なぜ集英社は雑誌・書籍の売り上げ減でも増収増益を達成できたのか?

集英社が8月25日に平成27年6月1日〜同28年5月31日期の決算を確定しました。

売上高は前年比0.7%増の1229億5,700万円。雑誌や書籍の売り上げは減少しているものの、全体では前年を上回る結果となっています。

書籍や雑誌の売り上げが落ちているのに、なぜ集英社は増収増益を達成できたのでしょうか?




集英社の強み「雑誌」のマイナスは「その他」がカバー

それぞれの売上高について、具体的な数字を見ていきましょう。

  • 「雑誌」 683億1,500万円(4.5%減)
  • 「書籍」 129億1,400万円(14.9%減)
  • 「広告」 98億3,800万円(6.3%減)
  • 「その他」 318億8,900万円(27.8%増

まず個人的に感じたことは、集英社はつくづく雑誌が強いなぁということです。
出版業界全体の売り上げは、雑誌が書籍を下回るというショッキングな状況に置かれています。

前年比割れしてはいるものの、数字を見るたびに集英社の雑誌売り上げ規模の大きさには驚かされます。
「雑誌」部門にはコミックや一般雑誌が含まれているわけですが、集英社が刊行しているタイトルを考えれば納得の結果とも言えるでしょう。

さて、結論を言いますと、集英社が増収増益を達成できたのは、雑誌と書籍のマイナス分を「その他」の部門でカバーできたことが要因です。

さきほどの売上高をご覧いただくとわかるように、「その他」だけが唯一、前年比アップを達成しています。

ここではさらに掘り下げて、「雑誌」分野の内訳をくわしく見てみましょう。

  • 「一般雑誌」 315億8,700万円(6.3%減)
  • 「コミックス」 367億2,800万円(2.8%減)

新文化(2016年9月1日号)にも書かれていますが、ここで注目すべきは「一般雑誌」と「その他」がほぼおなじ水準になっているということです。

【「その他」 318億8,900万円】と【「一般雑誌」 315億8,700万円】では、むしろわずかに「その他」が上回っています。

で、集英社の「その他」ってなによ?

ところで、気になるのが「その他」ってなにを指しているの?ということです。

具体的な数字とともに、「その他」の内訳を確認してみましょう。

  • 「Web」 121億8,200万円(約48%増)
  • 「版権」 121億3,300万円(約13%増)
  • 「物販等」 75億7,500万円(約25%増)

もっともわかりやすいのは、集英社の「Web」部門の大きな伸びです。
Webといっても、さまざまですが特に売上高に貢献しているのは「電子コミック」でしょう。

集英社は自社で「集英社マンガネット」を展開しており、そこには「少年ジャンプ+」などの電子コミックが読めるようになっています。また、いま急成長を遂げているマンガアプリの存在も欠かせません。

集英社の東田英樹専務は今回の決算について以下のように語っています。

コンテンツ・デジタル・ブランド・タイツの4事業部を早い段階から準備してきたことで、『その他』分野が拡大したと思う(「新文化」9/1号より))

こうしたネット分野の伸びが集英社の増収増益を支えている、というわけです。

特定の部門が落ちてきても、他の部門でカバーするというのは企業が生き延びるためには欠かせない戦略なわけですが、集英社はそれをじつによく物語ってくれています。