使い古した言葉で出版不況を語るのはもうやめよう

出版不況。それは、業界に生きる人間にとって最大の関心事。

本が売れなくなってきた当初は「意義のある危機感」を抱いていたはず。
それがいまや「息のような危機感」に変わってきたように思います。

つまり、呼吸をするのと同じ感覚で、出版不況に対しての危機意識が慢性化しているのです。
売れなくなったけど、もうこれが当たり前だよね。みたいな。

今回はそんな「息のような危機感」を代表する「出版不況を語るときには欠かせないフレーズ」を紹介します。
もう、こんな言葉で議論をしても何も生み出すことはできません。いまこそ、一歩まえへ。




「電子書籍の台頭で紙の本がね…」

出版不況の1つの要因ともいわれる電子書籍。
この存在を最初に挙げることで、「出版不況を憂えてますよ感」をアピールすることが可能。
確かに、電子書籍の広がりで紙の本が売れなくなると、本屋が潰れるのは事実です。

しかし、それ以外の根拠は脆弱なものです。

この電子書籍による出版不況を唱える人は単純に「新しいものは正義」という感覚に陥ってるだけでしょう。

電子書籍なんて先の見えないものに出版業界を潰されてたまるものかと言いたいです。
紙の本がどれだけ長い間、カタチを変えずに生き延びてきたと思ってるんだと。

1990年代にソニーが出した「データディスクマン」をご存知ですか?
あんな恥ずかしくなるような代物、ただの黒歴史でしかないでしょう。

念のため確認しておきますが、「電子書籍なんて先の見えないもの」というのは記録媒体の寿命が非常に短いという根拠からきています。
電子書籍に限らずですが、とにかく電子的な記録媒体は本当に寿命が短い。

VHS、フロッピーディスク、MD(ミニディスク)などは完全に死に絶えました。
CDやDVDですら、あと何年もつかわかりません。

『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』の中に非常にわかりやすいたとえがあります。

つまり、本はスプーンと同じ。もはや完成されていて、改善する余地がないのです。

これほどまでに優れた紙の本を差し置いて、「電子書籍が原因で出版不況が…」などと御託を並べる人に出版業界を語ってほしくはありません。

電子書籍と紙の本の本質を理解しないまま、使い古した言葉で出版不況を語るのはもうやめましょう。
そんな意味のない議論はやめて、もっと紙の本を礼賛しましょうよ。