死んでたまるか!雑誌が無料で立ち読みできる起死回生のデジタル雑誌とは?

「雑誌が売れない時代」

この手の言葉は、もう何番煎じかわからないくらい使い倒されています。
「雑誌が売れないのはもうわかったよ」感は強いのですが、それでも雑誌業界の窮状は見るに耐えないレベルに来ています。

そんな雑誌の売り上げ低迷を打開しようとする試みが、デジタル雑誌で行われています。

それが「NEXT MAGAZINE」と呼ばれる、ウェブ上で読むことができるデジタル雑誌のサービス。

今回で4回目となる期間限定「雑誌の無料読み放題サービス」には一体どんな狙いがあるのでしょうか?




雑誌が無料で読み放題!NEXT MAGAZINEってなに?

NEXT MAGAZINEとは、ウェブサイトにアクセスするだけで雑誌が無料で読めるサービスのこと。
アプリのダウンロードは不要で、インターネットにつながれば誰でも読むことができます。

15社78タイトル以上(予定)の雑誌を、期間限定で読むことができます。
過去3回の開催を経て、今回が4回目。2015年12月22日〜2016年1月3日まで開催されます。

「雑誌フェス」と銘打ったこの企画は、雑誌を発行する出版社の有志でスタートしました。

デジタル雑誌を無料で立ち読みできる狙いとは?

なぜ無料にしてまで雑誌を立ち読みできるようにしたのでしょうか?
インタビュー記事によれば、NEXT MAGAZINEには以下の3つの狙いがあります。

  • 1. 出版社の責任において、簡単に雑誌が立ち読みできる場をつくる。
  • 2. まだまだ十分に提供されていないデジタル雑誌の楽しみ方をスマホで体験してもらう。
  • 3. デジタル・リアルともに書店を活性化する。

雑誌選びのハードルを下げる

雑誌が売れない理由の1つに、インターネットでカンタンに情報が手に入ったことがよく挙げられます。

しかし、じつはもう1つ大きな要因があると個人的には思っています。
それは「自分に合った雑誌が見つからない」という心理的なハードルです。

本屋にいけば、それこそたくさんの雑誌が棚に並んでいます。
そこでは立ち読み客が跋扈しているわけですが、スペース的にも時間的にもゆっくりと立ち読みをするのはむずかしい。

だから、自分が本当に読みたいと思える雑誌や自分の感性に合った雑誌を見つけるのって意外と簡単ではありません。

そういった雑誌選びのむずかしさを解決するために、NEXT MAGAZINEが存在するともいえるでしょう。

スマホから簡単に雑誌のページにアクセスできるわけですから、読む時間やスペースは自分で決められる。

ゆっくりと中身を読んでみて「この雑誌、けっこう良いかも」と思ってもらうことがNEXT MAGAZINEの最大の狙いであると考えられます。

紙の雑誌:デジタル雑誌=95:5

デジタル雑誌の普及率を高めたいという、そもそもの課題を解決する意味合いがNEXT MAGAZINEにはあります。

さきほどの記事によれば、小学館の雑誌売り上げの構成比は「紙の雑誌:デジタル雑誌=95:5」。
つまり、売り上げのほとんどが紙の雑誌となっているわけです。

電子書籍やスマートフォンが広がっている現在において、デジタル雑誌の普及率はあまりにも低いといえます。

今後の展望を考えても、デジタル雑誌に触れる機会を増やすことが、ある意味で「先行投資」にもなるわけです。

デジタル雑誌を提供して、読者を「育てる」ことが、将来的な雑誌の売り上げにも貢献するといえるでしょう。

デジタルで読む⇒紙の雑誌を買う、という流れ

さきほどから述べているように、NEXT MAGAZINEは期間限定ではありますが無料で雑誌を読むことができます。

1雑誌あたり最低でも30ページ以上は読めるようになっているので、単なる「試し読み」にはとどまりません。
「デジタルで試して面白かったから、紙の雑誌を買ってみよう」という読者の流れも十分に考えられます。

”雑誌は紙で読んでこそ”という原点回帰を促す意味でも、デジタル雑誌は有効でしょう。

デジタル雑誌の課題と展望は?

無料で読み放題という、なんとも魅力的な雑誌フェス。
ついついメリットばかりを並べたくなりますが、ここはしっかりと課題を提起しないといけません。

NEXT MAGAZINEに限らないことですが、デジタル雑誌には以下のような課題があります。

  • ・スマホでは圧倒的に読みづらい
  • ・読める雑誌が少ない
  • ・紙の雑誌ならではの表現ができない

スマホでは圧倒的に読みづらい

ハッキリ言ってスマートフォンの小さな画面では、デジタル雑誌なんか読めたものではありません。
紙の雑誌と同じレイアウトで構成されることが前提ではありますが、いちいち画面を拡大して読むのは大きなストレスです。

身も蓋もない話ですが、レイアウトの工夫をしない限りスマホで雑誌を読ませるのは現実的ではありません。

読める雑誌が少ない

日本国内で雑誌を発行しているのは約1200社ほど。
そのうちNEXT MAGAZINEがカバーしているのは現在のところ15社ほどに過ぎません。

規模の小さな出版社は参入するための資金や技術が乏しいのは仕方がありません。
とはいえ本格的にサービスを広げ、ひいてはデジタル雑誌を普及させるには、参加する出版社をもっと増やしていく必要があります。

また、そのほかのデジタル雑誌サービスもまだまだ読める雑誌数が少ないのが現実。
ドコモが運営する「dマガジン」は160誌程度となっており、このあたりも今後の参加雑誌の増加に期待がかかります。

紙の雑誌ならではの表現ができない

紙の雑誌ならではの表現で、真っ先に思い浮かぶのが「袋とじ」です。
こればかりはデジタル雑誌が超えられない壁かもしれません。
袋とじに掻き立てられる人間の想像力は、あらゆる創造力を凌駕します。

また、ページ構成による雑誌の編集も紙の雑誌に軍配が上がります。
紙をめくりながら、雑誌のレイアウトが持つ「隠れた意味」を見つけることができるのは直感的な紙の雑誌ならでは。

一方で、デジタル雑誌にしかできない表現やユーザー体験もあります。

「たとえば『東京のおいしいパン屋さんガイド』なら、Googleマップと連動して位置情報を連動させたり。ファッション誌の好きなコーディネートを”マイページ”としてフォルダに保存できたり。これらは技術的にはすでに可能なことです。また、これまで時として、試験的に紙の雑誌の入稿データを元に、手作業でスマホで読みやすいようにレイアウトを変えていたのを、人工知能でパッと自動的にできるとか。初期投資さえすれば、日本の技術なら低コストで実現ができるのではないでしょうか。こんなデジタルだからできる新しい雑誌を作れれば、新しい読者が生まれると思いませんか。しかも翻訳機能がついていて、各国版も簡単につくれる……ということになれば、日本の雑誌は世界的なコンテンツになりますよね」(紙の雑誌の未来はどうなる? デジタル雑誌の仕掛人に聞いた!

まだ導入されていませんが、デジタル雑誌を便利に使いやすくしたり、世界の雑誌を手軽に読むことができるわけです。
技術的な応用があれば、簡単に実現できるのがデジタル雑誌の強みではあります。

まずはとにかく読者に触れてもらうこと

NEXT MAGAZINEは、それ自体でお金を生み出すわけではありません。
なぜなら、無料でデジタル雑誌を提供しているからです。

これはあくまでもデジタル雑誌、ひいては紙の雑誌に触れる機会を増やすための戦略にすぎません。

デジタルコンテンツ(ネットニュースやアプリ)が充実したいま、あらためて読者を雑誌へ振り向かせるのは容易ではないでしょう。

いかに敷居を低くして、雑誌の良さに気づいてもらうか。

出版業界の売り上げを支えていたあの頃の雑誌を取り戻すためにも、今後のデジタル雑誌に期待を込めたいと思います。