年末年始といえば、出版業界の物流はストップするのが当たり前でした。出版社は早々に仕事納めとなり、取次も配送を止めてしまいます。
唯一、書店だけは年末年始でも営業するお店が多いという実態がありました。
そんななか、12月31日に雑誌や本を全国一斉発売しよう!という「特別発売日」なるチャレンジが行われようとしています。
12月13日時点で雑誌130点、書籍40点というラインナップで総部数は計840万部という数になる予定です。
特別発売日の目的は?
そもそも、なぜこんなことをするのか?その最大の目的は、意外な時期の需要喚起と言われています。
年末年始は、多くの人に等しく与えられる休息期間です。もちろんそうでない人も多いですが、1年のうちで最も休みを取れる時期であるのは事実。
そんな休暇を使って本屋に足を運ぶ人は一定数いるわけで、そんな「普段はゆっくり本屋に行くことができない人」に商機を見出そうというのが大きな狙いです。
冒頭でも述べたように、年末年始といえば極端な表現をすれば書店の棚が空っぽになる時期です。せっかく新しいお客さんが本屋に来てくれたのに、店内の品揃えが悪く、棚もスカスカだったら二度と本屋になんか来てくれないですよね。
この特別発売日の目的をひとことで言ってしまえば「あたらしいお客さんを捕まえること」。これに尽きます。
書店員の本音は?「本当はゆっくりできる時期なのに…余計なことしやがって!」
年末年始に本屋に行くお客さん、さらには出版業界全体の売り上げにとって特別発売日は嬉しい取り組みです。
ゆっくり本が読める休暇に新刊が読めるのは良いですもの。業界にとっても、あたらしい売り上げが見込める機会でもあります。
ただし、そのウラで内心暴れたいのは書店員かもしれません。というのも、年末年始は非常に人員が少なく大変な時期だからです。
学生アルバイトは実家に帰り、主婦パートさんは家のイベントで大忙し。残されるのはフリーターや正社員となります。
ただでさえ人が少ないのに、そこに新刊が入荷するとなれば大変な事態になりかねません。
特別発売日の効果もあって、例年にはない客数が大挙して押し寄せる可能性は否定できません。すると、品出しはおろかレジ打ちすらまともにできなくなるでしょう。
わたしが書店員として働いていたときは、年末年始はすごくヒマだったので新刊入荷は大歓迎したい気持ちです。しかし、内心は「余計なことをしやがって」を思う書店員も少なくないのではないでしょうか。
と、書店員目線で考えると悲喜交々あるのですが、全体から俯瞰すれば歓迎すべき施策であることに変わりありません。
出版業界の起爆剤として打ち出された特別発売日を盛り上げるためにも、積極的に本屋に足を運びたいですね。