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なぜあの本屋で本を買いたくなるのか?売れる本屋の棚の見せ方

公開日:2016/07/27 
本屋のジャンル分け

本屋はお店によって本の展開がちがいます。
ジャンル分けもちがうし、開催するフェアが独特で面白いお店も増えてきました。

本そのものは全国どこで買っても同じですから、差別化を図るにはこうした「商品の見せ方」が非常に重要になってきます。

そう考えたときに、本屋のジャンル分けはもっと多彩であるべきだと思います。
たとえば、本屋の棚に挟まってる小ジャンルを分けるプレートにもっと遊び心を持たせるべきではないか。

今回はこんな、ちょっとだけニッチなテーマでお送りしたいと思います。

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本の並べ方・見せ方で購買意欲は大きく変化する

みなさんにはこんな経験ありませんか?

ある本屋で読んだ本。その場では買う気にならなかったけど、後日他の本屋で同じ本を見つけてなぜか買ってしまった。

「おいおい、そんな経験ないよ」

と言われてしまったらおしまいなのですが、私にはこうした経験がたくさんあります。

要するに、「同じ本なのに、他の本屋で見るとなぜか魅力が増す」という経験を何度もしているわけです。

これは店内の装飾やインテリアも大きな意味を持っているでしょうが、わたしはそれ以上に本の並べ方や見せ方が大きく影響していると思います。

文庫を出版社別に並べるのってつまらない

わかりやすい例でいえば、文庫が挙げられます。

文庫はほとんどの本屋で出版社別(あるいは作者別)に並べられています。
しかし、なかには判型に関係なく「本のテーマごと」に棚を作っている本屋もあるわけです。

文庫を出版社ごとに無機質に並べられるよりも、何らかのテーマという文脈を持たせて並んでいるほうが本の魅力は増すのではないでしょうか。

同じ本でも見せ方や陳列の順番によって、お客さんの購買意欲は大きく変わります。
まったく気になっていなかった本ですら買わせることができるのは、本の見せ方や並べ方が大きく関係しているのです。

本のジャンルには3つの分類がある

本には、大きく分けて3つのジャンル分けがあります。
小さい本屋など一部をのぞいて、本屋のほとんどは以下のようなジャンル分けで本が分類されています。

  • 【大ジャンル】
  • 例)歴史、理工学、ビジネス、実用
  • 【中ジャンル】
  • 例)西洋世界史、数学、自己啓発、料理
  • 【小ジャンル】
  • 例)古代ローマ、線形代数、会話術、和食

大ジャンルはフロアマップなどで全体図を見るときに使われる事が多く、実際の棚プレートには中ジャンル、小ジャンルが使われることがほとんどです。

中ジャンルと小ジャンルは売り場で本を特定するのに役立つため、本屋としては売り上げに関わる大切なポイントでもあります。

「小ジャンルプレート」が本を見つけやすくしてくれる

さて、ここからが本題です。
わたしは、本の見せ方を向上させるには「本棚に挟まっている小ジャンルプレート」が非常に重要な意味を持っていると思っています。

小ジャンルプレートについては冒頭でも触れましたが、実物はこんなやつです。

小ジャンルプレート

書店によって呼び方はさまざまでしょうが、こうしたプレートはどこの書店もほぼ確実に使っています。

写真をご覧いただくとわかると思いますが、基本的には本のテーマに沿った内容がプレート名となっています。
さきほどの例だと「古代ローマ」「線形代数」「会話術」「和食」などの小ジャンルですね。

そこの棚にどんな本があるのかを効率的に知るために、こうした小ジャンルは効果を発揮します。

便利は便利なのですが、こうした小プレートは機械的なジャンル分けに使われることがほとんどです。

願わくば、本屋の小ジャンルに遊び心を

大型書店などは、膨大な蔵書がありますからジャンルごとに正確な分類が求められます。
ですから、なるべく本の内容を適切に表した小ジャンルプレートを使うべきです。

しかし、街の小さな書店やインディペンデント系(独立系)の本屋は必ずしもルールに従う必要はありません。
むしろ、小ジャンルのプレートでもっと遊ぶべきだと思います。

比較するために、たとえば、とある大型書店の文芸書コーナーは以下のような小ジャンルプレートで分類されています。

文芸書のジャンル分け

ご覧のように、小説を作家名の順不同で並べている棚です。
売り場に立ってみれば、欲しい作家がすぐに見つかるので一目瞭然。これはこれで便利です。

しかし、見方を変えるとどうでしょう。無機質でまったく面白みはありません。
目的買いには向いていますが、「ついつい本を買っちゃった」という購買行動は望めないでしょう。

繰り返し念のため行っておくと、大型書店はフェア台が遊び心を担っていますので、小ジャンルプレートはそこまで求められないかもしれません。

とはいえ、個人的には大型書店でも小プレートを使った遊び心が欲しいと思いますし、小規模な本屋はなおさら。ジャンル分けでもっと遊んでいいと思ってます。

 

本の小ジャンルでどうやってお客さんを惹きつけるか?

本の小ジャンルプレートで、本屋の色や個性を出すには、たとえば以下のような分類の仕方があります。

  • ・泣きたいときに読む本
  • ・上司に怒られたときに読む本
  • ・テンションを上げたいときに読む本
  • ・美味しい料理を知られる本

これらはあくまでも一例ですが、本の内容に一歩踏み込んだ分類をすることで、お客さんはお店の提案を吟味しようとします。
もちろん、そこでハマらないこともあるでしょう。そして、目的買いをしたい人には迷惑な棚でもあります。

しかし、本屋が画一化するなかで求められるのは、フェアだけではない”テーマ性のある常設的な陳列がある本屋”なのではないかと思います。

あの本屋に行けば、何かしら面白い本が見つかる。
自分の潜在的な悩みや興味を引き出してくれる。

こうした効能を本屋に見いだす人が増えれば、お客さんは本を買ってくれるようになります。

ただし、こうしたプレートによる分類は書店員の知識がないと到底できません。
なぜなら、そのプレートに内容に沿った内容の本を的確に知っている必要があるからです。

書店員という職業が「ただのレジ係」ではなく、世の中から求められる専門的な仕事として認知されるには、小ジャンルプレートによる本の分類をもっと現場で積極的に取りれて、いわば「本の分類論」を学ばせてもいいのではないかと思います。

もし、自分が本屋を開いたらどんなジャンル分けで本屋を並べるか?
そんな視点で仕事ができると、もっと書店員としてのやりがいを持つことができるでしょうし、お客さんの喜ぶお店をつくることにもつながります。

 


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