出版不況時代に”金のなる本”を持たない出版社は死んでいく

「出版社が事業停止」「本が売れない」「出版不況」

そんな言葉を目にする機会が増えました。メディアでも、こぞって業界の不況を取り上げていますね。

出版業界の売り上げは低迷するばかりで、もはや”オワコン”とも揶揄されるようになりました。

本が好きな人にとってはもちろんですが、本に興味がない人にとっても業界の低迷は大きな問題です。

出版社が本をつくれなくなれば、あらゆるエンタテイメントの核となるコンテンツが生まれなくなります。本屋がなくなれば、Amazonが支配する空間でしか本を選べなくなり、長い目で見れば表現の自由が失われるかもしれません。

もはや手遅れ、という向きもありますが、まだまだやれることはあるはずです。

では、出版不況時代に出版社はどんなことに取り組めばいいのでしょうか?




出版社は長く売れる本づくりにもう一度目を向けるべき

出版社が売り上げを上げるためには、なによりも売れる本をつくる必要があります。

最近では雑誌に強い出版社を中心にネットメディアにも力を入れ始めていますが、まだまだ本の売り上げは重要な収益源です。

売れる本をつくる、と言うのは当たり前に聞こえるかもしれません。しかし、重要なのは長く、そして広く読まれる本をつくることです。

話題性を重視した、使い捨てられる本をつくるのはカンタンです。受けの良いタイトルやテーマを選べば、中身が薄くても読者は買ってくれるからです。

しかし、それは長く続きません。

発売された当初は良くても、時間とともに「あの本は中身がペラペラ」ということがバレます。さらに、次々と出される新刊に埋もれるので、長く本屋に陳列されることはないからです。

”金のなる本”があれば、寝てても儲けられる

1つの本をつくるためには、著者、編集者、営業、印刷会社、デザイナー、取次など多くの人が関わっています。そこには当然、膨大な時間とコストがかかっているわけです。

ですから、たとえ短期的に売り上げを立てられたとしても、経費と比べれば得られる収益は小さなものに過ぎません。

売り上げがそれなりに得られたとしても、【収入ー原価(人件費等含む)=収益】という計算をすれば、手元に残る収益はわずかなものだからです。

重要なのは、損益分岐点を大きく超えて売り上げを立てることにあります。つまり、コストを回収したあとに、収益だけが発生し続ける段階に達してしまえば、出版社には”金のなる本”だけが手元に残ることになるのです。

もっとわかりやすくいえば、長く売れるロングセラー本をつくってしまえば、出版社は寝ててもお金を儲けることができます。

そういう本をいかにたくさんつくるか。この視点が、いまの出版社には足りていません。

なぜ出版社は売れ線に走るのか?

出版社が短期的な売り上げを求める、いわゆる”売れ線”に走るのには理由があります。

それは、返品率の高さに起因する自転車操業が常態化しているからです。

出版社の売り上げというのは、本屋で本が売れた時点で発生するわけではありません。取次に本が納品された時点で発生します。

つまり、本屋で本が売れなくても、取次に納品さえしてしまえば出版社は売り上げを確保できるわけです。

そのため、本屋からの返品率が多少高くても、新刊点数を増やして取次にどんどん納品してしまえば、売り上げが発生するので資金繰りはなんとかなります。

出版社がこの自転車操業状態、負のスパイラルに一度足を踏み入れてしまうとそこからなかなか抜け出せません。

なぜなら、短い期間で本をつくって取次に納品しなければいけませんから、良い本をつくるための時間が確保できないからです。

また、さきほど説明した”金のなる本”をつくるためのノウハウが編集者や出版営業に蓄積しないというのも大きな問題です。

「話題性」「他社の二番煎じ(パクリ)」など、短期的な売り上げを立てるためだけの本づくりを続けていれば、仕事のやり方がそっちに傾くのは当然です。

編集者はそういう頭になります。「いま売れている本はなんだろう?あ、開脚健康法の類書が良いかも」

宣伝もしかり、営業部員は外回りで当たり障りのないトークしかできなくなります。「(本屋で)ぜひ『健康になりたければ開脚しなさい』を置いて下さい!」

一度でもいい加減な本をつくれば、それがキッカケとなって会社全体が歪みます。

そして、やがて短期的な売り上げもあげられなくなり、自転車操業も崩壊。倒産に追い込まれます。

こうした理由から、出版社はあらためて「長く売れる本とはなにか?」ということに目を向けるべきなのです。