装丁?カバー?表紙?本の話をするときに注意したい言葉の使い方

みなさんには、日頃から常に気をつけていることがあるだろうか?
いや、常に気をつけているというと語弊があるかもしれない。

わかりやすくいえば、こんな感じだ。

「食べ物を食べるときに音を立てないようにする」

「料理をつくるときに調味料を入れ過ぎないようにする」

「電車内で美人を見かけても、凝視しすぎないようにする」

おそらく、人それぞれ「意識的に気をつけないと、ついやってしまうこと」があるだろう。

わたしにも日頃から気をつけていることがある。
それは言葉遣い(正確には言葉選び)だ。

こうやって出版業界や書店業界についてウェブサイトを作っていると、さまざまな言葉を使う必要がある。
そのなかでとくに厄介なのが「似たような意味を持つ言葉」だ。

その代表例が、タイトルにも示したとおり「装丁」「カバー」「表紙」である。

みなさんは、「装丁」「カバー」「表紙」のちがいがおわかりだろうか。
この3つの言葉は同じようで、じつはきちんと意味にちがいがある。

出版業界が長い人であればご存知だろうが、念のため以下に示してみよう。

  • ・装丁
  • 本の見た目全体のデザインのこと
  • ・カバー
  • 本の周りに巻かれる、取り外しができる紙のこと
  • ・表紙
  • 書籍本体を保護するもっとも外側の部分

厳密に言うとこんなちがいがある。
でも実際にはカバーのことを表紙といったり、表紙のことを装丁と呼んだりする。

本来の意味はちがうのかもしれないが、一般的にそれで通ってしまっているのだ。

広く知られている言葉の意味と、本来の言葉の意味が大きく変化してしまうことはよくある。

たとえば「役不足」という言葉。

役不足には、「身分不相応な軽い役目=こんな仕事じゃ不満足」といった本来の意味がある。
しかし、最近は「身分不相応な重い役目=こんな仕事、自分には出来ない」といった意味で使われることが多い。

つまり、”本来の意味”と”変化して定着した意味”のどちらを使うべきなのかはとてもむずかしい判断なのだ。

本当はカッコよく「装丁」という言葉を使いたい自分がいたとする。
でも、装丁という言葉は一般的ではないし、意味もあいまいだ。
だから、カバーという言葉を泣く泣く使わざるを得ない自分がいるのである。

こんな感じで、意味が似ている言葉や変化している言葉を扱うときには迷いが生じるのだ。




本屋と書店、どっちが人気?

本について書くときに、必ずといっていいほど使われる言葉に「本屋」と「書店」がある。
この2つの言葉は、意味が似ている(ほぼ同じ)代表例だ。

本屋と書店には意味のちがいがあるのだろうか?
いままではなんとなくニュアンスで使ってきたが、ちょっと辞書で調べてみることにした。

  • 【本屋】
  • 1. 書物を売る店。また、その業者。出版社をさすこともある。書店。
  • 2. 映画業界などで、脚本・シナリオを書く人。台本作家。
  • 3. 屋敷の中で主となる建物。母屋 (おもや) 。
  • (出典:デジタル大辞泉)
  • 【書店】
  • 書物を売る店。また、書物を出版する店。本屋。
  • (出典:デジタル大辞泉)

調べてみて、もっと深いちがいがあるのかと期待したのだが…そんなことはなかった。

本屋にはいくつかの意味があるが、書店と本屋は同じ意味があると考えて良さそうだ。

さて、意味が同じと言われてしまうとますます困ってしまうのである。
なぜなら、それこそ感覚で使い分けるしかないからだ。

本屋と書店に意味のちがいがあれば、ハッキリ区別できる。
でも、意味が同じだと自分のニュアンスや伝わりやすさで使い分けるしかない。

つまり、書き手のさじ加減に委ねられた言葉なわけだ。

「ここは”本屋”という言葉のほうがニュアンスが伝わるかな…」
「【”書店”売上高】よりも【”本屋”の売り上げ高】のほうが、やわらかくていいかな…」

わたしは、文章を書く時にいつもこんな感じでビクついている。