出版社別と作家別、本屋の文庫コーナーで本が探しやすいのはどっち?

最近やたらと文庫本を読んでいます。
本屋に行くと文庫売り場は大きなスペースを使って展開されています。おそらく、蔵書数に占める割合はかなり高いのではないでしょうか。

それだけ刊行点数が多く、なおかつ文庫を買い求める人が多いわけですが、ここで1つ疑問があります。
文庫の棚は出版社別と作家名別、どちらで分けたほうが本を探しやすいのか?ということ。

みなさんも、いざ目的の文庫本を探そうというときに手間取ることはありませんか?

今回はいろんな視点に立って、本屋の文庫本の棚づくりについて考えてみたいと思います。




大型書店はほとんどが出版社別で分かれている

100〜200坪程度であれば初めて行く本屋でもわりとスグに目的の文庫が見つかるのですが、500〜1000坪クラスの大型書店になると初訪問で目的の文庫を見つけるのは難易度が高くなります。

新潮文庫、文春文庫、講談社文庫、小学館文庫、幻冬舎文庫などなど、大型書店はほぼ100%の割合で出版社別に棚が分かれています。

大型書店が出版社別に文庫を分ける理由はあとで詳しく説明しますが、ここからは出版社別・作家別に文庫を分けることのメリットとデメリットについて考えてみたいと思います。

出版社別に文庫を分けるメリット

さきほど説明したとおり、大型書店をはじめ多くの書店が出版社別の分類を採用しています。
まずはそのメリットについてみていきましょう。

  • ・本の管理がしやすい
  • ・棚に統一感が生まれる

本の管理がしやすい

まず1つ目のメリットは、出版社別に分けることで書店員の本の管理がしやすくなることが挙げられます。

知らない人も多いですが、文庫本には出版社が独自に分類番号を付けています。

たとえば新潮文庫の松本清張『砂の器(下)』であれば、【ま-1-25】という分類です。
これは何に役立つかといえば、まず1つは在庫管理に役立ちます。

そしてもう1つ、お客さんからの在庫問い合わせでも効果を発揮します。
本来であればタイトルや作家名で本を探せばいいのですが、蔵書数が多い本屋では背表紙の文字を目で追うのは大変です。
そこで役立つのが分類番号です。文庫には下記の写真で示したような番号が付いているので、番号を順に追っていけば文庫本を発見しやすくなります。

いまの本屋はパソコンで在庫管理をしていることがほとんどで、検索すればスグに分類番号がわかるようになっています。

文庫本の分類番号

棚に統一感が生まれる

表紙は違えど、文庫は背表紙やサイズなど全体的なデザインは同じです。
そのため、出版社ごとに分かれていると差しで並べた時や平積みにしたときに統一感が生まれます。

背表紙に統一感があると本屋の棚がキレイに整理され、遠目に見ても近くに見ても空間が美しい印象に仕上がります。

出版社別に文庫を分けるデメリット

  • ・特定の作家の本が網羅できない
  • ・出版社を意識して本を買う読者はほとんどいない
  • ・出版社の垣根を超えた棚づくりができない

作家の本が複数の棚に分かれてしまう

出版社別に文庫を並べる最大の弊害は、特定の作家の本が別々の棚に散らばってしまうことにあります。
さきほど挙げた松本清張は複数の出版社から文庫本が出ており、作品が非常にたくさんあります。

新潮文庫、文春文庫、講談社文庫など、同じ松本清張作品にも関わらず棚がバラけてしまうのです。
これでは「松本清張の作品を全部チェックしたい」というニーズを持つお客さんには大変不便で、わざわざ別の棚を探さないといけなくなってしまいます。

出版社を認識して本を買う読者は少なく、不便

業界人ならともかく、一般読者にとって出版社というのは言ってみればどうでもいい枠組みです。
だって、本が面白ければどこの出版社でもいいわけですから。

そういうお客さんにとって、「本屋の都合」で出版社別に文庫本を分けるのは甚だ迷惑な話でしかありません。

出版社の垣根を超えた棚づくりができない

文庫本は出版社別の棚に縛られるのが基本ですから「ジャンル分け」というものができません。
そのため、フェアなどで棚をつくるとき、出版社ごとに棚が分かれていると横断的な陳列がしにくくなります。

もちろん、フェア台などで大々的にやるときは関係ありません。
しかし、もともと分類されている棚(元棚=人間で言う”本籍地”みたいなもの)で関連本を集めようと思っても、出版社の垣根を超えた陳列がむずかしくなってしまいます。

出版社の枠にとらわれることがないジャンル、たとえばビジネス書などは、関連本の選択肢が増えるので魅力的な売り場がつくりやすくなります。

作家別に文庫を分けるメリット

  • ・作家の作品を網羅できる
  • ・背表紙が多様になり、棚に表情が生まれる

作家の作品を網羅できる

さきほども説明しましたが、作家別に文庫本を分けることで特定の作家の作品が1つの場所に集まります。
これによって、たとえば「まだ読んでない松本清張作品あるかな?」といった探し方ができるようになるでしょう。

また、新刊が出た場合にも発見しやすくなるメリットがあります。

背表紙が多様になり、棚に表情が生まれる

さきほど出版社別に本を分けることで棚に統一感が生まれると説明しました。
一方、作家別に棚を分けることでカバーのデザイン・文庫サイズ・色がバラバラになるので、多彩な表情が生まれます。
ちなみに文庫本は同じサイズに見えて、出版社ごとに大きさが微妙にちがうことがあります(たとえば幻冬舎文庫は通常の文庫よりも横幅が5mm小さくなっている)。

このあたりは表裏一体なので優劣はつけられませんが、売り場をにぎやかな印象にすることが可能です。

作家別に文庫を分けるデメリット

  • ・本の管理がしにくい
  • ・売り場の棚が雑然とする

本の管理がしにくい

こちらもさきほど説明した内容と重複しますが、作家別に分かれているとお客さんからの在庫問い合わせに対応しづらくなります。
書店員は本の在庫を聞かれて売り場をさがすとき、背表紙を目で追って探すことが少なくありません。
このとき、作家別に文庫が分かれていると目で追うのが非効率になります。

下記の写真は、新潮文庫で統一したものと、そうでない場合の比較です。
新潮文庫で統一されているものは、それぞれの項目が同じ配置になっているので、棚に並んでいても目で追いやすいメリットがあります。

一方、出版社がバラバラの場合はデザインや大きさも異なるので、背表紙を目で追うときに非効率な動線をたどります。

新潮文庫

タイトル、作家名、分類番号が目で追いやすい

バラバラの文庫

目で追いづらい

売り場の棚が雑然とする

これもさきほどの裏返しで、文庫本のサイズや色味がバラバラになるので、売り場が雑然とした印象になります。
良し悪しありますが、やはり見づらいですね。

本屋の蔵書数に合わせて決めるのがベスト?

わたしの経験上、大型書店で作家別に文庫を分類しているお店は見たことがありません。
膨大な蔵書があると、作家別に管理するのはどうしても大変なので非効率だからです。

一方で、「特定の作家の本が欲しい!」という読者目線で考えると出版社別の文庫売り場は大変非効率です。
わざわざ棚を行ったり来たりするのは、本をさがすときに面倒ですから。

やっぱり「あ、この本まだ読んでない!」という、作家の未読本が発見ができたときの喜びは大きいと思います。
そういった意味では、作家別の売り場のほうが理想ではあります。

本屋とお客さんの非効率がぶつかる文庫売り場。
今後も変わることなく出版社別の売り場が続くのでしょうが、読者目線としては作家別の棚が増えてほしいものです。