売上ランキングから読み解く「売れるビジネス書」の法則

売れている本は世相を表すと言いますが、それはビジネス書でも顕著です。
ドキュメンタリーなどのノンフィクションは社会で起きた事象ですが、ビジネス書の売れ筋はその時代の人々がどんな悩みを持っているかを知るのに有用です。

今回は過去5年のビジネス書ベストセラーをランキングで比較し、その時にビジネス界隈でどんなことに関心が寄せられていたのかを考えてみます。
併せて、売れるビジネス書はどのように変化してきたのかについても分析を加えます。




過去5年のビジネス書売り上げランキング

それでは早速、過去5年のビジネス書売り上げランキングをご紹介します。
ランキングはいずれもトーハン「年間ベストセラーアーカイブ」の【単行本・ビジネス書】のジャンルから作成しています。

2010年ビジネス書ランキング

順位タイトル著者出版社本体価格
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 岩崎夏海ダイヤモンド社1,600
エッセンシャル版 マネジメント 基本と原則P.F.ドラッカー/上田惇生 編訳 ダイヤモンド社2,000
誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方 66のルール野口 敏すばる舎 1,400
たった1分で人生が変わる片づけの習慣小松 易中経出版1,300
日本経済の真実 ある日、この国は破産します辛坊治郎
辛坊正記
幻冬舎952
世界一わかりやすい「速読」の教科書
斉藤英治三笠書房1,400
平林都の接遇道 人を喜ばせる応対のかたちと心 平林 都大和書房1,300
20歳のときに知っておきたかったこと
スタンフォード大学 集中講義
ティナ・シーリグ
高遠裕子 訳
三ツ松新 解説
阪急コミュニケー
ションズ
1,400
新・片づけ術 断捨離やましたひでこマガジンハウス1,200
10経済のことよくわからないまま社会人になってしまった人へ池上 彰 海竜社 1,429

2010年は完全に「もしドラ」「ドラッカー」「ダイヤモンド社」の年。
2010年の総合ランキングでも「もしドラ」は1位を獲得しています。2013年7月現在で発行部数255万部。

もしドラに引っ張られてドラッカー関連の副読本がバカ売れするという、出版社としてはなんとも美味しい年でした。
もしドラはマンガ、TVアニメ、映画にもなり、社会現象を起こしたといっても過言ではありません。
ドラッカーのマネジメントは経営者向けの本ですが、それを広くあらゆる場面で使えるように噛み砕いたことが勝因でしょう。

他には3位にランクインした「会話がとぎれない!話し方 66のルール」(すばる舎)にも注目です。
話し方の本はビジネス書の激戦ジャンルですが「会話が途切れるあの気まずい瞬間がイヤ」という人々の心をガッチリ掴みました。
タイトルで勝ちを取った本ではないでしょうか。

2011年ビジネス書ランキング

順位タイトル著者出版社本体価格
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの
『マネジメント』を読んだら
岩崎夏海ダイヤモンド社1,600
人生がときめく片づけの魔法近藤麻理恵サンマーク出版1,400
9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディ
ズニーの教え方
福島文二郎中経出版1,300
日本中枢の崩壊古賀茂明講談社1,600
エッセンシャル版 マネジメント 基本と原則P.F.ドラッカー
上田惇生 編訳
ダイヤモンド社2,000
働く君に贈る25の言葉佐々木常夫WAVE出版1,400
稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?亀田潤一郎サンマーク出版1,300
憂鬱でなければ、仕事じゃない見城 徹
藤田 晋
講談社 1,300
死ぬまで仕事に困らないために20代で出逢っ
ておきたい100の言葉
千田琢哉かんき出版1,100
10 「20代」でやっておきたいこと川北義則三笠書房1,200

一瞬目を疑いましたが、「もしドラ」が2年連続でビジネス書ランキング1位を獲得。
ジャンルの垣根を超えた総合ランキングでも5位にランクインしています。

2位はご存知、こんまりさん。
いま「片づけの魔法」は海外でも翻訳書が発売され、非常に売れています。
物に感謝しながら捨てる」という日本的な感覚が外国人にウケているようです。

注目は9位・10位にランクインしている千田琢哉氏、川北義則氏という2人のビジネス書作家の作品。
2作品ともタイトルに「20代」という言葉が入っていて、明確に若者をターゲットにしています。

2011年は東関東大震災があった年。さらにユーロ危機なども絡んできた影響で、就職活動は完全に買い手市場でした。
そういった経済状況で若者の意識が高まった(あるいは危機感を抱いた)ために読みやすいビジネス書が売れたと考えれます。
両作品とも価格を1,100円・1,200円と、若者が手に取りやすい価格設定にしている点も見逃せません。

2012年ビジネス書ランキング

順位タイトル著者出版社本体価格
人生がときめく片づけの魔法
人生がときめく片づけの魔法(2)
近藤麻理恵サンマーク出版各1,400
100円のコーラを1000円で売る方法永井孝尚中経出版1,400
感情の整理ができる女(ひと)は、うまくいく有川真由美PHP研究所1,100
営業マンは「お願い」するな!加賀田晃サンマーク出版1,300
サムスン式 仕事の流儀ムン・ヒョンジン
吉原育子 訳
サンマーク出版1,500
9割がバイトでも最高のスタッフに育つ ディズニーの教え方 福島文二郎中経出版1,300
金持ちになる男、貧乏になる男スティーブ・シーボルド/弓場 隆 訳サンマーク出版1,500
「超」入門 失敗の本質鈴木博毅ダイヤモンド社1,500
大富豪アニキの教え兄貴(丸尾孝俊)ダイヤモンド社1,600
10日本人にしかできない「気づかい」の習慣上田比呂志クロスメディア・パブリッシング発行/インプレスコミュニケーションズ発売1,380

2012年のビジネス書はサンマークの年でした。こんまりさんが念願の1位を獲得。

それ以外では7位と9位の作品に注目。それぞれお金に関する自己啓発書です。
お金は誰もが関心のあるテーマですので、そのテーマで良質なビジネス書を出せれば大きく化ける可能性があるということです。
反対にいえば、お金についてのテーマの本がランクインしていない年は、良質なお金の本が生まれなかったともいえます。

『大富豪アニキの教え』はテレビでも紹介された人のようですが、Amazonのレビューには痛烈は批判もチラホラ。
事実か否かはわかりませんが「なるほど、それで売れた本なのか」と思わせてくれます。面白いので一度Amazonのレビューを読んでみる価値はあるかと思います。ビジネス書ではよくある話ですが。

大富豪アニキの教え

2013年ビジネス書ランキング

順位タイトル著者出版社本体価格
スタンフォードの自分を変える教室 ケリー・マクゴニガ
ル/神崎朗子 訳
大和書房1,600
伝え方が9割佐々木圭一ダイヤモンド社1,400
雑談力が上がる話し方
30秒でうちとける会話のルール
齋藤 孝ダイヤモンド社1,429
夢をかなえるゾウ(2) ガネーシャと貧乏神水野敬也飛鳥新社 1,500
統計学が最強の学問である西内 啓ダイヤモンド社1,600
いつやるか?今でしょ!
今すぐできる45の自分改造術!
林 修宝島社1,200
人生はワンチャンス!水野敬也
長沼直樹
文響社1,400
「ついていきたい」と思われるリーダーになる
51の考え方
岩田松雄サンマーク出版1,400
生き方 人間として一番大切なこと稲盛和夫サンマーク出版1,700
10今やる人になる40の習慣林 修宝島社1,200

2013年は『スタンフォードの自分を変える教室』(大和書房)が第1位。
海外の大学名を冠した書名の本が続々と出版されましたが、きちんとランキングに入ってきたまともな本といえるでしょう。

この年は水野敬也、林修の両氏がランキングを賑わせた年でもありました。
特に水野敬也さんの『人生はワンチャンス!』は本の企画・つくりが受けてヒットしました。
のちに大化けするのが第2弾の『人生はニャンとかなる!』ですが、やはり本好きにはネコ好きが多いのでしょうか。

『夢をかなえるゾウ』は独特のユルさの中に気づきがあり、他の本にはない要素を持っています。

2014年ビジネス書ランキング

順位タイトル著者出版社本体価格
まんがでわかる7つの習慣
まんがでわかる7つの習慣(2)
フランクリン・コヴィー・ジャパン 監修/小山鹿梨子 まんが宝島社各1,000
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え岸見一郎
古賀史健
ダイヤモンド社1,500
ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく堀江貴文ダイヤモンド社1,400
道をひらく松下幸之助PHP研究所870
こうして、思考は現実になるパム・グラウト/桜
田直美 訳
サンマーク出版1,700
アタマがみるみるシャープになる!! 脳の強化書加藤俊徳あさ出版1,300
伝え方が9割佐々木圭一ダイヤモンド社1,400
お金が貯まるのは、どっち!?菅井敏之アスコム1,300
世界のエリートはなぜ、「この基本」を大事に
するのか?
戸塚隆将朝日新聞出版1,300
10「考える力」をつける本轡田隆史三笠書房1,100

2014年はビジネス書マンガのブームが生まれた年です。
もともと定番書として売れていた『7つの習慣』をマンガにすることで、ファンだけでなく新規読者も取り込むという見事な戦略。
「自己啓発書」が売れた印象が強い年で、「エリート」関連の本も多く出版されました。

松下幸之助の『道をひらく』はカバーデザインを変えるなどしてリバイバル。
カバーやイメージ戦略の重要性を物語る、貴重なサンプルといえます。

これからのビジネス書はどこへ行く?

振り返ってみると、売れているビジネス書は主に以下のどちらか・あるいは両方の要素を持っています。

  • ・企画があたらしい
  • ・タイトルに引きがある

本は「中身」がなくても売れます
ただし、中身がない分だけしっかりと着飾らないといけません。

インターネットが当たり前になり、面白い本の口コミによる伝播は格段に強い影響力を持ちました。
しかし、それでも相変わらず「本を買う・読む」という行為は個人的なものです。

つまり、企画が新しくて多くの人に「読んでみたい」と思わせればいいのです。そうすれば人は自分の判断だけで本を買います。
読んだ後につまらなくても関係ありません。わかりやすく言えば「謎解きはディナーのあとで」みたいなもんです。

あたらしいトレンドを生み出した出版社がその年の覇者になることができます。
そろそろビジネス書マンガはブームが終わり(もう終わってる?)、次にどんなトレンドが生まれるのか。
新しいトレンドを生み出す力は、「出版社の生き残る力」とイコールなのかもしれません。