未経験でも内定が出る!出版社の転職活動のコツとは?

「未経験だけど出版社に入りたい」と考えている人の話をよく耳にします。
出版不況と言われているなかでも、漠然と出版社にあこがれている人が多いのかもしれません。

でも、出版社は他の業界に比べて求人数が多くありません。
新卒で大量に採用する出版社は少なく、出版社の大半が中途採用で人材を確保するのが出版業界です。

出版業界は未経験だけど、出版社に転職したい。
でもちょっと待て、業界未経験なのに採用なんてしてもらえるの?
そんな疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

心配はいりません。わたしも未経験から無事に出版社へ転職することができました。
今回は未経験から出版社に転職する方法について、わたし自身の経験も交えてご紹介します。

長い記事になりますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。




未経験の人が知っておきたい出版社のデータ

まずは内定をとるために、出版社についての基礎知識をおさらいしましょう。
知っておくべき数字は大きく分けて2つあります。

日本の出版社数はどれくらい?

国内にはどれくらいの出版社が活動をしているのでしょうか?
2013年現在、日本には3,588社の出版社があります。
1997年には4,612社ありましたが、これをピークに出版社の数は年々減少を続けていてます。

書店数と出版社数の推移

出版社数と書店数の推移1999年~2013年
(出所:日本著者販促センター)

そして、その分布ですが約7割の出版社が東京都に集中しています。
一般的に名前が知られている講談社や小学館など、ほとんどの大手出版社は東京に拠点があります。

出版社への転職を考えると首都圏を中心とした転職活動が主になりますが、地方にお住まいの方であっても出版社の支社への配属というかたちでの入社は十分に考えられるでしょう。

これは営業志望の方に限った話ですが、首都圏であれば移動は基本的に電車になります。
一方で地方勤務となった場合には、書店が遠方にあるケースが出てくるので、自動車の免許を持っているとやや有利に転職活動を進められるでしょう。

出版社の規模(従業員数)はどれくらい?

次に各出版社の従業員数についても知っておきましょう。
『出版年鑑』(2010年版)のデータによれば、出版社の従業員数は以下のとおりです。

  • ・10名以下 2045社
  • ・11〜50名 911社
  • ・51〜100名 205社
  • ・101〜200名 142社
  • ・201〜1000名 116社
  • ・1000名以上 35社

他の業界と同じように、出版社の規模はさまざまです。
たとえば先に上げた講談社や小学館などの大手出版社は約1000名弱の従業員がはたらいています。

一方の中小の出版社についていえば、人数には非常に大きな差があります。
従業員が1人という出版社もあるくらい、出版社は特有の構造を持っています。

これは出版業特有といってもいいかもしれません。
本の内容はもちろん大事ですが、出版取次の口座さえ取得できれば、本を流通させることは十分に可能なのです(厳密にいえば取次の口座貸しなどの方法もあります)。

10名以下の出版社が2045社と最も多い割合となっていますが、こうした出版社はそのぶん求人の機会も多くありません。
もしそういった規模の小さな出版社への転職を希望する場合は、転職サイトの求人情報はもちろん、企業サイトの採用案内を欠かさずチェックしましょう。

なお、経歴については学歴不問とする出版社もあれば、4年制大学卒を条件とする出版社もあります。
こちらも合わせて確認しましょう。

出版社にはどんな職種があるのか?

出版社への転職を考えるとき、選べる職種は大きく分けて3つのパターンに分かれます。
これはみなさんの現職がどんな職種か、によっても変わってくるでしょう。

現職が営業なので、そのまま出版営業を目指すパターン。
編集者とは言わないまでも、現職がそれに近い職種なので編集者を目指すパターン。
経理や総務などの職種についても同様です。

漠然と出版社に入りたいと考えている方もいるかもしれませんので、営業・編集・その他の職種についてそれぞれ具体的に解説していきたいと思います。

出版社の営業の仕事内容とは?

出版社の営業

出版社の営業への転職を考えている人が多い中、じつは仕事内容をイマイチ理解できていないケースも多いのではないでしょうか。
その業務内容について具体的にご紹介します。

出版社の営業は未経験からの転職でも十分に可能

まず、この記事の核でもある「未経験」という点からすると、出版社の営業を目指す転職活動は決して難しくありません。
当然の話ですが、営業という仕事は対人スキルさえ身に付いていれば何とかなるものだからです。

そして、「未経験可」で求人募集している出版社は入社後にきちんと教育指導をしてくれます。
業界知識があるに越したことはありませんが、そうした知識は入社後でも十分に身につきますので未経験でも心配いりません。

わたしは以前、書店ではたらいていたので多少の業界知識はありましたが、転職後に教えてもらったことの方が圧倒的に多かったです。
興味があれば、知識ゼロでも全然問題ないと思います。

書店営業の業務内容とは?

出版社の営業部署内で担当ごとにエリアを割り振られ、そのエリア内の本屋さんを1軒ずつ営業して回ります。
エリアの割り振り方は効率を考えて沿線ごとになることがほとんどです。

営業先の本屋さんには、仕入れ担当者やジャンル担当者がいますので、その人に対して自社の本を置いてもらえないか営業をかけます。
新刊案内はもちろんですが、既刊本についての営業も欠かせません。

ある程度関係性ができてくれば、お店の中でフェアを提案することも出てくるでしょう。

営業に求められるスキル:編集者へのアドバイス

書店営業が主な仕事になりますが、それ以外に重要なのが企画力です。
これはまず、先述した書店でのフェアづくりの時に求められます。

たとえば特定の作家だけを集めてフェアを企画してみたり、読者の悩み別に選書をしてフェアを企画したり、といった具合です。
良いフェアを企画できると、書店員も乗ってくれますので、大きな受注につながります。
こうした企画力は出版社の営業に求められるスキルの1つです。

また、編集者へのアドバイスも重要な仕事です。
どういうことかと言うと、書店の売場から感じた「売れる本のエッセンス」を編集者に伝えるということです。
つぎの新刊のアイデアを考えるのも、営業の大事な仕事。

それはたとえば「帯」のキャッチコピーであったり、カバーのデザインであったり。
他社の本を研究することで、売れる本のエッセンスを掴むのです。
あるいは書店員から実際に聞いた意見を編集者に伝えてあげると喜ばれます。

それ以外にもPOPを書いたり、データや資料を作成したりといった仕事も営業の仕事です。

こうしたイメージを転職活動中に思い描ければ、現職での業務もまた違った捉え方ができるかもしれません。
なにより、転職後の業務内容を知ることができれば、後ほど述べるより強力な履歴書対策・面接対策をおこなうことが可能になります。

出版社の編集者はどんな仕事をするの?

編集者の仕事

さて、つぎにご紹介するのが出版業界の花形・編集の仕事です。
編集者はドラマの題材にもなったりして、カッコいいイメージを抱いてる人も多いのではないでしょうか。
そんな編集者の業務の実態に迫りつつ、転職前におさえておくべきポイントをご紹介します。

編集者は未経験可の募集が少ない

編集という仕事を一言で言うと「企画を練って本や雑誌をつくる仕事」です。
その性質上、営業とは違って未経験から採用してくれる出版社は少なくなります。

もし現職がライティングに関わる仕事だったり、何かを企画する仕事であれば転職は有利に進められるでしょう。
また年齢が25歳以下であれば、未経験でも採用を行っている出版社がありますのでチェックしておきましょう。

編集者の業務内容とは?

では具体的に編集の業務について見ていきましょう。
まずはなんといっても企画づくりです。

新刊や雑誌の記事をつくるにあたって、どんなテーマで企画をつくれば売れるのか?
読者にとって、今までにない切り口はどんなテーマなのか?これを読んで誰が喜んでくれるか?
そういった目線でつねに企画を考えるのが編集の仕事です。

また、著者を見つけるのも編集の仕事。
自分で決めた企画に沿うためには、どの著者に執筆依頼をすればいいのか?を考えます。

過去に付き合いのある著者であれば依頼しやすいですが、そうでない場合は自分で交渉をします。
基本的には部数の見込める作家を起用しますが、真新しさを求めるなら執筆経験のない新人を起用したいところ。
これも編集の腕の見せどころです。

編集に求められるスキル1:コスト意識

意外に思われるかもしれませんが、編集には刊行物に対してのコスト意識が強く求められます。

  • ・初刷部数が何部で採算がとれる?
  • ・定価はいくらが妥当?
  • ・装丁はどんなデザイン?デザイナーにかかる費用は?
  • ・何色刷り?
  • ・Cコードは?
  • ・宣伝・広告にはどれくらいお金をかける?

数え上げればキリがありませんが、こういったコスト感覚を持っているのといないのとでは編集のレベルは大きく変わってきます。
売れる本や雑誌の企画を考えるのも大切ですが、ビジネスとして成り立たせるためにはコスト意識は非常に重要です。

編集に求められるスキル2:人を動かす能力&体力

編集者は人を動かす能力にも長けている必要があります。
自分で企画が固まればそれでスタート!…というわけにはいきません。

社内の人を動かさない限り、その企画はスタートしないからです。
売れる企画であるとプレゼンをし、社内のお偉方をきちんと納得させる必要があるのです。

それ以外では著者・制作担当・デザイナーを動かす能力も求められます。
著者には納期通りに原稿を出してもらえるように依頼をし、制作には望み通りのレイアウトになるように指示。
デザイナーには装丁や挿絵のイメージを伝えて、理想通りに作ってもらえるように動いてもらう必要があります。

また、これはイメージどおりかもしれませんが体力が求められます。
原稿に赤字入れをして、再校。何度か繰り返したあとに校了となります。

締め切りをきちんと守らないと、印刷所への依頼が滞ります。
そうすると刊行計画が狂ってしまうので会社にとっては大きな損害となってしまうのです。
書籍であれば社内で調整が効く場合もありますが、雑誌は発売日が決まっているのでよりシビアになります。

編集は複雑な仕事が求められますが、そのぶん完成したときの達成感は何にも代え難いものになるでしょう。

出版社の総務や経理の仕事は?

3つ目の総務や経理の仕事についてですが、これは他の業界の業務内容とは大きく異なりません。
経理については求人の募集要項に簿記資格の応募要件があったり、実務経験者優遇などがありますが、基本的な簿記ができれば問題はないかと思います。

また総務や事務についても同様です。
事務においては出版界特有の「延べ勘」などの用語があるので、最初のうちは戸惑うかもしれません。
とはいえ、一般的な総務や事務であれば複雑な処理を求められることはほぼないでしょう。

出版社への転職で給料はどうなる?

転職の大きな理由の1つに昇給を狙うことがあります。
転職するからには給料アップはこだわりたいところです。

出版社の給料は比較的高い水準にあると言って良いと思います。
当然ながら、出版社によって給与水準は異なるので一概には言えませんが、他の業界と比較して劣るようなことはありません。

また、出版社の大きな特徴として「ベストセラーが出るとグッと給料が上がる」ということがあります。
これは出版社の本当に面白いところで、本が売れると給料がそのぶん素直に上がります。厳密に言えばボーナスの支給額が増えるということですが。

本づくりにかかったコストさえ回収できれば、そこからは売れれば売れた分だけモロに会社の収益になるので、利益率が高い業界といえます。

出版社の給料事情については、収入が高いのはココだ!初任給が高い出版社ランキングをご参考ください。

転職の関門!書類審査と面接対策

出版社の面接対策

さて、いよいよ転職活動をする上で欠かせない試験対策についてです。
出版社の試験は以下の流れが一般的です。

  • ・履歴書、職務経歴書による書類審査
  • ・論文試験
  • ・面接(2〜3回)

転職の場合は論文試験がない場合もあります。
これは出版社によって異なりますので、志望先の募集要項を確認しましょう。

なお、中途採用への応募には大きく分けて3つの方法があります。

1つ目が企業サイトからの応募
2つ目が新聞広告に載る不定期採用への応募(大手が多い)。
3つ目が転職サイトからの応募

いずれのルートを辿っても有利・不利に大きな差はありません。
それ以外にも人脈によるコネ入社(引き抜き含む)というルートもありますが、ここでは割愛します。

未経験の人は履歴書と職務経歴書をどうすればいい?

まずは書類審査を通らなければ始まりません。
履歴書は書式どおり書けばいいので問題ないかと思いますが、職務経歴書は初めて書く人も多いかもしれません。

書類作成時には、自分は未経験でも通用するぞ!という書き方にこだわりましょう。

たとえば編集者を目指すのであれば、現職の仕事や自分のいま持っているスキルがどの程度編集の仕事に生かせるのか?
未経験からの応募の場合は、ここを強くアピールする必要があります。

それをアピールするためにも、先述したように実際の出版社での仕事内容をきちんと知っておく必要があるのです。
仕事内容をイメージできれば、そのぶんだけ志望動機の内容も説得力を帯びたものになるでしょう。

面接のときには職務経歴書の中から質問されることもありますので、質疑応答までを想定して書くことをおすすめします。

論文対策について

編集者を志望する場合には論文試験が課されることがほとんどです。
文章の書き方の基本がなっているかはもちろんのこと、考え方が自社に合致するかを判断するための材料にもなります。

気になるのは論文のテーマについてです。
これは出版社ごとにかなり特徴が異なります。

  • ・入社してからやりたいことは?
  • ・時事問題を自分なりに論じてください
  • ・手紙形式(高校の恩師を正月に尋ねる手紙=主婦の友社)
  • ・指、穴、空、噂、点、時(抽象的なテーマ=新潮社)
  • (『出版―2012年度版』(産学社)より一部抜粋)

まず最もポピュラーなのが「自己紹介」「入社後の目標」などのテーマです。

わたしは転職活動のときにエクスナレッジという出版社の中途採用(編集)に応募しました。
そのときには400字詰め原稿用紙2枚に「入社後にやりたいこと」というテーマで論文を作成(制限時間40分)。

ぶっつけ本番でテーマが知らされるのは当然ですが、事前に論文対策をしていたのである程度の完成度にはなっていたと思います。
そのときにはエクスナレッジの刊行書籍を思い出しながら、自分なりにどんなテーマの本をつくりたいかを書きました。

面接対策

さて、もっとも緊張するのが面接対策です。

早速ですが、わたしの体験談から。

わたしは現在出版営業ですが、転職活動中は編集者の採用にも応募していました。
そのときに受けた面接で印象に残っているのが青春出版社の面接です。
正直に言うと、まさか書類審査に通ると思っていなかったので青春出版社の面接対策をほとんどしていませんでした。

ろくな対策も出来ずに面接本番。面接会場には役員と思われる偉そうな方が4人と司会進行が1人。一次面接からまさかの5対1でした。

質問内容は当たり障りのないことが多かったですが、1つだけ答えに窮した質問がありました。

それは、

「あなたのこの企画、著者は誰が適任だと思いますか?」

という質問。

編集志望でしたので、書類を送るときに新刊の企画書を5つほど送っていました。
そのうちの1つの企画について著者は誰にするの?と聞かれたわけです。

いま思えば編集者たるもの「新刊の著者は誰にするのか?」は考えていて当然です。
しかし、そのときはまったくの未経験の素人でしたので著者のことまでは考えていませんでした。

編集志望の方にはしっかりと対策のうえ、心して臨んでいただければと思います。

未経験者が出版社の転職活動をする上で共通すること

論文であれ面接であれ、とにかく重要なのは「志望先の書籍や雑誌を絶対に読んで研究しておくこと」です。

なにかを論じるときに、比較対象を出せるか出せないかで結果は大きく変わってきます。

たとえば、雑誌の編集者を志望するのであれば、その雑誌には何が足りなくて、どんな要素があればもっと売れるのか?
その雑誌を知っていないと絶対にそれを語ることは出来ません。

あるいは面接で「A社の本はどうしてベストセラーになったと思いますか?」という質問は余裕で聞かれます。
ですから、志望先はもちろんのこと、ライバル会社の研究も怠ってはいけません。

初めてでも臆することなく行動を起こすこと

最後に1つだけお伝えしたいこと。
それは「とにかく行動してみよう」ということです。

頭では「転職したいな」と考えていても、現職が忙しくてそうもいかないパターンの人がたくさんいます。
でもやっぱり動いてみないと何も変わりません。

「具体的に何からはじめればいいの?」

と聞かれますが、まずは何といっても転職サイトへの登録です。

転職サイトは無料でカンタンに登録できるので、登録しないのは非常にもったいないと思います。
自分の志望業界を登録しておけば、スカウトメールが届くこともあるので、そこを受けてみるのも1つの手でしょう。

実際に登録をしてみるとわかりますが、募集要項や給与・待遇などは出版社によって大きく異なります。
なかなか行動に移せない人でも、実際に会社のPR文などを見るとやる気が湧いてくるものです。

ただし、転職サイトによっては出版社の求人がほとんど載っていないこともあるので注意しましょう。

わたしの経験上、やはり大手のリクナビは出版業界の求人を豊富に扱っています。
また、リクナビエージェントは担当者がサポートしてくれるため、成功率が非常に高いのが特徴です。

大手の出版社から中小の出版社まで。それ以外でも編集プロダクション企画編集の募集も多く取り扱っているのでオススメです。

ちなみにわたしはリクナビで転職に成功しました。

あとがき

こうして転職活動を振り返ってみると、いろいろあったな〜と思います。
いまは出版社の営業ですが、編集者になっていた可能性もあるんだなと思うと不思議な感覚です。

出版社へ未経験で入るには、とにかく下調べと研究が大前提です。
それがないと、やはり見透かされるのがオチ。まずは行動して、勉強しましょう!

今回の記事はここまでで約7300字。
今までの記事史上、最も長いエントリーとなりました。
最後までお読みいただきありがとうございます。

みなさまの転職活動が成功することを心より祈っております!

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