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なぜ「新社」の名が付くの?経営危機を乗り越えた出版社3選

公開日:2016/11/08 
経営危機や倒産を乗り越えた出版社

出版社にはさまざまな名前があります。

由来もさまざまで、以前紹介した「難しい漢字を使った出版社名」もちょっとした話題になりました。

出版社名で何かルールを見つけられないか、そう考えたときにフッと浮かんだのが「◯◯新社」という名称。

「新社」と名がつく出版社には何か理由があるのでしょうか?今回は新社事情を考えてみたいと思います。

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新社と名がつくのは倒産した経験の証?

わたしが出版社にいたころ、先輩から教えてもらったことがあります。それは、

「新社って名前がつく版元は一回潰れてるんだよ」

ということ。なるほど、これは興味深いと思って調べてみました。

結論から言うと、そんなことはありませんでした。厳密に言うと、新社が付くからと言って倒産経験があるとは限らないということです。

しかし、潰れたり、経営危機に陥ったことのある出版社が「◯◯新社」を名乗っているケースがあるのも事実。

一度潰れたり、経営危機に陥った経験。そこから再起を図ったからこそいまがある。そんなたくましい出版社を3社ほど、ここでご覧に入れたいと思います。

中央公論新社

経営危機から「新社」として復活を遂げた出版社としては、もっとも有名かもしれません。

中央公論新社は、もともと中央公論社という社名でした。
しかし、90年代に経営危機に陥ったことをキッカケにして読売新聞が救済。あらたに中央公論新社として生まれ変わりました。

中央公論新社は、中公文庫や中公新書を持っており「中公ブランド」を確立しています。実際、中公という名前のほうが知名度は高いかもしれません。

ちなみに、わたしは中公新書のカバーデザインが大好きです。あの学術書感満載のテイストたるや。

河出書房新社

河出書房新社という出版社に、みなさんはどんなイメージを持っておられますか?
わたしは完全に文芸書版元という強い認識を持っていて、同時にとても大好きな版元でもあります。というか、文芸書版元なのか。

なにはともあれ、なんか河出書房ってだけでいいよね。

そんな河出書房新社も、もともとは河出書房という名称の出版社でした。では何が原因で「新社」になったのか?この理由がなかなか壮絶です。

1954年(昭和29年)に創業70周年記念企画として総合雑誌『現代生活』の創刊を公告するも、立ち上げの資金を編集スタッフに持ち逃げされた。『現代生活』は『知性』という名で創刊するが、これが遠因となって1957年(昭和32年)に経営破綻、新たに河出書房新社を創設し再建された(Wikipediaより)

河出書房と言えば。俵万智『サラダ記念日』をはじめとするベストセラー、さらには綿矢りさ『蹴りたい背中』(127万部)といった人気作家を輩出している版元です。そんな出版社が資金を持ち逃げされた過去を持つとは、何とも意外ではありませんか。

こうした壮絶な体験をしてきたからこそ、もしかしたら人気作品を多く生み出せるのかもしれません。

柘植書房新社

柘植(つげ)書房新社と読みます。
おもに社会思想に関する本を多く刊行している印象で、個人的にけっこう好きな版元です。

柘植書房が新社に生まれ変わった経緯は以下のとおりです。

九六年の春に二度目の不渡り手形を出して柘植書房(旧社)は任意整理になった。旧社の口座は倒産状態なので一旦凍結して、受け皿ができて、新刊が出たら旧社の売掛金を新口座が入金する。そのお金を弁護士に渡して、債権者に分配されるという手順だった(「一日も出荷を休まず、旧社から新社に切り替えた」より)

これは柘植書房新社社長のインタビュー記事なのですが、どのような経緯で会社を引き継ぎ、運営してきたかが記されており、読んでて面白いです。

中小の出版社が立ち上がれる機会は減っていくのだろうか

新文化をはじめ、出版業界のニュースを見ていると本屋や出版社の倒産が目立ちます。

一度倒産をしても、事業を他社に継承したり、新社として復活できればいいのですが、今後はそれも厳しい環境になってくるかもしれません。

デジタルに舵を切る版元が増えているなかで、紙の出版物とどう折り合いをつけていくか。各出版社の経営判断が、これからの出版業界のキーとなるでしょう。

 


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