こんにちは、あゆむです。
「恋が着せ、愛が脱がせる。」
これは、眞木準というコピーライターが書いた、1989年の伊勢丹のキャッチコピーです。
僕がこのキャッチコピーを初めて目にしたのは25歳くらいの時ですが、それ以来、僕は広告コピーおよびコピーライターというものに強い興味を抱くようになりました。
文学的というか、ウィットに富んでいるというか。僕はそういう広告コピーが大好きです。
広告コピーはどのように生まれるのか。僕たちが知らないマーケティングの世界の”リアル”を教えてくれる『ここらで広告コピーの本当の話をします。』という本を紹介します。
キャッチコピーとは、一瞬で人を引きつけるもの
広告の”華”といえばキャッチコピーですよね。冒頭で紹介したコピーも、キャッチコピーの名作と言われているものです。
他にもアメリカにはこんな名キャッチコピーがあります。
「私がピアノの前に座ると、みんな笑った。でも、弾きはじめるとみんな黙った。」
これは、アメリカの音楽通信講座のキャッチコピーです。コピーを見ただけで、その光景がきれいに思い浮かびますよね。
このように、キャッチコピーというのは一瞬で人の心を引きつける役割を果たします。というより、一瞬で引きつけるようなコピーでないと効果がありません。
ポスターやテレビCMが人の目に触れる時間ってすごく短いですよね。
駅や街に貼ってあるポスターを長時間じっくり見ることはほとんどありません。通りすがりの一瞬で目にするかどうか、という感じです。
テレビCMもわずか15秒という短い時間のなかで、お客さん(見込み客)のハートを掴むようなキャッチコピーが必要になります。
商品の広告コピーはOK。カテゴリーの広告コピーはNG
この本の冒頭で、著者の小霜さんは以下のように述べています。
”商品”の広告コピーは成立するが、
”カテゴリー”の広告コピーは成立しない
たとえば「カメラ」の広告コピーを書くとします。カメラというと、思い出づくりには欠かせないグッズですから、パッと考えただけで以下のようなコピーを思い浮かびます。
【その一瞬が、永遠に変わる。】
いま僕がテキトーに考えただけのコピーですが、そこそこ良く出来てる気がします(自画自賛)。
ドヤ顔をしたいところですが、これは完全に素人がやってしまいがちなミスです。
最初に述べたように、カメラという”カテゴリー”の広告コピーは実務上では成立しません。
なぜなら、【その一瞬が、永遠に変わる。】という広告コピーはすべてのカメラに当てはまってしまうから。
仮に、あなたがキャノンから「カメラの新製品が出たので、キャッチコピー書いてください」と依頼されたとしますよね。
そこで【その一瞬が、永遠に変わる。】なんてコピーをドヤ顔で出しても一蹴されるのがオチ。
なぜなら、競合他社製品との違いが、広告コピーで表現できていないから。
広告コピーは、商品の具体的な情報や競合商品との違いを理解しないと書けない、ということです。
ちなみに、僕は過去に広告会社で働いたことがありまして、上司に頼まれて広告コピーを書いたことがあります。
ろくにコピーライターの経験もない僕が書いていたのは、カテゴリーの広告コピーそのものでした。
意外と知られてない「タグライン」の重要性
キャッチコピーは広告の華であると述べましたが、じつは広告コピーの本質は「タグライン」にあると言われています。
タグラインというのは、その商品を定義づけるものです。
具体例をあげると、ダイソンの「吸引力の変わらない、ただ一つの掃除機。」がわかりやすいですね。
このタグラインがあるおかげで、ダイソンがどんな商品で、他社製品とどこが違うのかが明確にわかります。
ライザップの「結果にコミットする。」というのも、優秀なタグラインです。
タグラインがいかに重要なのかについて、本書では以下のように述べられています。
「タグライン」は、よく商品ロゴの上に置かれていたりするコピーです。これは広告の一番目立つ場所に置かれる「キャッチフレーズ」より遥かに重要なものです。
キャッチフレーズはアマチュアでもぽろっと書けたりしますが、タグラインは戦略が詰め込まれており、プロの知見がなければ書けません。実際、僕はタグライン1本書くことで100万円ぐらいはざらにいただきますけども、キャッチフレーズ1本にそんな金額はなかなか請求できません。
「タグライン1本で100万円」というのが、その重要性を物語っています。
たしかに、タグラインはその商品が市場においてどんな立ち位置で、競合他社となにが違うのかがハッキリわかってないと書けないんですよね。
つまり、マーケティング的な視点が必要なので、プロにしか書けないというわけです。
コピーライターの本質と、広告コピーの裏側
この本はコピーライター(および志望者)は必ず読んでおくべき1冊です。
ここに書かれていることを学び、実践すれば社内での立場が一変するんじゃないでしょうか。それくらい有益なことがたくさん書かれています。
そして、マーケティングに関わる人、純粋に興味がある人にもおすすめです。
広告コピーそのものだけでなく、マーケティングとは何なのか?ということが、非常にくわしく書かれています。
なお、この本はAmazonの読み放題サービス「Kindle Unlimited」でも読むことができます(対象作品は随時更新されます)。