書店員が編集者に教える!売れる本の条件と装丁のつくり方

「売れる本には理由がある」

よく使われる、ありふれた言葉です。
とはいえ、この言葉をもう一度だけ冷静に考えてみました。売れる本にはどんな理由があるのか?と。

そうするとやはり、売れる本にはきちんと理由があるのでした。
売れる理由はもちろん色々ありますが、その中でも今回は「カバー(装丁)」のデザインが優れている本にスポットを当ててみたいと思います。




偶然に見える、必然の出会い

書店員の仕事はなんでしょうか?
いろいろとありますが、わたしは書店員の最も大切な仕事は「良い本をお客さんに伝えるための売り場づくり」だと思っています。

リアル書店の良さはなにかと問われると、真っ先に挙がってくるのが「本との思いがけない出会い」。
つまり、フラッと入った本屋で、ふだんは読まないような本と出会うことです。
「こんな本あったのか?面白そうじゃ〜ん」ってやつです。
これは本当にそのとおりで、目的買いで本屋に入ったのに気づいたら違う本を買っていたという経験は少なからずあるかと思います。

「本との思いがけない出会い」を演出するのは、書店員の仕事です。
お客さんにとっては偶然の出会いかもしれません。
でも、書店員からするとそれは計算された、必然的な出会いなのです。
それが最初に述べた「良い本をお客さんに伝えるための売り場づくり」とリンクしています。

書店員を魅了しないと読者は魅了できない

すこし回り道をしてしまいました。
要するに、売り場をつくるのが書店員である以上、書店員を魅了しないことには読者を魅了するどころか、その本は目にも入りません。

「売れる本には理由がある」と言いましたが、その理由は「書店員を魅了できている」ことにあります。
「魅了」というあまりにも広い言葉ですが、それがつまるところ「優れたカバー(装丁)」ということです。

新刊が入ってくると、書店員は「平積みにする」or「棚差しにする」をアタマの中で考えます。
その選別の判断材料になるのが「装丁」の良し悪しです。

内容の良し悪しはもちろん重要です。でも書店員はまず「見た目=装丁」を重視する傾向にあります。
入ってきた新刊の装丁が洗練されていたり、売れそうな雰囲気を醸し出していると書店員は「平積みにしてみよう」と判断します。
装丁の見た目は、売り場全体の見た目に直接つながるからです。
装丁のすぐれた本がズラリと並んだ売り場は、お客さんの購買意欲に直接影響を及ぼすので、売り上げにもつながります。

新刊で入荷してきた本に対する書店員の最初の印象はすごく重要です。
装丁を見て「これは棚差しだな」と判断されると、そこから平積みにランクアップするのは容易ではありません
1日に新刊が200点も発売される時代です。次々に入ってくる新刊に埋もれてしまい、平積みは激戦になるのです。

「人は見た目が9割」とよく言いますが、「本も見た目が9割」とは言い得て妙ではないでしょうか。

平積み(面陳)展開したい「優れた装丁の本」6選

それでは実際に装丁がすぐれた本を6冊ほど紹介していきましょう。

1、『ストーリーとしての競争戦略』

言わずもがなのベストセラー。2011年のビジネス書大賞にも選ばれた作品です。
装丁もさることながら、タイトルも美しい。この字面を眺めながら酒を飲みたいくらいです。

2、HTML5 Canvas

オライリーは卑怯だと言われるかもしれませんが、どうかご容赦を。
やはり見ていてうっとりしますし、実際に手に持ってページをめくる感覚も最高です。

3、誰とでも 15分以上 会話がとぎれない!話し方 66のルール

会話本ブームのキッカケをつくった本。
ビジネス書として売られていましたが、ポップな装丁がウケて女性や高校生にまで購買層を広げた1冊です。

4、住まいの解剖図鑑

エクスナレッジは洗練された装丁デザインの多い出版社として有名です。
クラフト紙のような手触りと、テキストのレイアウトが思わず目を惹きます。

5、虐殺器官

「虐殺器官」というタイトルにもゾクッとさせられます。
黒地に白文字というシンプルさが、タイトルのインパクトを引き立たせるデザイン。
いまはアニメの装丁をチラホラ見かけます。残念です。

6、もうすぐ絶滅するという紙の書物について

装丁を語る上で、絶対に欠かせない1冊。
タイトル・装丁が完璧な上に、小口が青に染められているダメ押し付きの最高傑作。

まとめ

売れる本には理由がある。
その最も大きな理由の1つが「装丁」にあるというのは、言うまでもないかもしれません。
ただ、出版営業として書店をまわっていて思うのは、書店員をその気にさせないことには売り伸ばしは難しいということ。
そして、書店員をその気にさせるにはまずタイトル、そして何より装丁なのです。

読者だけでなく、書店員にまで目を向けることができれば、出版社の本づくりはまた少し違ったものになるのかもしれません。

※アイキャッチ画像は青幻舎サイト「Encyclopedia of Flowers 植物図鑑」より