出版不況を吹きとばせ!売れる本屋に学ぶ4つの販売戦略

どんなお店にとっても客単価アップ、売上アップは最優先の課題。
1人のお客さんにたくさん買ってもらえれば、お店としてはウハウハです。

これは本屋でも同じ。極端な話、お客さんみんなが「大人買い」をしてくれれば、きっと出版不況なんてなくなります。
どうすれば本屋の客単価アップ、売り上げをアップさせることができるのでしょうか?
実例を織り交ぜながら、本屋の販売戦略について考えてみたいと思います。




文房具と本を一緒に売る本屋

有隣堂
厳密に言えば、本の売り上げではありませんが、本屋の中に文房具売り場を設けるのも客単価アップにつながります。

文房具販売もこなす代表的な本屋といえば有隣堂です。

有隣堂は1909年に創業され、横浜の伊勢佐木町本店からスタートしました。
創業当初から文房具は扱っていて、書店業以外にもオフィス機器や教育機器、音楽教室の運営など幅広い事業を展開しています。
縮小傾向にある書店業界において、きちんとリスクヘッジすることで全体の売り上げをキープしていると言えます。

有隣堂の全売上高に占める店売(書籍と文房具)の割合は約6割
店売のうち文房具がどれくらいの売り上げ割合を占めるのかは定かではありませんが、文房具が客単価のアップに貢献しています。

お客さんの来店動機が文房具であっても、同じ売り場に本が売っていれば自然と立ち寄る流れは生まれます。
こうした複合的な業態から見習うところは多いのではないでしょうか。

カフェと本の融合で客数と滞在時間を伸ばす

未来屋書店金沢フォーラス
本以外のモノでいかにお客さんの滞在時間を引き伸ばし、購買意欲を高めるか。
2つ目はいわゆる「ブックカフェ」という業態です。
厳密に言うと、カフェを併設した本屋になりますが、お茶を目的としたお客さんをターゲットにすることで本屋の客数を伸ばすことができます。

イオンにある本屋として、いまや書店業界売り上げ第2位(『出版物販売額の実態2014』より)の未来屋書店の例をご紹介します。
以前の記事でも取り上げましたが、2014年5月にアパレルブランド「niko and…」とコラボレーションした未来屋書店金沢フォーラス店があります。

このお店の特徴は、

  • 1. 世界トップクラスのコーヒーが味わえる
  • 2. コーヒーを片手に店内でお買い物を楽しめる
  • 3. 月ごとにテーマを決めて、入手困難な書籍や雑誌のバックナンバーなどを楽しめる

いわゆる「普通の本屋」では成し得ないやり方です。
こうした戦略はイオンが持つ強みがあって初めてカタチになるものですし、日販が積極的に関与している可能性もあるので容易にはマネできないからです。

しかし、ただ単純にカフェを併設しただけの本屋とは一線を画していて、そこは参考にすべきところです。
「本とカフェ」という業態だけではもうお客さんを惹きつけられなくなっています。
本とカフェ+α」で差別化を図ることが、次世代の本屋の在り方なのかもしれません。

客単価2倍!「松丸本舗」の戦略

松丸本舗

松丸本舗とは、編集者で編集工学研究所の所長である松岡正剛さんが2009年に丸善丸の内本店内にプロデュースした本屋のこと。

いまはすでに終了していますが、この本屋の客単価は丸善丸の内本店の約2倍
そして、客の平均滞在時間が2〜3時間だったと言われています。

これはまさに本屋が目指すべき経営の在り方ともいえるもので、滞在時間の長さが売り上げに結びついているケースでしょう。
松丸本舗にはいったいどんな特徴があったのでしょうか?

  • ・65坪の店内に約5万冊の品揃え
  • ・本の並べ方にジャンルの垣根がない
  • ・良い意味で「ゴチャゴチャ」な本棚
  • ・松丸氏本人の落書きコメント

一般的な本屋にはない独特のレイアウト。一歩まちがえると圧迫感にしかならない本棚の高さ。
こうして計算されたギリギリの売り場づくりが絶妙に組み合わさることで、お客さんは今までの本屋では味わったことのない体験をします。

そして、滞在時間を伸ばす最大の仕掛けが「ジャンルの垣根がない本の並べ方」です。
マンガがあるかと思えば、その隣に専門書が並ぶ。
つまり、コミックでもハードカバーでもテーマを合わせて並べることでお客さんは目線の流れで自然と本を手に取ります。

本来であれば、一直線に並んだキレイな本棚が良しとされていますが、松丸本舗の本棚は「ジグザグ」を取り入れています。
これもお客さんの目線をうまい具合に引き止める効果があります。

目的買いにはまったく向かないし、検索性もゼロ。
ある種のイベントとして運営するから成り立つやり方ともいえますが、普通の本屋にとっても見習うところは多いのではないでしょうか。

書籍と雑誌の構成割合を見直す

4つ目は実例というよりは、本屋の売り上げ割合の問題です。

全国小売店経営実態調査報告書によれば、全国にある書店の「書籍と雑誌の売上比率」は以下のようになっています。

書籍:雑誌割合
書籍のみ0.7%
9対12.2%
8対23.7%
7対37.5%
6対46.6%
5対57.1%
4対613.5%
3対721.3%
2対817.5%
1対911.4%
雑誌のみ1.9%
無回答6.6%

【書籍:雑誌=3:7】と回答した書店が21.3%と最も多く、全体を見ても雑誌の割合が6割を超えるお店が65.6%に達しています。

このデータから言えること、それは本屋がいかに雑誌の売り上げに依存しているかということです。
雑誌にはメリットがあります。雑誌をたくさん並べることで、集客が良くなったり、場合によっては客単価が上がることもあるからです。

しかし、ご存知のとおり雑誌の売り上げは大きく減少しています(【出版不況】書籍・雑誌の売り上げ金額が過去最悪の落ち込み)。

ですから、全体に占める雑誌の売り上げ額が大きい本屋ほど、経営が苦しくなります。
もちろん、書籍の割合を単純に増やせばいいわけではありません。売り上げを伸ばす販促を組み合わせる必要があります。

書籍・雑誌の販売割合の見直しは必須。そして、客の滞在時間アップ・客単価アップを図らないことには生き残りはますます厳しくなるでしょう。

取り入れられる施策はどんどんやってみる

本屋は商材が「本」と決まっています。ですから、本以外のモノを売るのはどうしてもハードルが高くなります。

先述したniko and…はアパレル以外の雑貨を組み合わせて売り上げを伸ばしており、アパレル業界にはこうした複合業態がどんどん増えています。

書店業界も見習うところがあるのではないでしょうか。
現に、有隣堂は本業の書店業以外でも利益を上げることで、生き残りを図っています。

本屋なんだから、本しか売りたくない。そんな風に凝り固まっていると、いずれ本すら売れなくなる事態に陥るでしょう。
これでは本末転倒です。

マネできる施策はどんどんやってみて、トライ・アンド・エラーを繰り返して売り上げを伸ばす。
本屋としての「悪いこだわり」を捨てて、とにかくチャレンジしてみるという精神が必要なのではないでしょうか。