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”永久保存版”に釣られる人々。日販の「雑誌ベスト版」企画がハマるワケ

公開日:2016/04/25 
雑誌ベスト版企画

期間限定、閉店セール、大幅値引き…。
私は、こんなセールス文句に踊らされながら生きてきました。

よく吟味もしないで、おっ、お得じゃん、なんてテンションだけでモノを買ってしまうのです。
それはそれで良い買い物ができることもあるのですが、同じ割合で失敗しています。

上記で挙げた3つの文言以外にもう1つ、わたしがついつい踊っちゃうフレーズがあります。
それが「永久保存版」「ベスト版」といったフレーズです。

日販とMPDは、このベスト版心理を上手く活用した雑誌企画で成果をあげています。

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雑誌の”ライトユーザー”を取り込む巧みな企画

日販とMPDは、出版社と一緒に雑誌のライトユーザーをターゲットにした販売企画をはじめています。
その名も「BEST SELECTION」。ネーミングからして、収集欲を掻き立てられます。

新文化の記事によれば、この企画は以下のような内容で行われています。

「BEST SELECTION」は、出版社が雑誌本誌から人気のあるコンテンツや特集を集めて、増刊号などで発行する。「いわばCDのベスト盤のような、雑誌のベスト版企画」(新文化2016年3月24日号)

CDのベスト盤、これはわかりやすいですね。
アーティストのベスト盤って本当にズルいんですよ。たいてい売れますから。

活動が20年とか30年の歌手にもなると、

「ちょ、何枚目のベスト盤だよ、ベストを尽くすにもほどがあるよ」

と言いたくなるくらい、ベスト盤を連発しています。

とはいえ、売れるのは良いことです。
だから、このベスト盤を雑誌でもやっちゃおうよ、というのが「BEST SELECTION」ということですね。

知名度が低い”Honya Club”も役に立っている

みなさんは本屋のポイントカードを持っていますか?
最近は大手チェーンを中心に、自社のポイントカードを発行してお客さんを囲い込もうとしています。

そんな中、わりと地味な存在としてHonya Clubというポイントカードがあります。
これは、自社で大々的にポイントカード制度をつくるのは難しい日販店(日販から仕入れている書店)が採用している会員カードです。

あまり知られていないHonya Clubですが、今回のBEST SELECTION企画では大いに役立っているようです。
ポイントカードはお客さんのメリットだけではなく、企業側の「データ収集」にも活用されています。

日販「Honya Club」会員の購入履歴からみる調査では、同一店舗で同一雑誌を買う人の購入頻度は「半年間で1〜2回」が8割超。特集内容や付録をみて雑誌を買うケースが多い。日販とMPDはこのデータを踏まえて、出版社に「BEST SELECTION」の意義を伝え、”ベスト版増刊号”の制作を勧めている(同上)

つまり、誰がどの雑誌をどんな理由で買っているかを分析したうえで、雑誌を再編集して再販売しているということですね。

「BEST SELECTION」という言葉とともに、平積み販売台などには”ベスト版”の文字が踊っています。

私が「BEST SELECTION」に釣られた理由

私もこの雑誌企画に”釣られた”人間の一人です。

イオン系列のスーパーにある雑誌売場の一角に見つけた「ソト遊び入門完全マニュアル」という1冊。
表紙を見て手にとった瞬間に「あ、これは手元に1冊持っておくといいかも」と感じ、ものの30秒くらいで購入を決めていました。

衝動的に買った雑誌は失敗することも多いのですが、中身を読んでみるとコンテンツも充実していて大変満足できる1冊でした。

とはいえ、私が”ベスト版”の文字に惹きつけられて購入したことは紛れも無い事実です。
”釣る”というとマイナスなイメージがつきまといますが、こんな釣られ方ならもっと釣られたいところですね。

人はベスト版や永久保存版という言葉に弱い。この弱さは明々白々です。
実際のところ、展開強化店の実売率が未実施店より10ポイント高いケースも見られています。

消費者心理を上手く突いたこの企画は、今後も色々な雑誌にも広がっていく可能性があるでしょう。
雑誌回帰への新たな起爆剤になれば、書店の売り上げを支えていた雑誌を復活させることも夢ではありません。

 


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