なぜ本は盗まれるのか?書店の万引き被害と有効な対策とは

本屋での万引き。
ただでさえ許されるはずのないこの犯罪は、特に本屋にとっては非常に深刻な問題です。

なぜなら、本は1冊あたりの利益率が約2割と非常に低いから。
たとえば1,000円の本を万引きされた場合、5冊(200円×5冊=1,000円)売らないと取り戻せません。

本が狙われやすいのは「転売しやすい」という理由も挙げられます。
盗んだ本をそのままBOOKOFFなどの古本屋に持ち込んでお金に代えてしまうケースが続出しているのです。

こうした万引き犯に対して、書店はどのような対策を取ればいいのでしょうか?
本屋を閉店に追い込む客への対応策について解説します。

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本が万引きされやすい、3つの理由とは?

あまりこういう表現をしたくはありませんが、本屋は万引きするのに格好のターゲットとなっています。つまり、”万引き犯の温床”とも言えるわけです。
なぜなのか、その理由は大きく3つに分けてみましょう。

  • ・本は換金しやすい
  • ・金銭欲と読書欲を同時に満たせる
  • ・書店に死角が多い(店員が少ない)

本には、盗んですぐに売れる「換金性」がある

あとでくわしく紹介しますが、書店の万引き犯が本を盗む最大の動機は「換金したい」という欲求にあります。
つまり、盗んだ本を使ってお金を手に入れようというわけです。

本はブックオフをはじめ、あらゆる古本屋で簡単に売ることができます。
わずかな金額であっても、労せずお金が手に入ることもあって、万引きはなかなか減らないのです。

これは本という商材の大きな特徴でもあります。
たとえば、食品を万引きしても基本的には換金ができません。

しかし、本は極端な話、あるお店で盗んだ本をすぐ隣の古本屋で売ることだってできてしまうわけです。

こうした”換金性”が、本を万引きする大きな動機につながっていることは、重要なポイントといえるでしょう。

「読んで良し、売って良し」

2つ目の理由は、本は換金するだけでなく読んでも楽しめるところにあります。
万引き犯は「お金に換えたい」という動機のほかにも、「この本を読みたい」という動機を持っていることも多いのが実状です。

こうした”2つの欲求”を、本は叶えることができてしまいます。

「読んでみて、高く売れたらラッキー」

このような非常に悪質な動機によって、本の万引きが誘発されていることにも注目すべきです。

書店は死角だらけ。万引きしやすい空間である

3つ目は物理的に、本屋が万引きしやすい環境にあることが挙げられます。

言うまでもなく、本屋は死角だらけです。
本棚のつくりやレイアウトにもよりますが、背の高い本棚が何台も並ぶ場所では店員の監視も行き届きません。

防犯カメラによる対策を講じても、それが犯人の逮捕につながることはなく、あくまでも抑止にしかならないのです。

そして、最近は書店の経営難もあって人員を大幅に減らしているという理由も大きく関係しています。

【利益の低迷によって人員削減→店内の監視が不十分→万引きの増加→利益の低迷…】

こうした悪循環が続くことによって、書店内の死角はますます増え、万引きの件数が増加することにつながります。

書店の万引きにはどのような手口があるのか?

わたしたちの想像の及ばない世界が、万引き犯には広がっています。
本を盗むために、犯人はあの手この手で巧妙に万引きを繰り返すのです。

万引きというと、商品を直接ポケットに入れるというのがイメージしやすいかもしれません。
まわりをキョロキョロして、誰もいないタイミングを見計らって盗みを働くという原始的なやり方ですね。

もちろん、こうした手口も依然として多いわけですが、最近は万引きの手口が非常に巧妙になってきています。

たとえば、複数人による犯行が挙げられます。
2〜3人などの複数人が結託して複数冊の本をまとめて窃盗するという悪質な手口です。

まず犯人は書店内を偵察し、死角や出口の場所を確認。そして、店員や他の客が少ない時間帯を調査します。

そして、あらゆる条件を考慮したうえで、もっとも万引きしやすいタイミングを決定。

実行犯だけでなく、見張り役を配置します。
書店員や警備員の監視がないことを見張る人間をつくって万引きを実行。

このようにして、いわば組織的に万引きをするケースも少なくないのです。

ちなみに、万引きはコミックに多い傾向があります。まとめて5〜6巻分を万引きするケースも少なくありません。

わたしが以前勤めていた新宿の書店では、店外の死角にコミックを15巻分ゴッソリ持ち運び、そこで持参したカバンに本を詰め込むという犯行を起こした万引き犯がいました。

万引きされた本は、どこへ行くのか?

なぜ万引き犯は本を盗むのでしょうか?

日本出版インフラセンター(JPO)によれば、現行犯による聴き取りでその目的が明らかになっています。

警察での追求により「読みたかったから」の81%が換金目的だったことから、最終的に換金目的の占める割合は相当大きいと考えられる換金目的の比率を算出すると換金目的の万引きは70.62%と推計できる(「平成20年 書店万引き調査等結果概要」より)

単純に「読みたいから盗んだ」という動機もありますが、実際には「盗んだ本をお金に換える」というのが大きな動機となっていることがわかります。

さきほど説明したとおり、「本は読んで良し、売って良し」という商材です。
こうした本の特性が、万引き犯を犯行に走らせるといっても過言ではないと思います。

ベストセラーは狙われやすい

たとえば、いま売れ筋のベストセラーは本屋に行けばすぐに手に入ります。
店内の一等地にゴッソリ積まれているわけですし、それ以外にも本屋大賞をはじめとする文学賞の動向はニュースですぐにわかります。

万引き犯はこうした”売れ筋”をスグにキャッチし、少しでも高く売れる本を盗むということも平気で行います。

みなさんはブックオフに行ったことがあるでしょうか。
どれくらい前からかわかりませんが、ブックオフでは店頭に買取価格を明示しています。
つまり、高価買取の本がすぐにわかるようになっているわけです。

”高く売れる商品がスグにわかる”という状態ですから、どの本を狙えば効率的に換金できるか、万引き犯には一目瞭然です。

この「中古本価格の透明性」も、本の万引きが多くなる1つの要因になっていると言えるでしょう。

フリマアプリで、本の転売がとっても簡単になった

本の万引き犯を特定するために、丸善とブックオフが提携してICタグの埋め込みといった対策を検討したこともあります。
しかし、それはあくまでもリアル店舗での対策に過ぎません。

最近はメルカリなどのスマホアプリの登場によって、オンラインで簡単にモノの売買ができるようになりました。

盗んだ本を古本屋で売るのは心理的なハードルが高いでしょうが、インターネットであれば簡単に転売が可能です。

実際、メルカリには多くの中古本が流通しており、頻繁に売買が行われてます。
本の万引きに対する心理的ハードル、物理的ハードルが下がったことも、万引きを誘発する要因になるといえるでしょう。

書店の万引きにはどのような対策を取るべきか?

書店の万引き被害は日常的に発生しており、残念ながら大きなニュースになることはほとんどありません。
そんな書店の万引きにおいて、以前話題になった事例があります。それは東京都中野区にある古書・リサイクル店「まんだらけ」事件です。

東京都中野区の有名古書店「まんだらけ」店頭から、8月4日、販売価格27万円のブリキ製人形が万引された。これを受けて同店は、翌日、防犯カメラに写った犯人の画像をモザイク付きで公開。商品を返還しなければ、モザイクを外して素顔をネットに晒すと激しく警告したのである。(参考:日刊SPA!)

犯人画像を公開することの良し悪しは?

まんだらけでは犯人の画像を公開すると警告しました。
一見すると、これは書店にとって有効な対策であるようにも思われます。

しかし、この警告は結局警察の公開中止要請があって実現しませんでした。
その後、無事に犯人は逮捕されたわけですが、犯人画像の公開はプライバシー保護という問題もあるわけです。

犯人画像が撮れていたとしても、その人物が本当に盗んだという100%の証拠にはなりません。
万が一冤罪だった場合、顔写真を公開された当人のプライバシーは大きく毀損されてしまうでしょう。

犯人画像を公開しても、現行犯逮捕にはつながらない

万引き犯は常習性が高いので、一度上手くいくと同じ店で繰り返す傾向があります。
1つのケースとして、ある書店では万引き犯の顔写真を店頭で公開したら万引き被害は激減したそうです。

これはいわば「我々は、おまえを捕まえる準備ができているぞ」という犯人へのメッセージになります。

とはいえ、この顔写真公開はむずかしい部分もあります。

そもそも、万引きは現行犯逮捕でないと捕まえることができません。
そして何より、その場で取り押さえない限り、本当にその人物が万引きをしたのかどうかハッキリしないのです。

本当は冤罪であるにも関わらず顔写真を公開してしまうのは人権的に問題があるでしょう。

ある書店チェーンでは年間推定3〜4億円ほどの万引き被害があるそうですが、これだけの被害を考えると抑止としての顔写真公開もやむを得ないという考え方もできます。

このあたりは、バランス感覚というか、一方のやり方だけが正しいという見方はなかなかできないのが現状です。

本を本屋で買うことが万引き対策につながるのかもしれない

今は本屋の売り上げが減り、人員が減らされつつあります。

本が売れない⇒店員を削減⇒売り場が荒れる⇒本が売れない⇒店員を削減⇒…

この悪循環がまわっているなかに、万引きという要素が加わるともう手がつけられません。

万引きが増える⇒経営がヤバくなる⇒店員を削減⇒万引きが増える⇒…

万引きは負のスパイラルをもう1つ増やしてしまいます。

本屋の万引き被害を減らす有効な策の1つに「声掛け」があります。
「いらっしゃいませ〜」「こんにちわ〜」という、いわゆる接客の掛け声ですね。

万引き犯に対しては、こうした何気ない声掛けが有効です。
死角があったとしても「どこかで店員が見ているのではないか?」という意識が犯罪抑止につながります。

とはいえ、声掛けを店内にまんべんなく広めるには、やはり人員を増やす必要があるでしょう。
そしてそのためには、人をたくさん雇えるだけの資金力(人件費)が本屋にないといけません。

そう考えると、ネットではなくリアル書店で本を買うことが、間接的な書店の万引き対策につながると言えなくもない。

あらゆる面から考えても、リアル書店の売り上げを伸ばす戦略が必要なのかもしれません。