出版営業の私が書店員に「おまえは本屋をナメているのか?」と言われた話

かなりシビれる、ある1日のお話です。

私は出版社の営業担当として、本屋さんをまわっていました。
そんな中、とある書店の担当者の人に説教を食らってしまったのです。

どうして私は説教を食らうハメになってしまったのか?
相手の言い分を1つずつ紹介するとともに、出版業界の古い体質を考えなおしてみたいと思います。




アポなしで、突然やってくる出版社の営業担当に「喝!」

まず、私がいけなかったのは書店にアポなしで飛び入り営業をしてしまったことです。

他の業界の人からすると、

「はあ?アポなし?そんなの怒られて当たり前だろ?」

と思われるかもしれません。

でも、実は出版社の営業にはよくあることなのです。
アポなしの営業は出版業界では慣習となっています。

今日訪問した書店の担当者さんは、その業界の慣習が気に入らないようでした。

「アポなしで営業に来るとはどういうつもりなのか?」
「書店をナメているから、そういう行動が取れるのだろう」

出会い頭に言われた私は面食らいました。
その人の言い分は以下のとおりです。

  • ・アポなしで来るということは自分の提案に対して責任がないということ
  • ・責任がないのはなぜか?それは、出版社が返品に甘えているから
  • ・出版社は自分の営業成績を上げるために本を受注しているだけ
  • 実売は無視。出版社は受注のことばかり考えている
  • ・書店のことを心から思っていれば、実売のことまで考えるはずだ

と、こんな感じです。

わたしはまだまだ出版社の営業経験は浅いですが、ここまでハッキリと出版社批判をする人に初めて出会いました。

出版業界全体が返品に甘えているのはまちがいないこと

基本的に出版営業はエリアごとに自分の担当する書店を持っていて、お店を訪問しています。

日にもよりますが、1日5店舗〜10店舗をまわるイメージ。

本来はアポを取るのが礼儀なのですが、すべての書店に対してアポを入れるのは正直難しいです。
なぜなら、すべての書店にアポを入れると予定がガチガチになってしまい、効率よく書店をまわることができないからです。

ただ、今回のアポなし訪問に関しては出版社批判をするための糸口にすぎないと思うので別にいいのです。

本当の論点は以下の2点にあります。

出版社の営業に責任がないのはなぜか?それは、本は返品がきくから

実売は無視。出版社は受注のことばかり考えている

本は返品ができます。
だから、出版社から仕入れた本が売れなくても、書店は返品をしてしまえば、仕入れ代金の損失はありません。

返品のメリットはあるけど、その返品に出版社の営業が甘えているというのが1番の問題です。

たとえばここに、クルマを買う人とクルマの営業担当の2人がいるとしましょう。
クルマは買ったあと、「気に入らないからやっぱり返品します」なんてことはできません。

ですから、クルマを買う人は買う前からそのクルマの特徴やスペックをきちんと調べて買います。
営業担当もクルマを買う人に満足してもらうために、色々な情報を伝えて、買ってから後悔のないように全力を尽くすはずです。

クルマの営業担当を出版社の営業担当に置き換えると、どうなるか?

出版社は納品した本が売れなくても、書店に返品してもらえばいいので責任を持ちません。
とりあえず受注してみて、売れなかったら返品してくれというスタンスなのです。

実売ではなく、受注した冊数で営業成績が決まる出版社

さらに、もう1つ説教された理由に「営業実績を評価する方法」があります。

これはもう単純ですが、出版社が営業部員の評価を「書店での実売ではなく、受注した冊数で決める」ということです。

この評価方法はすべての出版社にあてはまるわけではありません。
中には実売で評価する出版社も当然あります。

しかし、「受注してきた冊数」で評価を決める出版社も多いです。

受注した冊数で評価が決まるわけですから、営業担当はとにかく書店に本を売り込みます。
実売を無視して、とにかく書店に本を納品しようとするのです。

これでは書店側が不満を抱くのも当然です。
出版社の都合だけで本を納品していれば、書店には売れない本があふれてしまいます。

これからの出版営業のあるべき姿とは

この他にも、この書店員さんには色々と厳しい言葉をもらいました。

中には書店側の一方的な意見もありましたが、出版社の営業の姿を見つめなおすキッカケをもらえた気がしています。

目の前の受注だけを追っていると、そのときはいいけど、書店との関係を築くことはできません。
出版社は受注ではなく、実売を意識して営業を行うこと。

実売がきちんと伴っていれば、売れた分だけまた受注がもらえるという循環が生まれるはず。

出版社が自分たちのことだけを考えて営業を続ければ、書店の売り上げも落ちるだけ。

出版業界全体を立て直す1つのキッカケとして、営業のあるべき姿を考えなおそうと思った1日でした。