絶対に知っておきたい出版業界の動向と基礎知識

出版業界には他の業界とは異なる慣習や知識が多く存在します。
そうした必要となる基礎知識はどのように身につければいいのでしょうか?

今回は出版業界に入ったばかりの人にもわかりやすく、業界の基礎知識を紹介していきたいと思います。




まずは出版業界の売り上げ規模を知ろう

出版業界の基礎知識として、まずおさえておきたいのが売り上げ規模の推移です。
わかりやすく言えば、昔はどのくらい本が売れていて、今に至るまでどれくらい売り上げが変化しているかということ。
出版業界の現状を把握して、今後は何が課題なのかを読み取るのに役立ちます。

出版業界売上推移

日本の出版販売額推移(出所:出版科学研究所)

上記の表からも読み取れるように、出版業界の販売額は年々減少しています
2013年の出版販売金額は1兆6823億円で、9年連続でマイナス。
1996年の売り上げをピークにして、約63%の水準にまで落ち込んでいます。

特に売り上げの落ち込みが激しいのが雑誌です。雑誌は16年連続で減少を続けています。
グラフからも読み取れるように、書籍は比較的緩やかな低下なのに対して、雑誌の落ち込みが激しいのが読み取れます。
宝島社をはじめとする雑誌版元が女性ファッション誌の付録などによって売り上げを伸ばしていましたが、現在は効果が薄くなってきていると言わざるを得ません。

出版業界の「3つの数字」

カンタンではありましたが、まずは売り上げ規模を把握することができました。
次におぼえておきたいのが、出版業界に関する「3つの数字」です。
毎年変動する数字を知っておくことで、売り上げ規模と同じように、出版業界の変化を客観的にとらえることができます。

重要な数字はいくつもありますが、出版業界を動向を把握するために以下の「3つの数字」を知っておきましょう。

  • ・全国の書店数は約1万4000店
  • ・全国の出版社数は約3500社
  • ・出版業界の返品率は40%ほど

書店数と出版社数の推移

出版社数と書店数の推移1999年~2013年(日本著者販促センター)より

書店数と出版社数は年々減少しています。
出版業界の売り上げ規模が減少していることからも容易に想像できますが、書店が潰れることで出版社も潰れるというスパイラルが起きているのです。

返品率の上昇についても出版業界では現在、大きな課題となっています。
いま現在、出版業界の返品率は約40%と言われています。つまり100冊仕入れても、そのうち40冊は返品されてしまうということです。

返品率が高いということは、その分だけムダなコストがかかることになります。
そのため、日本の二大取次である日販とトーハンは近年、返品率抑止のための施策を取り始めています。

特に日販は、書店に介入して注文数をコントロールし、過剰仕入れを抑制する動きを見せています。
また、報奨施策(書店が本を販売した分だけ、おこづかいをあげますよっていう作戦のこと)によって、返品率を下げる取り組みも増えてきています。

現在、日販は返品率を27%まで下げることを目標としているようなので、それに向けて今後は返品抑制の動きがさらに活発になるかもしれません。

ちなみに、新刊点数が多いことが返品率の増大を招いているということも知っておくと、さらに理解が深まるでしょう。

出版業界ならではの仕組みと構造とは?

他の業界では見られない、出版業界特有の仕組みについても知っておきましょう。
絶対に知っておかないといけないのが「委託販売制度」と「再販売価格維持制度」の2つの仕組みです。

字面だけを見ると、なんともむずかしそうな印象を受けますが、内容はいたってシンプルです。

まず「委託販売制度」をひとことで言えば、「書店が出版社の代わりに本を販売すること」を指します。
出版社は本をつくるだけで、広く読者に販売する場所を持っていません。
ですから、書店にお願いして本を売ってもらう(委託する)ことで本を販売することが可能になります。
そのときに重要なのが返品です。書店は仕入れた本が売れ残った場合、一定期間であれば出版社に返品することができます。

もう1つが「再販売価格維持制度(再販制度)」についてです。
再販制度をひとことでいうと「出版社が書店に対して販売価格を指定できる」ことを指します。
つまり、書店は値引きも値上げもできません。

委託販売制度と再販制度について、くわしくは以下の記事をご参照ください。

いちばん本が売れているのはどこの書店?

全国約1万4000店の書店の中で、売り上げが良いのはどこの書店なのかでしょうか?
まずチェーン別のランキングではTSUTAYAが売上高でトップに立ちます。店舗数も742店舗(2014年4月現在)あり、売り上げ第2位の紀伊國屋書店の74店舗を大きく引き離しています。

もちろん、店舗規模が異なるので書店数だけで判断することはできませんが、売上高ではTSUTAYAが大きな伸長を見せています。

では、個別の店舗での売り上げはどうなっているのでしょうか?
これに関しては書店ごとの売り上げが公表されていないので、単純に比較することができません。
1つの目安として、ビジネス書を出しているダイヤモンド社の書店別売り上げランキングを確認してみましょう。

ダイヤモンド社の調べによる13年1~8月の1店舗単位での売上高ランキングは、1位が丸善・丸の内本店。その後は紀伊国國屋書店・梅田本店、紀伊國屋書店・新宿本店、丸善・日本橋店、ジュンク堂書店・池袋本店、三省堂書店・有楽町店と続く。(Business Journal「ツタヤ、なぜ国内書店最大手に?書店業界で広がるIT活用と、電子書籍との共存策」より)

出版社によって取り扱うジャンルが異なるので一概には言えませんが、やはり日本有数の書店が名を連ねます。
出版社はこうしたお店には積極的を営業をかけて、本を置いてもらう必要があります。
書店はこういった他の書店の売り上げ動向や売り場を参考にすることで、自店の売り上げ伸長にもつなげることができるでしょう。

まとめ

最後にもういちど出版業界の基礎知識をおさらいしておきましょう。

  • ・2013年の出版販売金額は1兆6823億円
  • ・全国の書店数は約1万4000店
  • ・全国の出版社数は約3500社
  • ・出版業界の返品率は40%ほど
  • ・今後は取次の返品率抑止の動きが高まる可能性も
  • ・「委託販売制度」は返品ができる仕組み
  • ・「再販制度」によって出版社は書店に定価を強制できる
  • ・いちばん本の売り上げがいいのはTSUTAYAチェーン

仕組みや用語など複雑そうに見える出版業界の基礎知識ですが、1つ1つを関連づけておぼえれば難しいことはありません。
年々縮小を続ける出版業界だからこそ、基礎知識を身につける価値があるのではないかと思います。
今後も、出版業界から目が離せません。

参考:みずほ銀行産業調査部「コンテンツ産業の展望」