アート作品を投資目的で買うのは最高かもしれない『教養としてのアート 投資としてのアート』

アート作品を投資対象として楽しむ方法『教養としてのアート 投資としてのアート』 おすすめの本

表紙を見る限り、とてもビジネス書には見えない。今日はそんな1冊です。

さて、アートというと、美術館に行って作品を楽しむのが一般的ですよね。

しかし、この本が提案しているのは、投資としてのアート。つまり、将来的な値上がりを期待してアート作品を購入するということです。

アートというと、ついつい「純粋に楽しむもの」というイメージが先行しがちなんですが、実際にアート作品を買っているコレクターは投資対象として考えている人が多いんですよね。

実際に本を読んでみて、知らないことがめちゃくちゃ多くて面白かったです。

「どんなアート作品が値上がりしやすいのか?」「買ってはいけないアート作品は?」など、本書をかいつまんで詳しくご紹介します。

アート作品を投資目的で買うための指南本

この本は『教養としてのアート 投資としてのアート』というタイトルが示すとおり、前半部では教養知識が、後半部では投資についての知識が紹介されています。

教養について書かれている内容は、投資について理解するうえで役立つものばかりです。つまり、「アートへの投資について学ぶまえに、最低限知っておきたいアートの教養」について学ぶことができます。

「アートを投資対象とするなんて、なんだか汚らわしい」と思う人はこの本に向きません。

きれいごとなしでいえば、多くの人はお金を稼ぐことが好きなはずです。

つまり、「アートを楽しみつつ、その作品で売却益を狙う」という、非常に効率的かつ現実的な考え方がアートへの投資ということです。

高く売れるアート作品は「発明品」&「インパクトが大きい」

この本では、あくまでも最終的な投資目的を果たすためにアート作品を買うことを提案しています。

ですから、自分の直感で「このアート良い!欲しい!」といって購入することをおすすめしていません。

なぜなら、直感で買ったアート作品は”値上がり益を狙う”という意味では失敗に終わることが多いからです。

では、評価が上がるアート作品にはどんな特徴があるのかというと、大きく分けて2つあります。

  • ① 「発明品」であること
  • ② インパクトがあること

①「発明品」であること

これまでにも見られたような「よくあるアート作品」は評価が上がることはほとんどありません。

そうではなく、今までになかったアート作品、つまり「発明品」であることが、評価を上げるためには重要です。

どこかで見たことあるものではなく、これまで存在しなかった技法、制作方法、コンセプト、表現方法であるということです。それまでどこにもない発明品は、新たな美術史の文脈を形づくっていくことになる可能性があるからです。

② インパクトがあること

2つめはインパクトがあることです。これだけだと抽象的すぎて何のことかわからないと思いますが、要するに「社会的に大きなメッセージがあること」と考えるとわかりやすいでしょう。

インパクトは単純に見た目だけではなく、その作品が社会に放つメッセージが多くの人々の共感や感動を呼ぶものであり、または刺激的な事件として取り上げられることもあります。

ここでインパクトという言葉を使うのはわかりにくので適切とは思えなかったですが、ただのキレイな絵画作品よりも社会的に意義のあるメッセージ性のある絵画のほうが当然価値は上がります。

たしかに、歴史の残る名画を語るとき、その背景にある社会的な事件や出来事と一緒に語られることってありますよね。ピカソの『ゲルニカ』などは、まさにその典型です。

買ってはいけないアートを断言していて面白い

本書が面白いのは、買ってはいけないアートをずばり断言しているところです。つまり、投資対象として買ってはいけないアートということを意味します。

ぜひ実際に本を手にとって欲しいので、くわしくは割愛しますが、以下のような買い方をNGとしています。

  • ・ずっと同じ作品ばかりつくっていて、代わり映えしない作家から買ってはいけない
  • ・同じアーティストの作品ばかり買わない
  • ・同じギャラリーで作品を買わない
  • ・インテリアに合わせて作品を選ばない

このほかにも「ギャラリー」がアート作品に与える影響についても書かれていてすごく勉強になりました。

ギャラリーって単純に絵を飾っている場所、程度の認識しかありませんでした。でも、アートを投資対象として見たときには、絵画選びだけではなく「どのギャラリーで買うか?」もとても重要なんですよね。

教養としてのアートについて書かれている本は類書でたくさんありますが、その多くは美術史の紹介です。

この本が他とちがうのは、投資対象としてアートを捉え、なおかつギャラリーが果たす役割など、身近な知識を紹介していることです。

なので、「アートは興味あるけど、美術史とかは苦手なんだよなあ」という人には、本書を絶大な自信を持っておすすめできます。

同じことが繰り返し書かれていて、一部厳しすぎる表現がある

ベースとしてはこの本をめちゃくちゃおすすめしたいのですが、ちょっと気になる部分があったのでそれについても触れておきます。

  • ・同じ表現で、同じことが何度も主張されている
  • ・一部のアートを否定するような表現がある

まず、1冊を読み通すなかで「いや、これさっきも言ってたよ」とツッコミたくなる箇所が何度もありました。

しかも、言い回しとか表現もほとんど同じなので、「もう…何回言うのよ」と思う部分は多いかもしれません。僕は気になりました。

まあ、何度も刷り込まれたほうが知識として定着するから、それはそれでアリですけどね。

あと、現代アートと対比させるために、工芸品や写実作品を否定するような書き方をしているのがちょっと残念でした。

著者に一部の作品を悪く言う意図はないでしょうし、実際にフォローもしています。ただ、ちょっとどうかなと。

顧客が望んでいる限り、売るのは当たり前だと言わんばかりに、すでに時代遅れとなった作品を売り続けるギャラリーがあるのは事実ですが、彼らを否定するつもりはありません。

いやいや、「時代遅れ」とか言っちゃているし、言葉の端々に否定モードが溢れちゃってるので、「否定するつもりはありません」という締めくくりに、無理を感じます。

工芸品や写実作品をつくっているアーティストがこの本を読んだら「ムッと」するはずです。たとえば、本書でラッセンがたびたび引き合いに出されるのですが、それを読んで良い気はしないでしょう。

上記の直後には、対比として現代アートについて以下のように書かれています。

一方で、現代的なギャラリーは、時代の変化を先取りするために、若いアーティストのもつ新しい作品を紹介するだけにとどまらず、これまで現代アートの本流にいなかった優れたアーティストを紹介することで時代の変革に寄与しています。

このように著者は現代アートが、いかに社会にとって意義があるかを伝えたいということです。

僕も、この本を読んで著者が言いたい意味はよくわかります。「この世には、美術品をつくって金銭的にも社会的にも評価されるべき人がこの世にはたくさんいるんだよ」ということを伝えたいのでしょう。

伝えたいことをわかりやすく伝えるために厳しい表現になってしまった感はあるので、それを踏まえたうえで読んだほうが誤解も生まれないかもしれないですね。

美術が好きな人、投資が好きな人は絶対に読んで欲しい

後半は本書のマイナスポイントみたいになっちゃいましたが、トータルでの感想としては「かなり面白いし、有意義だから色んな人に読んで欲しい」ということです。

さきほども書いたとおり、投資対象としてアートについて書かれた本がそもそも貴重だし、ギャラリーが果たす役割については相当勉強になります。

この本は書店で面陳にしてあって「お、ジャクソン・ポロックだ」と思って手に取ったんですよね。

正直「まあ、ハズレたとしても家の本棚が華やかになるからいいか」ぐらいの気持ちで買ったんですが、本当に買って正解の1冊でした。おすすめです。

【評価】

4.5

 

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アユム

「読みたい本が見つかる」をコンセプトに、洋書・和書問わず読んだ本の感想を発信中。出版社や書店員としての勤務経験をもとに、読書についての話題を豊富に扱っています。いまは英語の勉強を頑張る日々です。株式会社ミシェルベース代表取締役。本のWebマガジン「コトビー」代表。

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