部数にダマされるな!「著者累計◯万部」「シリーズ累計◯万部」という言葉の罠

本を売るための、最も効果的な方法。それは「売れてます」というキャッチコピーを打つことです。

これについてはほぼ日刊イトイ新聞の中で、コピーライターの糸井重里さんが語った言葉が印象的です。

「だって、『いま売れてます』がいちばん効くコピーなんだから、この先の広告にはなにもないよ」

いま売れてます、というのはとてもシンプルでありながら、消費者の心を掴むコピーです。
本にかぎらず、人は「売れてるならきっと良い商品に違いない」と安心感を持つことができます。

本の面白さ、斬新な切り口をキャッチコピーで打つよりも、「売れてる」というのが最も重要な意味を持つわけですね。
それだけ、”売れてる”ことに対する消費者の意識というのは大きいということです。

売れてる感を出すには”数字”を打ち出す必要がある

さて、標題の件に移りましょう。
本が売れてることをアピールするために、出版社や書店はあらゆる方法を使って本をPRします。

その最たる例が、POPや本の帯に使われるキャッチコピーです。そこには「年間ベストセラー1位!」「10万部突破!」という言葉が並びます。

ふむふむ、確かにベストセラーとか累計部数が多いということは、売れてるにちがいありません。だから、私たちも安心して本を買うことができますよね。もちろんハズレもありますけど。

数字だけにダマサれてはいけない

でも、よく考えてみると「売れてる」という言葉を使うには、ある程度の裏付けが必要です。「◯位」「◯万部」という具体的な数字があると、売れてる感を煽るにはもってこいです。

とはいえ、出たばかりの新刊に「売れてる感」を出すのは無理があります。あるいは既刊本を掘り起こしたいけど、実績がないときにも「売れてる感」を出すことはできません。

では、どうするか?そこで役に立つのが「著者累計◯万部」「シリーズ累計◯万部」という売り文句です。
これを”累計部数の罠”と呼ぶことにしましょう。

「著者累計◯万部」とは?

「著者累計◯万部」というのは、ある1人の著者がいままでに売った本の累計部数をいいます。

著者の今までの累計部数を打ち出すのはインパクトがあります。なにしろ、累計部数というのはどうしたって大きな数字になりますからね。
たとえ1作品あたりの部数が5000部でも、それが20作あれば10万部です。

いままでに何冊も本を出している著者は、それなりに売れているから新作を出せるわけで、その実績は面白い本である裏付けになるかもしれません。しかし、それに全幅の信頼を置くのは危険きわまりない。

ある著者が計3冊の著書を出しているとしましょう。
デビュー1作目が空前のブームとなって、50万部売れたとします。しかし、2作目は初版5000部止まり。つまらない本だったので売れませんでした。
それだけ浮き沈みがある著者であっても、続く3作目の新刊では「著者累計50万部!」と銘打つことができてしまうのです。

ちょっと回り道をしてしまいましたが、つまり何を言いたいのかと言うと、

著者の累計部数が多くても、その本が面白いとは限らねーぞ!

ということです。

私は天邪鬼なので、

「ああ、”著者累計◯万部!”って打ち出すということは、それしか宣伝材料がない本なのね」

という脳内変換を行います。ですから、一部の消費者に対しては累計部数を打ち出すと逆効果になることがあるのです。
累計部数の罠において、著者累計というのは1番タチが悪い表現方法と言えます。

「シリーズ累計◯万部」とは?

ほぼ同上ですが、「シリーズ累計◯万部」というのは巻数モノの累計部数を指しています。

マンガなどはわかりやすいですが、ビジネス書や実用書でもシリーズ物は少なくありません。

私はビジネス書が結構好きで読んでいるんですが、前作が売れたから便乗してシリーズにして出すケースは少なくないですよね。

いま現在売れている『幸せになる勇気』(ダイヤモンド社)なんかは成功例ですが、日の目をみない失敗例は腐るほどあります。

またまた回り道してしまいましたが、結局は

シリーズ累計で売れてても、その本が面白いとは限らねーぞ!

ということを声高に言いたいです。著者累計よりはまだマシですけれど。
みなさんも本を選ぶときは累計部数の罠には十分ご注意ください。

同じような罠に”重版出来”のカラクリも存在します。宣伝コピーには注意して本を選びたいですね。