読書術を完全網羅!『大人のための「読書の全技術」』がスゴイ

本を読む人にとっては、より深い読書体験を。
本を読まない人にとっては、最初の一歩を。

この「読書の全技術」は、数々のベストセラーを出してきた齋藤孝さんの読書術を1冊にまとめたものです。
いわば、読書技術の集大成といえます。

まずは各章を紹介したうえで、それぞれの要点とともに読みどころを紹介していきたいと思います。

  • 序章 社会人にこそ読書術が必要な理由
  • 第1章 読書のライフスタイルを確立する
  • 第2章 読書の量を増やす―速読の全技術
  • 第3章 読書の質を上げる―精読の全技術
  • 第4章 読書の幅を広げる―本選びの全技術
  • 第5章 読書を武器にする―アウトプットの全技術
  • 終章 社会人が読んでおくべき50冊リスト




読書をライフスタイルの1つとして取り入れるコツ

第1章では、まずどういうスタイルで読書を日常に取り入れていくべきかについて書かれています。

電車の中で携帯電話はいじらずに、文庫本を読む」や「誰かとの待ち合わせは本屋にする」など、行動から読書の習慣を取り入れる基本的なところからはじまります。

人が本を読む目的はさまざまだと思いますが、多くの人に共通するのは「もっと見識を広げたい」「いろいろなモノの見方をしたい」という部分ではないでしょうか。

斎藤先生はこの「幅広いものの見方」を次のように表現しています。

読んだ本と本とのつながりが読んだ人に大きな影響を与えるのだ、ということも知っておいてもらいたいと思います。(中略)そのためには、より多くの本を読み、自分自身の脳内図書館を構築する必要があります。頭の中に500冊、1000冊文の情報が蓄積されていて、それらがネットワークで結びついているというイメージです。(P48)

本を読むことは、いろいろなものの見方をする下準備であると一般的には考えれられています。
しかし同じ読書でも、特定の考え方について書かれた本ばかりを読んでしまうことは、特定のものの見方しかできなくなる、ということでもあります。

それでも読書の効用はある程度あるかもしれませんが、「蓄積された情報がネットワークで結びついている脳内図書館」をつくるようなつもりで、いろんな価値観の本を読むことで読書の効用が高くなるのは言うまでもありません。

何かを考えたり、決断したりするときに脳内図書館が構築されていれば、いろんな情報を頭の中で比較検討することができるのです。

また、本章ではもう1つ「役に立つ読書」と「快楽としての読書」という考え方も紹介されています。

役に立つ読書とは「そこから得た情報や知識を実際に活用するための読書」のこと。
わかりやすい例といえば、新聞や実用書などのことです。
その読書を通じて得た知識を何かに役立てる、そんな目的をもって行う読書のことです。

快楽としての読書とは「文学を味わうための読書」と表現されています。
文学作品にどっぷりと入り込み、その世界観を時間を忘れて楽しむ、そんな読書のことです。

この2つの分類を読書のときに意識することが、次章以降で紹介されている「速読」と「精読」につながってきます。

本によって「速読」と「精読」を使い分ける

速読というと、どこかトンデモ感があるものですが、第2章で紹介されている「速読論」には思わず納得させられました。

速読と精読、両方の重要性が増しているのです。それゆえ私達は、速読と精読、両方の技術を磨いていく必要があります。そして、本によって、また求める読書内容によって、その二つを上手に使い分けることが重要になってくるのです。(P86)

いままでは漠然と「速読はうそ臭いし、頭に入らない」と思っていたのですが、本によって速読と精読を使い分けるという考え方は、確かに言われてみれば当然のことなのですが、自分の中ではストンと腑に落ちる感覚でした。

何でもかんでも速読をしようとするのではなく、その本によって速読と精読を使いわければいいんだ、という考え方を持てただけで、読書に対するモチベーションが大きく向上したように思います。

その読書のスピードを上げる方法には、いわゆる目を動かすスピードを上げるなどの技術的なことも書かれていますが、思わず唸ってしまったのが以下の表現です。

なぜ読めば読むほど楽に、速く、正確になっていくかというと、本は知識で読んでいるものだからです。(P87)

本を読むスピードが遅くなる理由として、書いてあることがわからないというのが最も大きいのではないでしょうか。
知っている知識が多くれば、それだけ「理解できずにつまる時間」が減ってくるのでスピードも上がってくるのです。

また、いわゆる「積ん読」を防ぐ方法についても面白い表現で紹介されています。

本と人の関係は、恋愛に少し似ています。書店の店頭で本を購入するのは、一目惚れしたようなものです。しかし残念ながら、一目惚れしたときのテンションは日々薄れていってしまいます。(P100)

本屋で「これいい!」と思って買ったものの、家に着くと「何でこれ買ったんだろ…」ということはよくあります。
そのまま本棚で眠らせることが多くなってしまいますが、それはやはりもったいない。

そこで斎藤先生は本を買ったら、そのまま喫茶店に行って、本をさばくことを提唱しています。

だからこそ、本を買ったら、その日のうちにさばいておく。つまり、一目惚れしたテンションのまま、一気に中身を把握しておくべきなのです。(P101)

こうしてさばいて、ある程度本の内容を把握しておけば、欲しい情報がどこにあるかわかっている状態なので、本棚に入ってしまってもまた取り出して使うことが可能になります。

「精読」の効果をアップするためには?

役に立つ読書は速読をし、味わう読書は精読に尽きます。

本書では精読をする方法として音読や暗唱、3色ボールペンでの書き込みなどが紹介されています。
そうした精読の手法を試したら、やはり効果を実感したいですよね。

そのためには「とにかく誰かに説明する」ということに尽きます。
誰かに本の内容を話す前提で読書をすれば、自然と頭の中で組み立てて読み進めることになります。

私もこの書評を書くという目的をもって本書を読んだこともあり、ある程度体系的に頭の中に入っている感覚があります。
とにかく読んだ内容を話しまくること。さらに、引用を織り交ぜると効果的だといいます。

とくに重要なのは、日頃から持ち歩いて読んでいる本の内容を、ことあるごとに恋人や友人に説明することです。(P159)

誰かに話すこと・伝えることを目的として取り組む読書は精読の効果を上げることにつながります。
さらに、そこに引用を加えて伝えることができれば自分はもとより、相手にとっても説得力が増した興味深い話となるのです。

自分の師を見つけて芋づる式に本を選ぼう

第4章では本の選び方の全技術について書かれています。
ここで紹介されている「芋づる式読書」はそれなりに本を読んでいる方なら経験があるかと思います。

つまり、ある本を読んだことがキッカケで他の本と出会う。さらにその本がまた別の本との出会いを呼んでくれる、というもの。

自分の師となる(好きな)作家を見つかるまでは少し時間がかかるかもしれませんが、それを見つけてしまえば本は広がりを見せるはずです。

しかし、斎藤先生は本に書いていることを鵜呑みにしてはいけないと警鐘を鳴らしています。

どんなにすばらしい本に出会ったとしても、自分の全部を明け渡すのではなく、その本につまっているエッセンスを自分なりに咀嚼し、自分の内に取り込むべきだと思います。(P171)

これは第1章の「いろいろなものの見方」という点からも大切な部分といえます。
好きな作家ができてしまうと、ついそこに書いてあることを100%で捉えがちです。

好きな作家だからこそ、違う視点で異論を唱えてみる。そんな姿勢が必要なのかもしれません。

また、難読本を読むコツについても紹介されているので、少しステップアップしたい人にとっても非常に役立つ内容となっています。

日常生活でアウトプットすることにこだわる

第5章はアウトプットについての全技術です。
純粋に自分が楽しむための読書で無い限り、やはり読書を仕事や交友関係で上手く活用したいところ。

そこで、やはり重要なのは「アウトプットすることを目的とした読書」です。
特に、日常の会話で本のことに触れながら挨拶を交わすという方法が本書では紹介されています。

たとえば、読書で身につけたことを、「あっ、そういえばこういう本がありますよね」とか「〇〇さんはこういうことを書いていますよね」と会話の中に上手に取り入れる人がいます。そうすると、「この人は本を読んでいる。勉強している」と見られ、コミュニケーションの格が上がるのです。(P217)

このあとにも書かれていますが、もちろんひけらかすことは避ける必要があります。あくまでもさりげなく。

「コミュニケーションの格が上がる」というのは表現的にも実質的にもあくまで自分本位の感覚なので、何とも言えませんが、本を上手く織り交ぜた会話は出版業界人同士なら共鳴できる可能性は高いので試す価値はありそうです。

さいごに

読書術の本はいままで敬遠してきました。
というのも、読書はそれぞれの内側にあるものであって、それを誰かに説かれることに違和感があったからです。

では、なぜこの本を手にとったのか?
それはズバリ、分厚さとネームバリューです。

最後にこんなことを書くと拍子抜けされてしまうかもしれませんが、まず本書は四六判で343ページと分厚い本です。
それなのに価格は1500円(税抜き)なのです。

そして齋藤孝さんの本はもうすでに何冊も読んだこともあり、この人の文章の読みやすさと面白さは織り込み済みです。

分厚さとこの低価格に何となく、齋藤孝先生の「本気」を感じたのがこの本を買った最大の理由です。
これだけの大家(という表現が似合うかは別として)が読書術を1冊にまとめていること自体が「買い」だと判断しました。

ところどころ、ピンと来ない箇所もありますが、読後感は爽快です。
読書欲を駆り立ててくれる、この時期にふさわしい1冊をご紹介しました。