発表!出版社の売上高ランキングベスト10

売上高が減少傾向にある出版業界。

現在、日本には約3600社の出版社があります。
そのうちの約7割が東京都に集中しており、さらに23区で見ると千代田区に大手の出版社が多く集まっています。

気になるのはなんといっても、出版社ごとの売上高です。
今回は出版社の売上高ランキングトップ10を発表し、それぞれの出版社の特徴と、どんな強みを持つのかについて分析します。

加えて、出版業界の収益構造と今後の課題についても考えてみましょう。




2012年出版社の売上高ランキングベスト10

順位企業名所在地売上高
集英社東京都1260億9400万円
講談社東京都1178億7100万円
小学館東京都1064億6600万円
角川書店東京都399億100万円
日経BP東京都383億円
宝島社東京都269億9500万円
文藝春秋東京都266億100万円
東京書籍東京都250億520万円
光文社東京都243億6300万円
10ぎょうせい東京都216億4100万円
帝国データバンク『出版業界 2012年度決算調査』より作成

減収ながら増益。出版社は苦肉の策で効率化図る

帝国データバンクによれば、上位10社中7社が減収、つまり売上高が減っています

その一方で10社中9社が2期連続の黒字(増益)を計上しています。これはつまり、本や雑誌の売り上げが減っている中でも、それ以外の部分で減少した分を補っていることになります。

これは社内の赤字部門から撤退したり、不動産を売却したりといった「苦肉の策」ともいえます。こうしたやり方ができるのは、大手版元ならでは。

特に不動産の売却によって計上される特別利益は、一時的に大きな収益となりますが、これは会社本来の実力ではありません。増益とはいえ手放しには喜べず、やはりきちんと営業利益(本業からの儲け)を確保したいところです。

また、出版業界は書籍に比べて雑誌の売り上げが大きく落ち込んでいます。
雑誌が収益の柱となっている出版社にとっては今後、新たな収益源の確保が急務といえるでしょう。

それぞれの出版社の特徴と強みについて

売上高ランキングを見てみると、上位3社が圧倒的な売り上げとなっています。

やはりよく耳にする出版社が並んでいますが、中には「?」という、あまり聞きなれない版元もあるかと思います。
ここからは、ランキングを振り返りつつ1社ごとに特徴と強みについて解説していきます(売上高はいずれも2012年)。

第1位 集英社

栄えある第1位は集英社で、売上高は前年度比マイナス4.4%の1260億9400万円でした。
1925年設立にされた同社の社名は「英知が集う」を意味しています。小学館とともに一ツ橋グループを形成。

週刊少年ジャンプをはじめとするコミックや、「non-no」「MORE」「週刊プレイボーイ」などの雑誌が大きな収益源。
それ以外でも文芸書や文庫など、圧倒的な刊行点数で出版業界の覇者となっています。

なぜ売れる?集英社の女性誌3つが売り上げ好調な理由とは」でも解説のとおり、激戦の女性ファッション誌において売り上げを伸ばしているのも首位となる大きな要因です。

ただし、文学作品に関していえば集英社は本屋大賞の受賞歴がありません
また過去の本屋大賞ノミネート歴についても2015年2月現在で5作と、売上高2位の講談社16作に比べて大きく劣っています。

本屋大賞は売り上げに大きく貢献する文学賞です。今後本屋大賞の受賞作が出てくれば、業界1位は盤石のものとなるでしょう。

第2位 講談社

第2位講談社の売上高は前年度比マイナス3.3%の1178億7100万円

1938年に設立され、前身の「大日本雄弁会」から派生。社名は名前の通り「講談」に由来します。
日本を代表する出版社の1つで、光文社や星海社を傘下に持ち、音羽グループを形成。

週刊誌においては「週刊現代」「フライデー」を刊行し、非常に大きな発信力と影響力を持ちます。

文学作品については江戸川乱歩賞を後援。受賞作品は講談社から発行されます。

またマンガ雑誌ではヤングマガジン、少年マガジンなどがあり、漫画・アニメともに有力な作品を擁しています。

特に2009年10月号から連載を開始した「進撃の巨人」は社会現象とも言えるほどの盛り上がりを見せ、単行本の発行部数は2014年8月現在で累計4000万部を突破しています(Wikipediaより)。

さらに、2014年11月28日から上野の森美術館で「進撃の巨人展」を開催(2015年1月25日にて終了)。
それに合わせて発売された雑誌「BRUTUS」12月1日号では進撃の巨人の特集が大きく組まれました。
余談ですが、出版関係者によると「あの特集は講談社が丸々買い上げたもの」という声もあるそうです(「サイゾー」2015年2月号より)。

また、2015年1月23日からUSJで「進撃の巨人・ザ・リアル」が開催されています。
これらの取り組みから見ると、講談社にとって「進撃の巨人」が大きな収益源となっていることは言うまでもありません。
資金力とノウハウがある大手版元ならではのメディア戦略ですね。

第3位 小学館

第3位小学館の売上高は前年度比マイナス1.4%の1064億6600万円でした。
1945年設立。社名は創設から小学生向けの出版物を刊行していたことに由来します。

児童向けの雑誌や教育書に強みを持っていましたが、この分野の売り上げは減少傾向にあります。
学年別学習雑誌として抜群の知名度を誇っていた「小学◯年生シリーズ」は現在、1・2年生のみの刊行となり、それ以外は休刊となっています。

コミック誌においては、コロコロコミック・少年サンデー・ビッグコミック・スピリッツなど幅広い年代に向けた作品を刊行しています。
2014年には「妖怪ウォッチ」が大流行した影響で、コロコロコミックの売り上げが激増。完売店が続出しました。

女性ヤング誌の発行部数では講談社「ViVi」の後塵を拝する「CanCam」ですが、人気は相変わらず根強いものがあります。
一方、女性ヤングアダルト誌においては「Oggi」「Domani」「AneCan」という人気雑誌を擁し、小学館が強みを持ちます。

2013年9月に取り壊しが行われた3代目小学館ビルは、有名マンガ家が落書きをして話題になりました。
4代目の本社ビルを現在建てており、2016年5月16日に竣工予定です。
これらの建て替えによる費用負担は大きいため、今後、小学館の決算にどう影響するか注目されます。

第4位 角川書店

第4位角川書店の売上高は前年度比マイナス0.7%の399億100万円でした。
現在は株式会社KADOKAWAの社内カンパニーで、内部組織として独立させる形態をとっています。

角川書店は国文学者の角川源義により創業されました。
その息子である角川春樹が1975年に社長就任。その翌年から映画製作の道に大きな活路を見出します。
これをキッカケとして、角川書店は映画をはじめとするメディアミックス戦略を大成功させます。

しかし、角川春樹の実弟である角川歴彦(つぐひこ)との経営対立が激しくなるなど、経営陣の不和は絶えませんでした。
1992年に社長の角川春樹が副社長の歴彦を辞任させたかと思えば、今度は春樹が角川書店の社長を退任させられ、1993年に再び歴彦が社長に復帰するというドタバタを演じたことがあります(Wikipediaより)。

2014年10月には「ニコニコ動画」を運営するドワンゴとの経営統合を果たしました。
出版物の売り上げが落ち込むなかで、多様なメディア戦略を図るための選択といえます。

旧来の角川書店時代からメディアミックスに強みを持つ角川書店が、ドワンゴとの経営統合により今後どのような戦略を打ち出してくるのか。注目が集まります。

第5位 日経BP

第5位日経BP(ビーピー)の売上高は前年度比マイナス1.0%の383億円でした。

第1位〜4位の出版社名と比較すると、一般的にはあまり聞き慣れない出版社ではないでしょうか。
日経BPは日本経済新聞社の子会社として1969年に設立されています。

ビジネス書からコンピュータ書まで幅広く刊行しているのが同社の特徴。
その源泉は「日経◯◯」として発行している、多彩なジャンルを扱っている雑誌にあります。

雑誌売り場でよく見かける「日経ビジネス」「日経コンピュータ」「日経エンタテイメント」「日経トレンディ」などは、すべて日経BPが刊行しています。
特に「日経トレンディ」が毎年12月に発表する「ヒット商品ベスト30」は注目度が高く、日本経済新聞社が発表する「ヒット商品番付」についてはテレビをはじめとするメディアがこぞって取り上げるなど、大きな影響力を持ちます。

日本経済新聞は新聞業界において、電子化で一人勝ちをしている状況です。
そのため、子会社である日経BPにおいても雑誌の売り上げが落ちる中で十分に収益を上げるノウハウを持ちあわせていると考えられます。

第6位 宝島社

第6位宝島社の売上高は前年度比マイナス18.9%の269億9500万円でした。

宝島社といえば、ご存知のとおり雑誌やムックに大きな強みを持つ出版社です。同社の特徴はなんといっても「付録」。
宝島社は雑誌を電子化することなく、売り上げを伸ばしています。その最大の理由は「宝島社の雑誌と電子書籍の不親和性」にあると言えるでしょう。

「電子書籍には参入しないのか?」という質問に対して、ある記事にはこのように書かれています。

関心ありません。一番の強みである出版流通が使えないのは得策ではないでしょう。それに、スマホが好例ですが、本当に便利なものは一気に普及する。電子書籍は元年と言われて久しい(中略)出版社は雑誌や本を文化の一環とざっくり捉えてきた。電機メーカーなら当たり前にする、商品に付加価値をつけたり、売り方を工夫したりする努力が足りなかった(ブックアサヒコム2013年3月12日「書店を応援、電子書籍はNO 好調・宝島社の戦略」より引用)

つまり、すごくカンタンに言ってしまえば「雑誌やムックの付録で売り上げ立ててるんだから、電子化する必要ないでしょ?」ということです。

付録でお客を釣るという、出版物とは到底言えないやり方で売り上げを立てる宝島社に雑誌や本の文化を語る資格があるのかは大いに疑問ですが、付録で売れるという雑誌業界のトレンドを形成したのが宝島社であることは間違いありません。

とはいえ、付録付き雑誌に女性読者が飽き始めているのは事実です。

女性ファッション誌で大きなシェアを誇る「steady」「sweet」「InRed」「SPRING」など、中心商品の売り上げが頭打ちになったときにどうするのか。次の一手にも期待したいところです。

第7位 文藝春秋

第7位文藝春秋の売上高は前年度比プラス3.6%の266億100万円でした。

文藝春秋は1923年の菊池寛によって創業されました。
菊池寛といえば、あの直木賞や芥川賞を創設した人物としても知られています。

文藝春秋は会社と同名の雑誌「文藝春秋」を筆頭に、週刊文春など大きな影響力を持つ刊行物を擁しています。
特に週刊文春は過激な記事を取り上げることで有名で、多くのスクープを発信しています。

その一方でプライバシーや人権侵害に関しての訴訟を起こされることも数知れません。

盤石な文芸作品群を持つ同社の強みでもある直木賞は、年々その影響力をなくしつつあります。
本屋大賞に「売り場が動く文学賞」の座を明け渡したいま、直木賞の立て直しを図る必要がありそうです。

第8位 東京書籍

第8位東京書籍の売上高は前年度比マイナス7.3%の250億520万円でした。

東京書籍の主戦場は教科書販売にあります。教科書販売では最大手の東京書籍ですが、それ以外にも一般書の刊行もおこなっています。
英語の教科書「NEW HORIZON」などが有名です。

電子教科書にも力を入れており、迫り来る電子書籍時代にも十分に対応する準備ができているようです。

第9位 光文社

第9位光文社の売上高は前年度比プラス5.6%の243億6300万円でした。
光文社は講談社とともに音羽グループに属しています。

光文社は女性誌のイメージが強いのではないでしょうか。
「女性自身」「JJ」「CLASSY」「VERY」など女性観をより強く打ち出した雑誌を多く刊行しています。

また、新書判で誕生したカッパ・ブックスが新書ブームの先駆けとなったことも忘れてはなりません。
現在は光文社新書としてラインナップされ、山田真哉著『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』などのベストセラーを生み出しています。

第10位 ぎょうせい

第10位ぎょうせいの売上高は前年度比プラス0.9%の216億4100万円でした。

いよいよ最後となりましたが、最後のさいごで最も聞き慣れない出版社が登場しました。
株式会社ぎょうせいは行政・地方自治体、教育、税務、法務関係者向けの刊行物を出版する会社です。

出版物以外にもシステム開発やイベント実施なども業務として行っています。

出版物にはたとえば、

  • ・『建築基準法・同施行令等の解説』
  • ・『地方公務員ダイアリー2015』
  • ・『統一地方選挙の手引』

このラインナップを見れば、どんな出版社かある程度おわかりいただけると思います。

出版社売上高ランキングまとめ

きちんと活用できるのが2012年のデータしか見つけられなかったため、少し前のランキングになってしまいますが、どの業界でも言えるように売り上げランキングは毎年激変することはほとんどありません。

日本の出版社は上位の集英社・講談社・小学館が売上高においては3強といっても過言ではありません。
グループ企業や出版事業以外を含めると学研やベネッセなどもランクインしてくるのですが、純粋な出版物だけでいえば、上位3社でランキングを上下させて推移しています。

余談ですが、トヨタ自動車の2014年の営業利益だけで2兆2292億円。出版業界がいかに規模の小さな世界かがわかります。
他の業界の数字と比較する記事を読むたびに、なんだか切ない気持ちになるのですが、実際この比較ってあまり意味ないですよね。

話はそれましたが、出版業界はもう底まで来たのではないかなと感じています。
出版物にとって悪い材料はもう十分に出尽くしているので、ここからは横ばい・微増・微減くらいで推移をするのではないでしょうか。

電子書籍が大きく流行ったとしても、売上高の大幅な伸びは期待できないかもしれませんが、本を信じてこれからも生きていこうと思います。

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