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読み放題サービスの限界?アマゾンが講談社の1000を超える作品すべてを削除

公開日:2016/10/05 
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アマゾンは2016年8月3日から、電子書籍の読み放題サービス「キンドル アンリミテッド」をスタートさせました。月額980円(税込)を支払えば対象の書籍や雑誌が読み放題になるという、電子書籍時代の突入を予感させるサービスです。

ところが、出だし好調に見えたアマゾンの読み放題サービスは現在大きな問題に直面しています。

というのも、講談社の提供する作品をアマゾンが一方的に削除してしまい、大きなトラブルが起きているからです。

なぜアマゾンは講談社の作品を削除しなければならなかったのでしょうか?

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読み放題サービスの限界?採算が合わない事態に

NHKの報道によれば、今回の騒動について以下のように取り上げられています。

講談社はこのサービスに1000を超える書籍や雑誌を提供してきましたが、8月中旬には人気の高い10数作品が、先月(9月)30日以降にはすべての作品が削除され、配信停止になったということです。このため、講談社は3日、「アマゾンの一方的な配信停止に強く抗議する。配信を元に戻してほしい」などとする声明を発表しました。(「電子書籍の配信停止 講談社がアマゾンに抗議声明」)

講談社といえば、出版社の売り上げランキングで毎年1位2位を争う出版業界の巨人です。
圧倒的なコンテンツ量と質を持つ同社の作品群がアマゾンから削除されたことは、今後の読み放題サービスを考える上で非常に重要な出来事と言えるでしょう。

そもそも、なぜアマゾンは講談社の作品を削除しなければならなかったのか。それを理解するためには、アマゾンの電子書籍読み放題サービスの利益構造を知る必要があります。

読まれた分だけ利用料が支払われる仕組み

まず結論をわかりやすく言うと、アマゾンの電子書籍読み放題サービスは「読まれた分だけ利用料を出版社に支払う」という収益分配の構造があります。

当然、読まれなければ利用料は発生しません。反対に言えば、ものすごい量のコンテンツを読者に読まれると多くの利用料が出版社に支払われることになります。

今回問題となったのは後者、つまり講談社の提供する作品が読者に読まれまくったために、アマゾンの利用料支払いが限界に達したことにあります。

そもそも、アマゾンの「キンドル アンリミテッド」のサービス開始にあたって講談社との間には”上乗せ契約”があったとされています。

サービス開始に合わせて多くの書籍をそろえようとしたアマゾンが、出版社に配分する利用料を年内に限って上乗せして支払う契約を締結。しかし想定以上の利用が続いて負担に耐えきれなくなり、利用が多い人気本をラインアップから外し始めたとみられる。

サービス開始から1週間ほどで漫画やグラビア系の写真集など人気の高い本が読み放題サービスのラインアップから外れ始め、アマゾン側から「想定以上のダウンロードがあり、出版社に支払う予算が不足した」「このままではビジネスの継続が困難」などの説明があったとしている。(アマゾン読み放題、人気本消える 利用者多すぎが原因?

通常であれば読まれた分だけ利用料を支払えばいいわけですが、そこに”上乗せ”があったことでアマゾンの予算が不足してしまったのです。

読み放題サービスは、なんといってもコンテンツ量がモノを言う世界です。どんなに知名度のあるアマゾンであっても、読むことができる作品数が少ないようでは使う動機になりません。

アマゾンとしてはスタートダッシュをかける意味で、業界の巨人である講談社に「利用料を上乗せするからよろしくね」と言って作品の提供を求めたわけです。

アマゾンの契約違反ではないのか?

事前に通告することなく、勝手に作品を削除してしまったアマゾン。もはや独裁的な色すら感じてしまうわけですが、アマゾンに落ち度はなかったのでしょうか。

当然ながら、講談社はアマゾンに対して強く抗議しています。

アマゾン社側の一方的な事情により、同社ランキング上位に並ぶ書目が提供元の弊社に何らの連絡もなく、配信を停止されるという事態が発生しておりました。この際、弊社の提供書目は十数作品がサービスの提供から除外されております。この事態により、著作者との間で合意している提供書目が著作者のかたがたへ事前にご説明させていただくことなく同サービスから消えることとなり、さらに人気書目の閲読を楽しんでいただいている読者の皆様にも大きな不利益をもたらすこととなりました。

しかしながら事態は好転いたしませんでした。そればかりか、弊社が抗議を行っている最中に、アマゾン社は、9 月 30 日夜以降、弊社が提供する 1,000 を超える作品すべてを、一方的に同サービスから削除しました。このような状況に、書目を提供してきた出版社として大変困惑し、憤っております。(講談社プレスリリースより)

一部報道にもあるように、アマゾンと講談社がどのような契約書面を交わしたのかは明らかになっていません。しかし、アマゾンが独断で契約違反をするとは考えられません。

なぜなら、もし契約書面に「アマゾン側の予算が不足した場合には、作品を取り下げる」旨が書かれていれば、ここまで問題にはなっていないからです。

実際、アマゾンは「道義的な責任はあるが契約違反ではない」とのコメントを通知しています。

今回の騒動では、講談社以外にも同じようなかたちで光文社が提供した約550タイトルすべてがラインナップから外されているようです。

アマゾンの独断専行を許してはいけない

アマゾンは圧倒的な商品の品ぞろえと強力な物流網によって、出版業界に大きな影響力を持っています。

売り上げの多くをアマゾンに支えられている出版社も多いわけですから、どうしても強く出られないのは事実。

しかし、今回はなんといっても講談社です。アマゾンとしても講談社の作品を扱えなくなるのは、会社として大きな損害になるでしょう。

アマゾンの独断を許すわけにはいきません。勝手に作品を取り下げるのは道義的に許される行為ではないからです。

「予算が足りなくなってしまったのだからやむを得ない「ビジネスなんだから仕方ない」とする見方もあるでしょう。だとしても、作品を取り下げる旨を事前に通告する義務がアマゾンにはあったはずです。

これ以上出版業界がアマゾンに振り回されることがないよう、ぜひ講談社には強い姿勢で望んでもらいたいところです。

それにしても、アマゾンの社内には一体どんな人格の人間が、どんな経営方針のもとに働いているのでしょうか。「道義的な責任はあるけど、契約違反はない」と言ってしまうあたり、利益至上主義と捉えられても仕方がありません。

いくら売り上げをあげていても、お客さんや取引会社に嫌われるようなことをしていては、ビジネスはやがて継続不可能になるでしょう。

アマゾンにはいま一度、「売り手よし・買い手よし・世間よし」の”三方よし”を肝に銘じてもらいたい限りです。

 


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