100万部が続々!絵本の発行部数ランキングTOP50

1年間で、最も絵本が売れる季節をご存知ですか?
答えはズバリ「クリスマスシーズン」です。

プレゼントをするための需要によって、絵本担当者は毎年のように悲鳴をあげます(いろんな意味で)。

本が好きで、よく本屋に行く人も絵本については知らないことが多いのではないでしょうか?
売り場が分かれているので、手に取る読む機会も少なくなりますよね。

一見するとたいしたことなさそうな絵本の売り上げ。
しかし、絵本は「怪物級」の売り上げを誇る、驚異的なジャンルであることは意外と知られていません。




ロングセラーで愛されるのが絵本の魅力

「ミリオンセラー」
「ベストセラー」

こうした言葉を聞くと、短期間でパッと売れた本というイメージを抱きがちです。
売れる本はテレビをはじめとするメディアでもてはやされ、消費され、やがて消えていきます。

しかし、絵本のミリオンセラー・ベストセラーはそうしたイメージとは対局にあるジャンルといってよいでしょう。

子どもが読み、兄弟姉妹で共有し、さらにはその次の世代にまで読み継がれる。
ほかのジャンルにはない読まれ方をするのが絵本の特徴とも言えます。

絵本がどれだけ長く、多くの子どもに愛されているかを知るにはどうすればいいでしょうか?
やはりランキング形式で発行部数をチェックするのがいちばんです。

いったい、どんな絵本が上位にランクインしてくるのでしょうか?

絵本の発行部数ランキングTOP50

順位作品著者出版社/本体価格発行部数/初版年
1いないいないばあ松谷みよ子/文
瀬川康男/絵
童心社/700円569万部/1967年
2ぐりとぐらなかがわりえこ/文
おおむらゆりこ/絵
福音館書店/800円472万部/1963年
3はらぺこあおむしエリック・カール/作
もりひさし/訳
偕成社/1200円368万部/1976年
4てぶくろエウゲーニー・M・ラチョフ/絵
うちだりさこ/訳
福音館書店/1000円300万部/1965年
5おおきなかぶA.トルストイ/再話
内田莉莎子/訳
佐藤忠良/画
福音館書店/800円278万部/1962年
6ぐりとぐらのおきゃくさまなかがわりえこ/文
やまわきゆりこ/絵
福音館書店/800円269万部/1966年
7ねないこだれだせなけいこ/作・絵福音館書店/600円268万部/1969年
8しろくまちゃんのほっとけーきわかやまけん/作こぐま社/800円267万部/1972年
9三びきのやぎのがらがらどんマーシャ・ブラウン/絵
せたていじ/訳
福音館書店/1100円252万部/1965年
10しろいうさぎとくろいうさぎガース・ウィリアムズ/文・絵
まつおかきょうこ/訳
福音館書店/1200円245万部/1965年
11いないいないばああそびきむらゆういち/作偕成社/680円244万部/1988年
12ノンタンぶらんこ のせてキヨノサチコ/作偕成社/600円243万部/1976年
13きんぎょがにげた五味太郎/作福音館書店/800円228万部/1977年
14ノンタンおやすみなさいキヨノサチコ/作偕成社/600円227万部/1976年
15ノンタン!サンタクロースだよキヨノサチコ/作偕成社/700円226万部/1978年
15新ウォーリーをさがせ!マーティン・ハンドフォード/作・絵フレーベル館/1300円226万部/1987年
17からすのパンやさんかこさとし/絵・文偕成社/1000円224万部/1973年
18ぐるんぱのようちえん西内ミナミ/作
堀内誠一/絵
福音館書店/800円222万部/1965年
19はじめてのおつかい筒井頼子/作
林明子/絵
福音館書店/800円218万部/1976年
20おしいれのぼうけんふるたたるひ・たばたせいいち/作童心社/1300円212万部/1974年
21新ウォーリーのふしぎなたびマーティン・ハンドフォード/作・絵フレーベル館/1300円210万部/1989年
22100万回生きたねこ佐野洋子/作・絵講談社/1400円207万部/1977年
23しょうぼうじどうしゃじぷた渡辺茂男/作
山本忠敬/絵
福音館書店/800円206万部/1966年
24じゃあじゃあ びりびりまついのりこ/作・絵偕成社/600円205万部/1983年
25新タイムトラベラー ウォーリーをおえ!マーティン・ハンドフォード/作・絵フレーベル館/1300円200万部/1988年
26うさこちゃんとどうぶつえんディック・ブルーナ/文・絵
いしいももこ/訳
福音館書店/700円196万部/1964年
27ゆきのひのうさこちゃんディック・ブルーナ/文・絵
いしいももこ/訳
福音館書店/700円195万部/1964年
28ごあいさつあそびきむらゆういち/作偕成社/680円192万部/1988年
29ノンタン およぐのだいすきキヨノサチコ/作偕成社/600円191万部/1977年
30ちいさなうさこちゃんディック・ブルーナ/文・絵
いしいももこ/訳
福音館書店/700円189万部/1964年
31どろんこハリージーン・ジオン/文
マーガレット・ブロイ・グレアム/絵
わたなべしげお/訳
福音館書店/1200円188万部/1964年
31がたんごとん がたんごとん安西水丸/作福音館書店/700円188万部/1987年
33ノンタン おねしょでしょんキヨノサチコ/作・絵偕成社/600円187万部/1978年
34おふろでちゃぷちゃぷ松谷みよ子/文
いわさきちひろ/絵
童心社/700円175万部/1974年
35いいおかお松谷みよ子/文
瀬川康男/絵
童心社/700円184万部/1967年
36ボードブック はらぺこあおむしエリック・カール/作
もりひさし/訳
偕成社/900円183万部/1997年
37ぐりとぐらのかいすいよくなかがわりえこ/文
やまわきゆりこ/絵
福音館書店/800円182万部/1976年
38だるまちゃんとてんぐちゃん加古里子/作・絵福音館書店/800円178万部/1967年
39そらいろのたねなかがわりえこ/文
おおむらゆりこ/絵
福音館書店/800円177万部/1964年
40うさちゃんとうみディック・ブルーナ/文・絵
いしいももこ/訳
福音館書店/700円175万部/1964年
41ノンタンのたんじょうびキヨノサチコ/作・絵偕成社/600円174万部/1980年
42くだもの平山和子/作福音館書店/800円167万部/1979年
43あかんべノンタンキヨノサチコ/作・絵偕成社/600円166万部/1976年
44ノンタン あわぷくぷくぷぷぷうキヨノサチコ/作・絵偕成社/600円164万部/1980年
45おつきさま こんばんは林明子/作福音館書店/700円177万部/1964年
46わたしのワンピースにしまきかやこ/絵と文こぐま社/1100円161万部/1969年
47ぐりとぐらのえんそくなかがわりえこ/文
やまわきゆりこ/絵
福音館書店/800円158万部/1979年
48ひとりでうんちできるかなきむらゆういち/作偕成社/680円157万部/1989年
49ピータラビットのおはなしビアトリクス・ポター/作・絵
いしいももこ/訳
福音館書店/700円153万部/1971年
50ノンタン ボールまてまてまてキヨノサチコ/作・絵偕成社/600円151万部/1982年
出典:トーハン「ミリオンぶっく」2015年版

国民的な絵本は長く愛される作品ばかり

ランキングを見ていると、さまざまなことが読み取れます。
特に注目したいのは「初版年」です。

堂々の第1位となった『いないいないばあ』は569万部を発行しており、2位以下の作品を圧倒しています。
初版年は1967年と、じつに50年近く読み継がれているわけですね。

それ以外にもランクインする絵本の多くは60〜70年代が多く、80年代、90年代は数える程度です。

このことから、一体どんなことが読み取れるでしょうか?
まず確実に言えることは、絵本は「短期間での爆発的な売り上げは少ない」ということです。

爆発的な売り上げがないという表現だけを聞くと、あまり良いイメージを持たれないかもしれません。
しかし、言い方を変えれば「何世代にもわたって長く読み継がれる名作」ということでもあります。

これは、絵本以外のジャンルではなかなか見られない傾向です。

小説などの文芸書では、いわゆる「定番書」と呼ばれる作品があります。
しかし、それらの多くは時代とともに変化していきます。
新進気鋭の小説が出れば、発行部数は過去の名作をあっという間に上回るでしょう。

さらに、ビジネス書はその傾向が顕著です。
時代に合わせた新しい切り口が求められるのがビジネス書の常。
読み継がれる名作はありますが、それもごくわずかです。

あらゆる本のジャンルを横断的に見ると、いかに絵本が特殊な売れ方をしているかがおわかりいただけるかと思います。

不朽の名作『いないいないばあ』は圧巻の569万部!

発行部数569万部で圧倒的なトップになったのが『いないいないばあ』(童心社)です。
この作品は、子どもをあやす定番「いないいないばあ」を絵本のかたちで表現した絵本です。

超名作ですから、読んだことがある人も多いかと思います。
実際に子どもをあやすときに使うとわかりますが、とても実用的な本なんですよね。
この絵本を使うと、子どもが本当に楽しそうに笑ってくれます。

言葉がわからない赤ちゃんでも視覚的に理解できるのが大きな特徴といえるでしょう。
多くの世代に読み継がれることでベストセラーとなっています。

著者の1人である、故・松谷みよ子さんは『いないないばあ』の誕生秘話を雑誌のインタビューで語っています。

売れるものをという欲ではなく、赤ちゃんの絵本がほしいという気持ちだけで、つくりたくてつくったから。売れた理由なんてわからないけど、やっぱり赤ちゃんをひざに乗せて書いたのがよかったのかな。(「MOE」2015年11月号)

松谷さんの長女が生まれたのがちょうと1960年代。このころには赤ちゃん向けの絵本がほとんどなかったそうです。
そこで自分の子どもに読ませる絵本をつくろうと考えたのが、『いないいないばあ』が生まれるキッカケでした。

見えない誰かに対して作る作品も良いものです。
しかし、「最も近くにいる大切な人」に向けてつくった本は、どこか色がちがうのかもしれませんね。

2位以下の絵本もチェック!

ランキングに戻りましょう。
第2位以下の絵本も名作揃いで、多くの人が一度は目にしたことがある作品ばかりではないでしょうか?

ここでは2〜5位までの作品についてカンタンにご紹介します。

第2位『ぐりとぐら』472万部

初版1966年の本作は、50年近く読み継がれている日本の代表的な絵本です。
ランキング50位中、5作がランクインしている「ぐりとぐらシリーズ」は、全作合計で累計発行部数が1269万部。
凄まじい数字とともに、福音館書店の儲かり具合を勘ぐってしまいます。汚れた心ですみません。

第3位『はらぺこあおむし』368万部

本屋の絵本売り場では必ずといっていいほど目にする作品が『はらぺこあおむし』です。
鮮やかな色彩とともに、ちょっとした仕掛けがついている絵本は視覚的にも直感的にも楽しい作品です。
色鮮やかな絵本は、大人でも十分に魅了される1冊ですね。

第4位『てぶくろ』300万部

もともとはウクライナの民話として発表されていた作品を、福音館書店の創業に深く関わった松居直が着手して生まれた絵本です。
1つの手袋にたくさんの動物が入るところに、ファンタジーを感じられます。
こちらも初版が1962年と、かなり歴史のある作品といえるでしょう。

第5位『おおきなかぶ』278万部

もともとはロシアの昔話だったものを翻訳したのが『おおきなかぶ』です。
「うんとこしょ どっこいしょ」という掛け声を聞けば、誰もがストーリーを思い出せる絵本ではないでしょうか。
ロシア語にはない表現を、子どもたちが一体になって使える言葉に置き換えるあたりに翻訳者の力量を感じます。

今後、絵本づくりはドコに向かうのか?

これだけ長く読み継がれる作品にはきちんとした理由があるはずです。
作品の面白さだけではなく、絵のインパクトやテイスト・雰囲気も重要な要素といえます。

また、いかに仕掛けで魅せるかも絵本のポイントです。

最近で言うと偕成社の「100かいだてシリーズ」がおもしろい絵本の1つです。
縦にずっと続く本の作り方に、思わず大人でも引き込まれる楽しさがあります。

今後の絵本はどのような展開を見せていくのでしょうか?
少子化がすすむにつれて、児童書ジャンルは今後ますます厳しくなっていくはずです。

子どもを魅了するのはもちろん大切です。
しかし、今後は大人ひいては高齢者が読んで楽しい絵本をつくるなどの戦略が必要になってくるのかもしれません。

以上、絵本の発行部数ランキングベスト50でした。