良い本がきちんと評価されるために、出版業界で私たちがやるべきこと

既刊?無理だね!
新刊だけで棚が埋まっちゃうよ!

出版営業で書店をまわっていて、担当者からよく言われる言葉です。

いまの出版業界は新刊を出すことで資金を確保するというサイクルが根付いてしまっています。
毎日のように新刊が入ってきますから、書店の担当者としては自分の置きたい本があるのに新刊が入ってくるから困るのです。

このまえもある書店員の人が言っていました。新刊が多すぎると。
そしてその担当者は印象的な言葉を一緒に語ってくれました。




新刊よりも既刊のほうが売りやすい

その担当者は「新刊よりも既刊のほうが売りやすい」と言うのです。

私はピンと来なかったので理由を聞いてみました。
その理由は「新刊は[新刊]の色がついてしまう。既刊は自由に組み合わせて売り場をつくることができる」というものでした。

新刊は「新刊話題書コーナー」に置くのが基本です。
配本数にもよりますが、新刊をいきなり棚差しにするケースはあまり多くないでしょう。

どの業界も新商品は、新商品というだけで一定数は売れがたちます。
書店も同じで、新刊は真新しさから、ある程度の数はそれなりに売れるのです。

なので、書店は新刊が出てからの一定期間の間に「売れたという実績」を欲しがります(初速の良い本)。
出てからの新鮮なうちに売っておかないと返品にまわすことになるだけだからです。

良い本がきちんと書店に並んで読んでもらえるように

もちろん、新刊だって関係なしに既刊同様に組み合わせて売り場をつくることは可能です。
でも、出版営業の立場として「新刊には新刊の色がついてしまう」という見方は新鮮でした。

そして書店の担当者が、新刊ではなく既刊のほうが売りやすいと言ってくれたことがやけに心に響きました。

正直なところ、出版社としては既刊を売り伸ばしたほうが儲かります。
でも、心に響いた理由はそれだけではありません。

良い本であるにもかかわらず、初速が悪くて埋もれてしまい、二度と書店には並ばなくなってしまう本が圧倒的に多い出版業界。

新刊主義に陥っているこの業界で、良い本がきちんと評価されるためには、既刊にもしっかり目を向ける必要があります。

それは書店の担当者だけでなく、出版営業も同じこと。
自社の既刊で、自分が本当に良いと思える本を熱意を持って伝えなければなりません。

書店側の「新刊が入ってくるから既刊は置けない」というのは全くもって仕方のないことです。
でもどうか、埋もれている本にもう一度チャンスを与えて欲しいのです。

書店にその可能性を提示するのが、出版社の仕事です。
「あなたがそこまで言うなら、一度ためしてみようか」と思ってもらえるような出版営業をする必要があります。

こうした小さな取り組みが積み重なれば、イイ本がきちんと評価される出版業界をつくることにつながるのです。