丸善ジュンク堂書店が「手塚治虫全集」をオンデマンド印刷で販売開始!書店業界に与える影響とは?

昨日の記事(1冊から本が印刷できる!プリントオンデマンド(POD)の仕組みと問題点)で「オンデマンド印刷は在庫も不要で、絶版もない」ということを説明いたしました。

オンデマンド印刷とは、1冊から本の印刷が可能な仕組みのこと。出版・書店業界で少しずつ広まってきています。

そんなオンデマンド印刷の強みを活かしたのが、今回紹介する手塚治虫全集の刊行です。

なんと、丸善ジュンク堂書店が店頭で印刷〜販売までを行なうという、従来の本屋にはないやり方となっています。




従来の書店からの”脱却”を予感させるオンデマンド印刷

株式会社丸善ジュンク堂書店は、手塚治虫誕生90周年を記念して株式会社手塚プロダクションと提携し、オンデマンド出版による「手塚治虫全集」(手塚プロダクション発行、丸善ジュンク堂書店発売)全343巻を秋の読書週間中の2017年11月3日から順次刊行いたします。(株式会社丸善ジュンク堂書店プレスリリースより)

手塚治虫は自身の漫画作品の多くが雑誌(B5サイズ)で読まれることを想定して描いているため、今回の全集もB5サイズでの刊行となっています(B6サイズの受注販売も行います)。

ここで注目すべきポイント2つあります。

  • ・全343巻という巻数の多さ
  • ・丸善ジュンク堂書店が印刷〜販売をする
  • (既存の出版社や取次を必要としていない)

全343巻という巻数の多さ

マンガは巻数分だけ在庫を持たなければいけませんから、本屋の販売スペースは限られてしまいます。

ですから、どうしても「いま売れるもの」しか置くことができません。

そんなマンガの事情を一気に打破するのが、オンデマンド印刷です。

ご覧のとおり、全343巻というちょっと常識では考えられない巻数の作品が刊行されます。

もし343巻もの本を書店が在庫として持とうとすると、スペースだけでなく作業(仕入れや返品)も大変です。

これだけの巻数を販売できるのは、注文があってから印刷をするオンデマンド印刷だからです。

在庫を持つ必要がないので、品切れの心配もありません。書店とお客さんの双方にとってメリットがあります。

丸善ジュンク堂書店が印刷〜販売をする

本は出版社がつくり、取次が運び、本屋が販売をするものです。

しかし、今回の丸善ジュンク堂書店の手塚治虫全集は手塚プロダクションが発行元、丸善ジュンク堂書店が発売元となる事業です。

つまり、従来の出版モデルとは異なるやり方です。本を運ぶ取次も存在しません。

今回の丸善ジュンク堂書店による手塚治虫全集の販売は、書店が出版社なしでも出版事業を興せるという、新しいビジネスモデルの提示でもあります。

もちろん今回は手塚プロダクションが出版社として関わっていますが、書籍データさえあれば書店が単独で出版物を刊行することもできる、ということに他なりません。

書店は自分から動き出して企画を始動させることができる

今回の手塚治虫全集の販売はどのような経緯でスタートしたのでしょうか?プレスリリースには示唆的な記述があります。

手塚治虫書店を展開するつながりの中で「手塚治虫生誕90周年」記念企画会議において、丸善ジュンク堂書店より「オンデマンドであれば、在庫の事を考えずに全集を刊行する事が出来る。90周年を記念して手塚治虫書店オリジナル編集の全集を刊行したい」と提案したところ、手塚プロダクションからも快諾を得て、手塚プロダクションを発行元、丸善ジュンク堂書店を発売元として今回の全集の刊行が決まりました。

丸善ジュンク堂書店は、2014年4月より丸善丸の内本店、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、ジュンク堂書店名古屋栄店、丸善岐阜店の各店内に「手塚治虫書店」を展開してきました。

そのつながりもあって今回の全集販売につながったわけですが、注目すべきは、話を持ちかけたのが丸善ジュンク堂書店からということです。

これまでの慣習的な考え方からいえば、書店は出版社がつくった本を売る存在でしかありませんでした。

しかし、オンデマンド印刷という武器があれば、書店がみずから動いて企画をし、出版物の刊行に大きく関わることができます。

書店業界が先細っている現状において、オンデマンド印刷を活用した書店事業は新しい収益源となる可能性があるということです。

無論、オンデマンド印刷は1冊あたりのコストが高いですし、印刷機も高かったりするので、まだまだ不完全。欠点もたくさんあります。

さらに細かい話をすれば、丸善ジュンク堂書店は大日本印刷と資本関係にあるので、印刷についての”後ろ盾がある”という事情もあります。

ですが、書店が出版制作にも大きく関わることで、オンデマンド印刷を使ったあたらしい潮流が生まれる可能性は大いにありそうです。

丸善とジュンク堂で手塚治虫全集の全点を店頭で展示

今回発売する手塚治虫全集は丸善丸の内本店、MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店、ジュンク堂書店名古屋栄店、丸善岐阜店内の店頭でスグに購入することができます。

店頭にはB5およびB6サイズの全点が展示されているので、気になる人は目を通してみることをおすすめします。

「対象店舗が近くにないよ!」という人は、hontoのサイト上にて購入が可能です。

  • ◇手塚治虫全集 第1回刊行作品(2017年11月3日発売)
  • 『ブラックジャック 1』(B5サイズ 1,500円 B6サイズ 900円)
  • 『ブッダ 1』(B5サイズ 1,400円 B6サイズ 900円)
  • 『七色いんこ 1』(B5サイズ 1,500円 B6サイズ 900円)
  • 『ロストワールド 1』(B5サイズ 1,400円 B6サイズ 900円)
  • 『ザ・クレーター 1』(B5サイズ 1,500円 B6サイズ 900円)