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基礎からわかる太洋社の倒産〜自主廃業と自己破産、意味の違いとは?〜

公開日:2016/03/24 
太洋社の自主廃業と自己破産とは

太洋社が自主廃業の発表をしてから日にちが経ちましたが、結果的に「自己破産」という最悪の幕切れとなりました。

自主廃業と自己破産、この2つの言葉には一体どのような意味のちがいがあるのでしょうか?

太洋社が考えていたシナリオと合わせて解説していきたいと思います。

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自主廃業は「お金がある今のうちに…」という考え方

当初、太洋社は自主廃業をすることを通知していました。
そもそも、廃業とは何を指すのでしょうか?

企業が事業を停止し、以降も再開をしないこと。債務を整理し任意で事業を休止することを指す。一般的に廃業とは理由を問わず経営をやめることで、後継者不足などの場合が多い。資金不足や業績不振などによる破綻=廃業ではない点に注意したい(東京商工リサーチ

ここでポイントになるのは、「資金不足ではない」ということです。あくまでも自主的に事業を辞めますということになります。
とはいえ、今回の太洋社のケースは資金不足が原因なので紙一重といったところでしょう。

なぜ太洋社は自主廃業をしようとしたのでしょうか?
その理由は、そのまま事業を継続するといずれは債務超過(資産よりも借金が多くなってしまう状態)に陥ることが目に見えていたからです。

ビジネスで儲けが出ないと、取引先に支払うお金がなくなってしまいます。
そうなるのであれば、資産がある今のうちに自主廃業をして、取引先の債務を清算してしまったほうが迷惑がかからないのです。

太洋社は2月8日行なった説明会で「『資産』92億円、『負債』84億円」と報告。そして、出版社の買掛金を清算しても7億円以上は残ると説明していました。要するに、お金の計算をすべて完了すれば手元に資産が残るよ、ということだったのです。

この状態で自主廃業ができれば資産が手元に残るので、取引先が連鎖的に倒産することを防ぐことができます。

しかし、ご存知のように太洋社は自主廃業ではなく自己破産の道をたどりました。
なぜ太洋社は自己破産することになったのでしょうか?

自己破産は「すみません、借金返済できません」という状態

さきほど説明したとおり、自主廃業は資産が余っている状態で行われることが多いので、取引先への借金(買掛金)はきちんと支払うことができます。
太洋社はそのつもりで説明を行なっていたわけですが、結果的に自己破産をすることになりました。

なぜ自己破産することになったのか。その最大の理由は芳林堂書店の売掛金が焦げ付いたことにあります。

「売掛金」と「焦げ付き」について

「売掛金」やら「焦げ付き」という言葉に慣れない人も多いでしょうから、もう少し噛み砕いて説明します。

まず、売掛金とは「まだ支払い代金を受け取っていない状態」をいいます(太洋社が芳林堂書店から商品代金をもらってない状態)。

焦げ付きとは、簡単にいうと「もう借金返済できないです」ということをいいます。貸す側から見れば回収できなくなった債権です。

芳林堂書店と太洋社に話を戻しましょう。

太洋社は自主廃業をしたいので、芳林堂書店に対して「本の代金(売掛金)を払ってくれる?」とお願いをします。太洋社は芳林堂書店からお金を払ってもらって、計画通りに自主廃業をするつもりだったわけです。

(一応説明しておくと、売掛金というのは当然の商習慣なので問題はありません。)

「急に言われても無理!」芳林堂書店は売掛金を支払えなかった

しかし、芳林堂書店はスグにそんな大金を支払う余力はありませんでした。
芳林堂書店に対する太洋社の売掛金は12億1000万円でしたがそのうち約8億円が焦げ付くことが確定。

つまり、太洋社は受け取れたはずの8億円を失ってしまったことになるのです。

自主廃業を目指していた太洋社としては、資産を回収できることができなくなってしまいました。
よって、自主廃業をする力はなくなり、結果的に自己破産に追い込まれたのです。

自主廃業と自己破産のちがい

あらためて、自主廃業と自己破産のちがいについてまとめておきましょう。
ここでは太洋社のケースをもとに理解しておいてください。

自主廃業とは、資産的には問題ないけど、将来的にはお金がなくなるかもしれないから今のうちに会社をたたみます、ということをいいます。

自己破産とは、資産よりも負債が多くなってしまいました。ごめんなさい、お金返せません。という状態をいいます。

繰り返しになりますが、太洋社は自主廃業を目指していました。しかし、結果的に売掛金が回収できずに自己破産をする道をたどります。

太洋社は無能だったのか?

太洋社が自己破産したことについては、いろいろな見方があります。

「出版業界が縮小していたから、仕方ないよね」
「日販とトーハンが取引書店を強引に奪ったからだよ」

このように外部要因を指摘する声も少なくありません。

一方で、太洋社の内部を指摘する声もあります。つまり、取引書店を奪われるのは社内体制の弱さにあったからだということ。また、國弘社長を非難する声も一部ではあるようです。

当然の処置ではあるものの、自主廃業を通知して取引書店の帳合変更を図ったことは出版業界の秩序を保つための善処だったと個人的には思っています。「倒産」というニュースがいきなり流れることも多い業界において、自主廃業を模索したことについては評価されるべきです。

一方で、売掛金回収額の見込みを誤ったこと、さらに言えば経営状態が悪化するまで放っておいたことは十分に考える必要があります。

太洋社を自己破産させずに再生する方法はなかったのか。
今後も訪れることが想定される取次会社の経営不振に対して取れる対策をいまからシミュレーションしておく必要があります。

 


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