本屋の個性を殺す「書店チェーンランキングの功罪」

本屋にはたくさんの興味が詰まっています。
その興味をかりたてる要素の1つが「書店の売り上げランキング」です。

いま世の中ではどんな本が注目されているのか?
どんなことが世間では問題になっているのか?

本屋のランキングを見ると、それだけで思いを巡らせることができます。
さて、今回はそんな書店のチェーンランキングの必要性と、それが奪い去る本屋の個性についてのお話です。




本屋のランキングには2種類ある

本屋に行くと、多くのお店で「ランキングコーナー」を設けています。
文芸書、ビジネス書、実用書などジャンルごとにランキングが分かれていることが多いですね。

実はこのランキング、2パターンに分けることができます。
それは「そのお店で売れた数のランキング」か「書店チェーンのランキング」のどちらかです。

「そのお店で売れた数のランキング」は文字通り、いまあなたがいるその本屋で売れている本のランキングです。

これは実に明快で、その本屋の客層や傾向がそのまま反映されています。
いわばその本屋の「個性」が反映されているということです。

一方の「書店チェーンのランキング」は、その書店チェーンすべての売り上げを加味したランキングです。
この場合、いまあなたがいるその本屋の売れ数はあくまで全体に寄与しているだけで、個別には関係がありません。
あくまでもチェーン全体の売り上げランキングが反映されているにすぎません。

書店ランキングの功罪

この2種類の書店ランキングに良し悪しはあるのでしょうか。
と、この俎上に上げている時点でおわかりかと思いますが、答えは「あり」です。

「そのお店で売れた数のランキング」の良い点・悪い点

まずは「そのお店で売れた数のランキング」の良し悪しについて考えてみましょう。

最初に良い点から。
良い点は先にのべた通り、お店の客層や傾向がそのままランキングに反映されることにあります。
お店の個性がランキングに反映されているので、個々の本屋の個性が光ります。

しかし、個々の本屋でランキングをつけることの弊害もあります。
それは、もしかしたら本当はもっと売るべき本があるかもしれないということです。

個々の書店でランキングをつけていると、視野が狭くなりがちです。
出版業界全体を見ていれば、もっと売れ行きの良い本・ベストセラーがあるのに、それを売り逃してしまう可能性があります。
こうした事態はチェーン全体でランキングを統一していれば、ある程度は防ぐことができます。

「書店チェーンのランキング」の良い点・悪い点

次に「書店チェーンランキング」についてです。

まず良い点ですが、書店チェーン全体でランキングをつけているので、ベストセラーの売り逃しを防ぐことができます
本屋のランキングはお客さんに売れている本をアピールすることはもちろんですが、書店員に対しての意識づけにも大きく作用します。

「ランキングに入っているから、いい場所で展開しなきゃ」

「そろそろ在庫が切れそう。早く発注しなきゃ」

こうした書店員の行動は書店チェーン全体のランキングが植え付けている「意識」があってこそのもの。

売れる本を売れるときに売る。この基本姿勢を書店のチェーンランキングがきちんと意識させてくれるのです。

では反対に悪い点はなんでしょうか。
それは本屋の個性を殺すことです。

書店チェーン全体のランキングは、その地域にあるその店の客層や立地を無視します。
本来はまさにこの店で売れたはずの本を、書店チェーンランキングが殺してしまうのです。

大ベストセラーがあったとしても、それが全国すべての本屋で売れるわけではありません。
その地域のお客さんはもっと違う本を求めているかもしれません。
書店チェーンランキングは、そんなお客さんの声を黙殺しているのです。

本屋の個性・多様性を守るために

書店チェーンのランキングに入る本が過剰なほどの場所を占拠し、売れるはずの本を殺してしまう。
それはあまりにも残念なことです。

K書店、T書店、M書店がその代表格。この3書店はどのお店に行ってもランキングが同じです。
店舗数が多いこともあり、各書店にランキングを委ねるのは非効率なのかもしれません。

でも「どこの本屋に行っても同じ本しか並んでない」なんて状態を生み出し続ければ、もう誰も本屋に興味がなくなります。
店舗数が多いだけに、これは深刻な問題です。決して一部の本好きだけに当てはまることではなくなってきています。

本屋の個性、そのお店ではたらく書店員の想いが色濃く反映された本屋が増えること。
いま、それを願うばかりです。