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出版社の圧力?図書館がベストセラー本を自由に貸し出しできない理由

公開日:2016/11/24 
出版社と図書館のベストセラー貸し出し

図書館は自由に本を揃えることができないのでしょうか?

書籍、とりわけ文芸書などの読み物の売り上げは減少するばかり。そんな中、図書館のベストセラー本の貸し出しを抑制する動きが少しずつ広がってきています。

なぜ図書館の貸し出しに口出しをする者が出てきたのか?その理由と課題について考えてみましょう。

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出版協会が図書館へ異例の声明を発表

出版社による図書館への圧力とも取れるような発言は以前からありました。

その一例として、新潮社の佐藤隆信社長による発言を紹介しましょう。

複本や新刊の貸出猶予について「著者からの声が強く、放置できないほどになっている」と現状を説明した。年内をめどに、作家とともに図書館にむけて貸出猶予を求める要望書を発表する予定。猶予期間は1年間。佐藤社長は、対象とされる本は「著者と出版社が合意した本」に限定し「日本図書館協会などとの決めごとではなく、(公共図書館への)お願いごとであり、節度、程度問題」であることを強調。「著者に(執筆への)モチベーションを与えられないと、最終的には出版文化の衰退につながる」と危惧した(新文化より)

ちょっと長いのですが、かいつまんでいうと「人気の新刊は1年経ってから貸し出ししてね。じゃないと本が売れなくなっちゃうから」ということです。

公共図書館は無料で利用できます。そこで人気の本、特にベストセラー本が借りられるとあれば利用者が殺到するのは当然の話。

図書館で借りる人が増えれば本が売れなくなってしまいますから、出版社としては貸し出しに条件を付けたいわけです。

また、最近の事例では日本書籍出版協会が全国約2600館の公共図書館の館長あてに送付した要望書が注目されています。

図書館の中には、資料費不足などを理由に、利用者のリクエストが上位にある本の過度な購入や、寄贈を呼び掛けるところがあり、出版に携わる者に懸念が広がると指摘。「出版界からの声と住民の要望とのバランスに配慮され、文芸書・文庫本の購入や寄贈に、格段のご配慮をいただき」たいと訴えた(「ベストセラーなど購入「配慮を」…図書館に要望」)

このような要望をするのは異例とのことで、出版社の危機感が強く伝わってきます。

図書館は出版社の売り上げを何冊くらい奪っているのか?

又吉直樹『火花』が売れに売れたのは記憶にあたらしいですね。芥川賞史上、最も売れた本として大変な人気となりました。

この作品が結果的に出版社と図書館の間に”火花”を散らすことになっているわけですが、購入冊数と予約状況を見れば出版社の悲痛さも理解できます。

以下は東京都武蔵野市の市立中央図書館の『火花』に関するケースです。

1階カウンター付近に掲示された予約ランキングには文学賞を受賞したベストセラーが並ぶ。約970件の予約が入った『火花』は市内3つの市立図書館で計30冊を所有。それでも2年待ちで「もっと早く読みたい」との要望が届く(「無料貸本屋」論争 販売部数を上回った貸出数

970人がすでに購入ではなく貸し出しされた本で同作品を読もうとしています。

これはつまり、970冊分の売り上げが失われることと同じです。非常に単純な計算であり、実際には待ちきれずに本屋で購入してしまう読者もいるでしょう。

とはいえ、人気の高い本を図書館が貸しまくって出版社の売り上げを奪っているのは事実です。

長い目で見た時、本が売れないと出版社や著者は本を書けなくなってしまいます。それは結果的に、読者であるわたしたちの読める本、面白い本が失われることと同じです。

「自分さえ良ければ…」という心理があるのは人間誰しも同じ。でも、「読みたい本にはお金を払う」という姿勢を少しでも多くの人が持てば、図書館と出版社の”火花”は収まるのではないでしょうか。

 


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