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利用者数が激増!「dマガジン」が雑誌業界を壊滅する

公開日:2016/11/22 
カテゴリ:雑誌 電子書籍
dマガジンの利用者増で雑誌業界は壊滅

出版業界について取り上げるメディアが、悲しくなるくらいネガティブな情報で溢れています。

業界専門紙である新文化を見ても「書物の復権」「生き残りをかけた戦い」「マーケットがシュリンク」といった言葉が並んでいます。

言葉だけを拾うと前向きな感じがしないでもないですが、出版業界が窮地に立たされていることは明らかです。

その元凶となっているのが、雑誌の売り上げ低迷と言われています。もともとはインターネットの普及によって雑誌が読まれなくなったのが原因とされてきましたが、ここに来て追い打ちをかける存在が登場しました。

それが、ドコモが展開する雑誌読み放題サービス「dマガジン」です。

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そもそも「dマガジン」とはなにか?

スマホやタブレットが広く使われるようになって、読書環境が大きく変化しています。
その流れに沿うようにして、電子書籍や電子雑誌が猛烈な勢いで広まっているのはご存じかと思います。

「dマガジン」とは、月額400円(税別)を払えば、雑誌コンテンツが読み放題になるという革新的なサービスです。

その良し悪しは「dマガジンの評判は?31日間無料で雑誌を読んでみた感想」でまとめていますが、料金の安さはもちろん、読めるコンテンツの多さが支持され急速に会員数を増やしています。

読者にとってはいいことづくめなのですが、出版業界、とりわけ雑誌業界にとっては大きな課題に直面することとなりました。

雑誌業界を壊滅させかねない読み放題サービスの影響力についてくわしく見ていきましょう。

雑誌への見方、価値観を根底から覆してしまう

雑誌読み放題にはいくつかサービスがありますが、今回はdマガジンを例に取り上げてその影響力について考えてみます。

まず結論からいうと、dマガジンの登場によって読者が紙の雑誌に抱いてきた価値観が一変する恐れがあります。というより、現時点ですでに価値観の変化は起きています。

具体的に見ていきましょう。dマガジンがなぜ紙の雑誌の価値観を変えてしまったのでしょうか。その理由は大きく分けて3つあります。

  • 1. わざわざ1冊に数百円も払う意味がない
  • 2. 紙という媒体で雑誌を読むメリットがない
  • 3. 拾い読み(つまみ読み)が日常化している
  • 4. 雑誌名を意識しない(雑誌のブランド価値が消滅)

1. わざわざ1冊に数百円も払う意味がない

言わずもがなですが、雑誌は1冊あたりだいたい500円〜1,000円ほどします。

それに比べてdマガジンは月額400円(税別)で、160誌以上が読み放題です(2016年11月時点)。さらに言うと、バックナンバーも充実しているので、のべ1000冊以上が自由に読めてしまいます。

これだけの費用メリットがあると、よほど紙への執着がない限りは読み放題を選ぶのも当然です。

ひとことで言い表すなら「雑誌の価格崩壊」が起きてしまったと言えるでしょう。

2. 紙という媒体で雑誌を読むメリットがない

電子書籍や電子雑誌が出たばかりのころは、いろいろと反対意見も出ていました。もちろんいまでも反論はたくさんあるでしょう。

そのなかでも有力な意見とされていたのが「やっぱり紙のほうが読みやすいよね」という実用性を重視した考え方でした。

しかし、スマホはさておきタブレット端末を使うと電子雑誌の読みにくさは遥か彼方。なんなら、電子雑誌のほうが読みやすかったりします。

さらに、スマホやタブレットでニュースを読むという行動が日常化したいま、雑誌も電子機器で読むというのが当然の流れになっています。

「スマホやタブレット1台で完結するのに、なんでわざわざ紙の雑誌買うの?面倒じゃん」

という読者の意識が、dマガジンの普及によって急加速したと言えるでしょう。

紙の雑誌はページをめくる感覚がいいんだよね、という意見を除けば、紙媒体であることのメリットはほとんど失われてしまったのです。

3. 拾い読み(つまみ読み)が日常化している

いま自分に必要な情報だけを消費するという行動が、ニュースサイトをはじめ当たり前になっています。

興味がなければ他のニュースに飛ぶことが容易になってしまったため、1記事あたりの滞在時間は極端に少なくなっています。

この傾向はdマガジンでも表れています。ここで1つ、偉い人の発言を引用しましょう。

全体を考えて構成している雑誌の一部を「つまみ読み」することが日常化し、雑誌全体の趣旨を誤解されないかと懸念。さらに各出版社の記事が安い価格で入手され、ネット上に書き込まれている無料の情報と同様の読まれ方になっている日常を重く見ている

これは、中央公論新社の大橋善光社長の発言を受けて新文化(11/17号)が記事として紹介したものです。

この発言で注目すべきは「つまみ読み」。つまり、さきほど説明したように「いま自分に必要な情報だけを消費するという行動」がdマガジンにも如実に表れているということです。

実際、dマガジンでは以下のような分類をしてさまざまな記事を読めるような設計になっています。

  • ・雑誌から選ぶ
  • ・記事から選ぶ
  • ・おすすめ(dマガジンがおすすめする記事)
  • ・ランキング

【雑誌から選ぶ】というのは、文字通り雑誌の銘柄別にチョイスして選ぶ方法です。

注目したいのは【記事から選ぶ】【おすすめ】【ランキング】の3つ。これは各雑誌からコンテンツだけを切り離して、読者が記事単位で読める仕組みです。

たとえば、「おとなの週末」という雑誌であれば【贅沢な夜はココで決まり!厳選三ツ星点12】という特集のみが、雑誌本体から切り離されてコンテンツだけ独立して分類されています。

こうした「つまみ読み」は、まさしくネットニュースの読まれ方と同じです。

たくさん読まれることは良いことですが、雑誌のコンテンツが無料ニュース同然の扱いを受けているのは由々しき事態といえるでしょう。

4. 雑誌名を意識しない(雑誌のブランド価値が消滅)

「つまみ読み」に関連しますが、こうした読者の情報消費は特定の雑誌が持つブランド価値を消滅させます。

これまたネットニュースとの比較になりますが、ネット上の記事では「どこが(誰が)報じた情報なのか?」はほとんど意識されません。これはつまり、媒体はどうでも良くて、情報のみが価値を持つ状態といえます。

雑誌読み放題も同じで、記事ごとに読まれることによって「これは何ていう雑誌が書いている記事なのか?」がほとんど意識されません。なぜなら、記事ごとに配信されているので、容易に「つまみ読み」できてしまうからです。

雑誌のブランド価値というのは、たしかに存在します。BRUTUSは何だか大人でオシャレな感じ。週刊文春やFRIDAYはゴシップ心がくすぐられる。

このような雑誌への愛着、認識はこれまで紙の雑誌を買うときの購買行動として、大きな意味を持っていました。

しかし、雑誌名が意識されなくなると、「記事さえ面白ければなんでもいい」という状態になってしまいます。

dマガジンをはじめとする雑誌読み放題にコンテンツを提供する出版社には、「あわよくば紙の雑誌の売り上げにつなげたい」という思惑があります。実際、紙の雑誌の売り上げが伸びているケースはあります。しかし、それはごく限られた銘柄のみの話であって、多くの雑誌は自身のブランド価値を失うだけとなっているのです。

紙の雑誌が生き残るためには?

ここまで読むと、雑誌読み放題サービスをこき下ろしているだけに思えるかもしれませんが、dマガジンにだっていいところはたくさんあります。

そもそもこういったサービスがなければ雑誌なんか読まない読者もたくさんいますし、出版社は記事が読まれた分量に応じて収益を得ることができているからです。

とはいえ、紙の雑誌が出版社にとって大きな収益源となっているのは紛れもない事実。高い広告収入も得られますし、1冊売るごとの利益率も高いわけです。

では、紙の雑誌が生き残りをかけるためには何をすればいいのか。これはどの業界人にとっても重要な課題です。

個人的な考えを言うと、これ以上紙の雑誌のこだわるのは避けるべきだと思います。紙の雑誌は好きですが、理想と現実はわきまえる。これがビジネスの鉄則です。

出版社がすべきことは、良いコンテンツを作ること。これに尽きます。

ですから、紙の雑誌にこだわることで発生する余計なリソースやコストを、コンテンツに回すべきです。

東洋経済オンラインしかり、講談社のクーリエ・ジャポンしかり。紙の媒体を残しながら、あるいはネット配信に切り替えるのかなどやり方はいろいろありますが、とにかくオンラインで儲ける仕組みを並行して作っていかないと、雑誌業界は凋落の一途をたどるだけです。

 


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