出版業界って本当に変な業界だなって思う3つのこと

皆さんがはいたらいている業界には「これってこの業界特有だよな?」ってこと、ありますか?

出版業界もご多分にもれず、業界特有の慣習や仕組みが多くあります。

今回はわたしが出版業界ではたらいている中で感じた業界あるある的なお話をご紹介します。




1、飛び入り営業しても話を聞いてもらえる

「飛び入り営業をしても、名刺すら受け取ってもらえない」なんていう話をよく耳にします。
これはいわゆる営業の仕事全般にあてはまることだと思います。

本来はこれが当然の対応なわけで、アポイントも入れずに訪問をすれば相手に嫌がられるのが当たり前です。。

でも、出版業界は「アポ無し」でも注文をもらえることが多く、むしろそれが普通だったりします。
もちろん、書店によってはアポ無しを嫌うところもありますが、よほど忙しくない限り門前払いはありません。

これは出版業界特有で、それが成り立ってしまうのは「本は返品ができる」という理由にあります。

出版社の営業も、書店の仕入れ側も注文した本に対しての意識が薄いので、責任も希薄になりがちです。
責任の所在がないので出版社はたくさん本を受注しようするし、書店もそれをそのまま受け入れます。

ムダな在庫を抱える心配がないので、無条件に仕入れてしまうのです。

それだけたくさんの本が本屋に並ぶことになるので一概に悪いとは言えません。
ただ、営業の提案&書店の注文への意識の低さは返品率の増大を招くので、結局は出版業界の疲弊につながってしまいます。

2、取次が独断で受注して書店に本を納品する

言葉は悪いですが、取次が勝手な判断で本を仕入れて書店に納品するというのは日常的に行われています。

新刊であれば「指定配本」によって、書店の過去の売り上げ実績をもとに書店の意思に関係なく本が納品されます。

既刊であっても、取次が売れると思った本に関しては一括で仕入れをして、売れそうな書店に独断で納品します。
出版社が取次にはたらきかけて、書店に良好書を撒いてもらうのも同様です。

つまり、小売りである書店側が感知しないところで自動的に注文が出されることになるのです。

これも出版業界特有の仕組みで、つまりは卸業者である取次会社がそれだけ強大な力を握っていることに起因します。

取次の配本については、一長一短です。良い面もあれば、悪い面もある。
新刊配本であれば、それぞれの書店の売り上げ実績に見合った冊数が並ぶことになるので、機会ロスも減るし、ムダな返品も減ります。

しかし、取次は書店の現場を細かく把握しきれているわけではないので、書店の担当者の感覚とのズレが生じて、思ったほどの売り上げを立てられないこともよくあります。

3、価格競争がない

これはもうご存知のとおり、本は値引きができません
これを再販売価格維持制度といいます。

独占禁止法という法律には、メーカー(ここでは出版社)が小売り(書店)に対して販売価格を強制させる(値引きさせない)ことは禁じられています。

でも、その法律には著作物再販適用除外制度が設けられています。
つまり本については出版社が書店に販売価格を強制させることができるので、書店は値引きをせずに販売することになります。

メリットとしては、すべての本が全国どこでも同じ価格で手に入るので、格差が生まれにくい。

また、価格競争が起こると大きい出版社は値下げをすることができますが、中小の出版社は値下げできる体力がありません。
結果的に、大きい出版社の本ばかりが書店に並ぶことになるので、出版の多様性が維持できなくなります。
そういう面からも、価格競争がないのは読者にはプラスにはたらきます。

デメリットとしては、値下げができないと書店の裁量がないので、価格を下げて販売数を増やすといったやり方ができません。
書店ができるのは陳列やPOPで目立たせたりするのが精一杯です。

価格競争についても良い面・悪い面があるのでひとくくりにはできないのが現状です。

くわしくはこれでわかる!「再販売価格維持制度」のメリットと仕組みをごらんください。

まとめ

本当であれば、取次の意向も反映させずに書店がすべて仕入れに責任を持って、返品もできない仕組みであれば、もっと面白い書店が増える気がしています。

でも、それができないのは利益がないとビジネスが成り立たないという当然の理由にあります。

今はどこの書店に行っても同じような本ばかりが並んでいます。いわゆる売れ筋です。
それだけ取次や出版社の意向が書店に大きく入り込んでいるわけです。

もっと書店が自由にお店づくりができれば楽しくなるのになと思います。

「この書店とあの書店、置いてある本がちがう!」

「どの書店に行っても、同じ本に出会うことがない!」

そんな世の中になればいいのにな、と密かに思っている次第なのであります。