の販売冊数は7億1781万冊と減少し、図書館の貸出し冊数7億2238万冊が販売数を上回ってしまいました。

2012年には書店の販売冊数は6億8790万冊、図書館の貸出し冊数は7億4481万冊とさらに差をつけられています。

図書館の貸出し数増加が、書店の販売数の減少につながっているとひとくくりには言えませんが、コミックスの貸出しが今後全国の図書館に広がっていけば、この流れは止まらなくなります。

コミックの貸し出しは長期的な視点で考えるべき

コミックスは一度ファンがつくと、シリーズで継続的に買ってくれる読者が発生するので、書店の経営にとっては欠かせないジャンルです。
そのコミックスを図書館がごっそり持っていってしまえば、書店の経営は厳しくなるのも当然です。

図書館が公共のために果たすべき役割をもう一度見直さないことには、ただでさえ厳しい出版業界を追い詰めることになりかねません。

苦境に立たされ続けている出版業界。
目先の利益にこだわっていると、書店は衰退の一途をたどるばかりです。