小さな出版社を救う!「自社メディア」という新たな収益源のつくり方

最近、出版業界はさまざまなニュースが飛び交っていますね。

たとえば小学館の赤字決算。あの大御所版元が30億円超の赤字を計上したというニュースは、出版業界にとって大きなインパクトでした。
栗田出版販売や太洋社が倒産したことや、固定資産の特別損失などがあるとはいえ、暗いニュースであることに変わりありません。

さらに言うと、雑誌の売り上げが書籍を下回ったというニュースもありましたね。

出版物の大手取り次ぎ会社の日販=日本出版販売は1日、昨年度の決算を発表し、雑誌の売り上げがおよそ32年ぶりに書籍を下回ったことが分かりました(NHK NEWS WEBより)

日販によりますと、雑誌の売り上げが書籍を下回るのはおよそ32年ぶりだということです。国内の出版は全体として落ち込みが激しく、中でも雑誌についてはインターネットやスマートフォンの普及などの影響から発行部数や売り上げの減少が続いていました(同上)

今まで、出版業界は雑誌の売り上げに支えられてきました。業界の調子が良かったころは書籍よりも雑誌のほうが5000億円近く売り上げが高かったんです(参考記事:【出版不況】書籍・雑誌の売り上げ金額が過去最悪の落ち込み)。

雑誌の売り上げ不振は、さきほどの小学館の赤字決算にも大きく関係しています。
このまま放置すればどうなるか。出版社や書店はどんどん潰れ、やがて本がない世界に突入することになるでしょう。

電子書籍に活路を見い出せばいいという考え方はもちろんあります。
でも、スマホアプリやネットニュースに集客を奪われている現状を考えると、もっと別の視野で考える必要があるでしょう。

私が個人的に注目しているのは、東洋経済新報社が運営しているサイト「東洋経済オンライン」です。




出版以外のビジネスモデルとして好事例

東洋経済オンラインといえば、月間ページビューが167,748,290(1億6774万8290)という、モンスターサイトです。
超有名ですから、いまさら説明する必要もないかもしれません。

東洋経済といえば、「週刊東洋経済」が有名ですね。そこで得た取材や編集のノウハウを、ネットに活用したのが東洋経済オンラインというわけです。

どのようにして収益をあげているかといえば、メインはやはり広告収入です。これは多くのWebメディアと同じ。

東洋経済オンラインがすごいのは「ID登録が不要で、全記事を無制限で読むことができる」というところです。
サイトを立ち上げてからは有料会員制も考えたそうですが、結局は完全無料のサイトとなっています。

課金モデルにするか、広告モデルにするかは一長一短です。しかし、個人的には東洋経済オンラインの判断は正解だと思います。

記事の途中で有料会員登録へ誘導されるストレス

なぜなら、有料制や一部課金制はユーザーに大きなストレスを与えるからです。
実名は出しませんが、某ビジネスオンラインやダイヤモンド系などは会員登録が必要となります。

有料会員だと会員限定の記事を読めたりするのですが、無料会員or未登録では「この記事は読めません」というのがあり、ストレスです。
特に悪質なのは「2ページ以降を読みたければ有料会員になってね」というやつ。あれは本当にユーザーによくありません。

とはいえ、この意見はライトユーザーの一方的な言い分です。
それぞれのビジネスモデルがあってのこと。有料会員には有料会員なりのビジネスがあるわけですから、文句は言えません。

話が逸れましたが、東洋経済オンラインのウェブメディア運営は多くの出版社が見習うべき方法です。
出版社にとっても、読者にとってもウィンウィンとなっている東洋経済オンラインの仕組みは、もはやビジネスマンのインフラといってもいいでしょう。

中小出版社が自社メディアを持つべき理由

じつを言うと、私は以前勤めていた会社で「自社メディアをつくりたい」と提案したことがあります。
そのときは社内リソースや私自身の事情もあって実現はしませんでしたが、勝算はありました。

なぜ出版社、特に中小出版社が自社メディアを持つべきなのか。
理由はカンタンで、他に収益源をつくって本業の出版を継続させるためです。

出版社はコンテンツで収益をあげています。それを本や雑誌だけに使っているのはどう考えてももったいない。
ハッキリ言って、紙の印刷物だけにこだわってコンテンツを広めようとするのは時代錯誤です。

せっかく良いコンテンツがあるのなら、自社でメディアをつくればいい。そうすれば、PVに応じて広告収入も入ります。
PVが集まれば、自社メディアのサイト上にバナー広告を貼って宣伝もできます。新刊の宣伝を自力でできるのは大きなメリットです。

新刊に関連してちょっとした面白記事を書けば、いまや簡単にバズらせる(SNSなどで大きく拡散される)ことだって可能です。

乗り越えるべきは収益0状態の”我慢”

私はいまフリーランスでウェブサイトをつくっているわけですが、メディアをつくるときには乗り越えなければならない、いくつかの壁があります。

その最たる例が「我慢」です。
わかりやすくいえば、「誰も読んでいないサイトの記事をコツコツ書く努力」をしなければいけません。

ウェブサイトは作ったからといってすぐにお客さんが集まるわけではありません。
ページビューが集まるまでにはけっこうな時間を要します。検索エンジンに評価される必要もありますし、SNSで認知されるのにも時間がかかります。

「あー、誰も見てないのに記事書いてて意味あるのかな…」

という悲観的な気持ちを乗り越えないといけないのです。

もし出版社が自社メディアをつくるのであれば、長期的な視野に立って収益を考える必要があります。
会社の偉い人たちは「1ヶ月も経過してるのに、まだ利益がゼロなのか?」と怒るかもしれません。

でも、それにめげてはいけません。そんな短期間で利益はあがらないからです。
メディアは種を植えるのに似ています。お金という収穫物は、ゆっくりコンテンツを足していかないと手に入りません。

本当に小さな出版社でも自社メディアは作れるのか?

ここまで聞いて、このように感じる人が多いはずです。「小さな出版社にそんなリソース(人的資源)はない」と。

ごもっともです。出版社が自社メディアをつくるときに乗り越えなければならないのは、リソースの確保と制度づくりです。

とはいえ、私は少人数の出版社でも時間をかければ自社メディアは作れると思います。
その理由は以下の4つです。

  • ・以前よりもウェブサイトが簡単に作れるようになった
  • ・出版社にはすでにコンテンツがある
  • ・文章を書くことには長けている人がいる(はず)
  • ・SNSによって短期間で認知度アップを図れる

小さな出版社ですから東洋経済オンラインと同じようなウェブメディアはむずかしいでしょうが、コンテンツの見せ方を工夫すればどうにでも。
たとえば自社の新刊情報を”読者の役に立つコンテンツ”として発信するのです。

どこの出版社も自社のウェブサイトに新刊情報を載せていますが、概要や目次といった味気ないものばかり。正直、わざわざ見る価値はありません。

そうではなく、あくまでも「メディア」として発信するようにすればいいのです。
SNSを活用すれば拡散も十分に見込めます。

少しずつウェブメディアを作り始めている出版社も増えてきましたが、まだまだ少数派。
早く始めればそれだけ他社と差別化を図りやすくなるでしょう。

自社メディアの立ち上げ・制作に時間はかかると思います。それでも、やる価値は絶対にあります。
来るべき”出版業界大淘汰”に向けて、対策を取った者だけが生き残る世界がいずれやってくるでしょう。