こんにちは、あゆむです。
いきなりですが、いまあなたが着ているその服、誰がデザインしたか答えられるでしょうか。おそらく、わからない人のほうが圧倒的に多いと思います。
僕たちの大多数は洋服を作ったデザイナーを意識することなく生活しています。言葉は悪いですが、デザイナーはもはや「いないも同然の存在」になってしまっているわけです。
しかし、過去・現在のファッション業界を見渡すと、世界を変えるほどの影響力を持つデザイナーや実業家がたしかに存在します。
そんなファッション業界のデザイナーや実業家について深く掘り下げているのが『「イノベーター」で読む アパレル全史』という1冊です。
これを読むと、ファッションを見る目がガラッと変わると思います。最高の本です。
ファッション界には物凄いデザイナーが溢れている
この本をひとことで言ってしまえば「ファッション業界に絶大な影響を与えたデザイナーや実業家を紹介する本」です。
長いファッション業界の歴史においては「この人は絶対に欠かせない存在」というデザイナーがいます。たとえば、ココ・シャネルやクリスチャン・ディオールなどは超有名ですが、彼らがファッションの基底を作ったとも言えるわけです。
こういったデザイナーを1人ずつ丁寧に紹介していくのが本書の特徴になっています。
事典的な読み方もできるので便利なのですが、前後の歴史やデザイナーの生い立ちなども絡めて説明してくれるので非常に読み応えがあります。
ちなみに、僕はファッションはそこそこ好きだけど、たいして詳しくないという部類です。【イヴ・サンローラン】とか【ジョルジオ・アルマーニ】といったブランド名だけは知っているというレベル。
そんな僕でも十分に楽しめたので、本の内容は非常にわかりやすいです。
そして、アパレル業界で働く人や志す人でも大いに勉強になると思います。いや、勉強になるどころか、デザイナーの生い立ちやストーリーを読むとめちゃくちゃモチベーションが高まるはずです。
僕はこの本を読んでファッションがもっと好きになったし、ブランドごとに歴史やストーリーがあることを知ったので、洋服やバッグを選ぶのがますます楽しくなりました。
という感じで、「ちょっとだけファッションに興味はあるんだよね」というレベルの人にとっても非常に有益な1冊になるはずです。
ここからは、読んでいて「これは…!」と思ったデザイナーの1人、クリスチャン・ディオールを取り上げて本書を紹介していきます。
クリスチャン・ディオールの後継者は○○○
クリスチャン・ディオール(Dior)といえばファッション、アクセサリー、化粧品に至るまで幅広いラインナップの商品を展開していて、多くの人にとって憧れのブランドの1つとなっていますよね。
第二次世界大戦後の1947年にディオールが生み出した有名なラインの1つに【コロールライン】というものがあるのですが、これは「ニュールック」と言われて非常に大きなインパクトを与えました。
ちなみに【ライン】というのは、ざっくり言うとシルエットのことです。たとえば、【Aライン】というのはアルファベットのAのようなシルエットになるファッションをいいます。

Aラインのお手本とも言えるウェディングドレス
画像:https://dress.weddingpark.net
そんなクリスチャン・ディオールの功績の1つとされているのが「パリのモードサイクル」を作り上げたことです。新しいラインを続々と発表して、流行のサイクルを生み出したということを意味します。
新しいラインが登場することで、古いものは「流行遅れ」となり、消費者は次々に新しいラインを買わざるを得なくなる。つまり、ディオールは、このようにしてパリモードのサイクルを作り上げたのだ。
「ライン」とか「モード」とか聞くと、それってハイブランドだけの話でしょ?と思いがちですが、まったくそんなことはありません。
たとえばユニクロやZARAなどのファストファッションでも、毎年流行のスタイルというものが(あまり感じにくいけど)存在していて、僕たち消費者は無意識のうちに流行に影響されているわけです。
まあユニクロとかだと「最新の流行ファッションだから買わなきゃ!」という感情は湧きにくいですが、少なくともユニクロも流行を生み出して消費者に新しいアイテムを買わせるという戦略を取っているわけです。
いまとなっては当たり前の話すぎてピンと来ないかもしれませんが、じつは「今は当たり前に思われてることを最初に始めた人」って相当すごいんですよね。それがまさにクリスチャン・ディオールの功績というわけです。
と、ここまでは少し専門的な話も絡んできましたが、僕が最も衝撃を受けたのはクリスチャン・ディオールの後継者を知ったときです。
ディオールは心臓発作によって53歳という若さで亡くなるのですが、そのあとを継いだのはイヴ・サンローランでした。そうです、自身のブランド名にもなっているあのイヴ・サンローランがディオールの後継者だったのです。
すでに知っている人からすると「何をそんな当たり前の話を…」と思われるかもしれませんが、僕ぐらいの知識の人間からすると「ディオールの弟子がイヴ・サンローランだったなんて凄い…!こんなところで接点があったとは…!」と興奮を隠しきれないのです。
さらに驚くことに、イブ・サンローランがディオールを継いだのは21歳の時。この若さでブランドを率いるのは並大抵のことではなかったはずです。
デザイナーは知れば知るほど面白い
この記事ではクリスチャン・ディオールを例に挙げましたが、本書ではまだまだ他にもたくさんのデザイナーが紹介されています。
- マリー・クワント
- ヴィヴィアン・ウエストウッド
- ラルフ・ローレン
- ポール・スミス
- カルバン・クライン
- ジル・サンダー
- 森英恵(モリハナエ)
- 三宅一生(イッセイミヤケ)
- 山本耀司(ヨウジヤマモト)
- 川久保玲(コムデギャルソン)
- 柳井正(ユニクロ)
- ドルチェ&ガッバーナ
- クリスチャン・ルブタン
- アナ・ウィンター(アメリカ版VOGUE編集長)
- etc…
どうでしょう。ファッションに疎い人でも、一度は耳にしたことがある名前ばかりだと思います。
僕が偉そうに言うのもあれですが、この本はじつに良い線を突いているなと感じました。「そうそう、このデザイナーのこと知りたかったのよ」というラインナップが揃っているんですよね。
さらに、専門用語もほとんど使われてないので、この手の本にありがちな「なに言ってるかよくわからない…」ということが一切ありません。
ここまでわかりやすく簡潔にまとまっているアパレル本は他にないはずなので、僕はこの本を一生手元に置いておくと思います。
強いて苦言を呈するなら本のタイトルがわかりにくいのと、装丁がちょっと地味な気がします(余計なお世話ですが)。
事典として参照するのにも最適なので、ファッションに少しでも興味がある人なら、間違いなく”買い”の1冊です。