発売延期の罪は重いが、雑誌「MERY」が出版業界に与えた功績は大きい

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「MERY」というメディアをご存じでしょうか。若い女性のほとんどは知っているかもしれませんね。

おそらく、自分の言葉で記事を書いてコツコツアップしているウェブメディアの人間は、総じてキュレーションを敵視しています。

それもそのはず。自分の言葉で記事を書かずに、適当なサイトから文章を引っ張ってきて”オリジナル感”を演出される。本当のオリジナルを制作している側からすれば、窃盗被害以外の何者でもありません。

さらに、その盗んできた記事から広告収入を得ているわけですから、困ったものです。

さて、冒頭のMERYですが、そのやり口は窃盗そのものでした。WELQ問題でDeNAが取り沙汰されるようになって、「嫌メリ論」がいたるところで交わされています。

あまり馴染みのない人に説明しておくと、MERYは美容やファッションに関する女性向けのキュレーションメディアです。

キュレーションメディアとは、1つのテーマについて記事をまとめるために、ネットを巡回して文章を集めて作られたサイトのこと。

サイト内にオリジナルの文章はほとんどなく、多くは引用や転載によって成り立っています。さらに画像までも他サイトからもらってきて掲載されることがほとんど。




雑誌「MERY」の勝算

そんなMERYは、Webメディアにとどまらず紙雑誌の発行にまで進出しています。

雑誌メリー創刊号

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”盗んできた”お金で、よくもまあそこまで登りつめたなという感じですが、紙雑誌が不調な中であえて進出しているわけですから勝算はあったのでしょう(2016年12月時点でVOL.4まで発行)。

しかし、先般の「WELQ問題」に端を発したDeNAのキュレーションメディアは総じて非公開を発表。MERYも12/7付で非公開となりました。

そして、雑誌「MERY」2017年3月号の発売も延期すると発表しています。

昨日の記者会見で守安社長は「成長を追い求めすぎた」と弁明。実際のところ、社長はキュレーションメディアの実態についてまったくつかめていなかったと思います。

特にMERYについてはなおさらです。なぜなら、MERYを運営する株式会社ペロリはDeNAのキュレーションメディアとは切り離された運営体制だったからです。

あたらしいビジネスモデルで大儲けしたものの、そのモデルに限界がやってきたのかもしれません。MERYはサイト閉鎖はせず、サービス再開のために準備をしていくとのことです。

雑誌「MERY」はあたらしいメディアの姿を見せてくれた

MERY批判は続いていますが、じつは出版業界にとっては貴重な存在、稀有な存在だったと言えるかもしれません。

キュレーションメディアをやりながら紙の雑誌を発行するという、いわば”逆走”をするなんてことは、本来あり得ません。なぜなら、いくらスポンサーによる広告収入が見込めたとしても、紙の雑誌に乗り出すのはリスクが高すぎるからです。

スマホを使って情報収集をするのが当たり前になった10代〜20代の女性に、紙の雑誌に目を向ける機会を作った。こう考えると、MERYが出版業界ひいては雑誌に与えた功績は大きいと思います。

注目すべきは、雑誌「MERY」にはアプリをはじめとするネットと紙の雑誌を連動させた企画誌面があること。紙の雑誌を買ってアプリも一緒に使う楽しみ方は、「ネット+紙の雑誌」という新しいメディアの萌芽かもしれません。

もちろん、無断転載や根拠のない情報を載せるメディアが許されるわけではありません。しかし、MERYという存在が若年層、特に若い女性に紙雑誌のあたらしい在り方みたいなのを提示してきたのは確かでもあります。

女性を夢中にさせたMERYですが、今後どのような運営体制になるのか。健全な運営を確立させて、雑誌業界に戻ってきて欲しいと思います。

キュレーションメディアというビジネスモデルが崩壊しつつあるいま、あたらしい収益源を見つけるのは大変困難な状況ではありますが。