こんにちは、アユム [ @kot_book ] です。
ベストセラーが生まれると、本の印税が話題になります。
「あの人は印税でどれくらいもらったんだろう?」
と、やらしい気持ちは隠しきれないのが人間というもの。
本の印税は、仕組みさえ理解してしまえば、じつはカンタンに計算できます。
あの大物作家はいくらの印税をもらっているのか?なんてこともスグにわかっちゃいます。
わたしたちが知らない本の印税の世界を見ていきましょう。
本の印税ってどうやって計算するの?
印税という言葉だけを聞いてもイマイチわからない人は多いかと思います。
わかりやすく言うと、印税とは「売れた本の◯%分」だけお金をもらえる仕組みのことです。
本の印税は、基本的には【本の定価の10%】が支払われることになります。
計算式にすると、
【本の定価 ☓ 部数 ☓ 印税率】
となります。
たとえば1000円の本が1冊売れたら、作家の人は100円を印税収入として受け取ることができるのです。
ですから、本の印税は売り上げの10%分を受け取れると考えてかまいません。
大物作家だと10%以上の印税がもらえる?
ただし著者、つまり本を書く人によっては印税がもっと多くもらえることがあります。
たとえば超売れっ子作家が書いた本は10%+α(12%とか)になることがあります。
1000円の本が1冊売れれば120円もらえるということです。
なぜ売れっ子作家は印税が多くもらえるのでしょうか?
その理由は「作家の名前だけで本が売れるから」です。
出版社としては「本を出せば確実に売れる」と考えるので、印税率を高くしてもコワくありません。多少印税率を高くしたとしても、しっかりと売り上げが伸びれば十分に儲かるという計算がそこにはあるわけです。
また、売れっ子になると出版社との交渉が優位になるので、印税率で強気に出られるというのも1つの理由としてあげられます。
「あなたのところは10%しか印税出ないの?じゃあ他の出版社で出すからイイです」とか言えるわけです。
新人・売れない作家は印税率が5〜8%になることも
反対に、本が売れる見込みのない人は印税率が低くなります。
さきほど基本的に10%と言いましたが、新人作家や売れない作家は印税率が5〜8%になることも少なくありません。
売れっ子とはちがって、本が売れない人にはシビアな世界なのです。
10%の印税なら1000円の本1冊で100円もらえます。
しかし、5%の印税だと1000円の本1冊で50円しかもらえません。
印税率のちがいは、収入に大きく影響をおよぼします。
なお、5〜8%と幅があるのは出版社によってちがいがあったり、交渉次第で変化することがあるためです。
また、最近は本が売れなくなってきていることもあり、以前よりも印税率を低く設定する出版社も少なくありません。
出版社としては取り分が増えるので問題ありませんが、作家としては生活に関わってきます。これはまた別問題ですが、あまりに低い印税率だと出版文化を維持するのがむずかしくなることも懸念されます。
翻訳本の印税って取り分どうなるの?
本を書いたのが1人だけであればわかりやすいですが、複数人で書かれた本は印税を分け合います。
たとえば翻訳書などが良い例です。
翻訳本の場合には、原作者・翻訳者という2人の著者が存在することになります。
翻訳された本にも印税率の明確なルールはありませんが、原作者60%・翻訳者40%となることが多いと言われています。
また、共著と呼ばれる複数人が著者の本も同じように印税を分け合うことになります。
ゴーストライターの印税ってどうなの?
あまり知られていませんが、世の中にはゴーストライターによって書かれた本が溢れています。
小説やエッセイなどの文芸書では少ないですが、いわゆるビジネス書などは「ほぼゴースト」と考えてもらってかまいません。
とくに、有名な経営者、スポーツ選手、アイドルが書いた本はかなりの割合をゴーストライターが書いています。
最近はアイドル、タレント、スポーツ選手が自己啓発本テイストの本を出すことが多くなりました。
その多くはインタビューを書き起こして、それをゴーストが書きなおして仕上げています。
「え、この人ってそんな文才あったの?」と思われる人の本は、ゴーストが記事を書いている可能性大です。
ゴーストライターの印税は経験がものをいう
ゴーストライターの印税率にも明確なルールはありません。
著者(有名人とか)が5%、ゴーストが5%にすることもあります。
反対に著者が7%、ゴーストが3%ということもあります。
そのあたりは著者とゴーストライターとの力関係であったり、出版社との契約によって変わってきます。
また、経験豊富なライターであれば市場価値も出てきますから、印税率が高くなることも多々あります。ただし、その場合はインタビュアーやジャーナリストとして名前が売れていることがほとんどなので、厳密にはゴーストではありません。
ある本がゴーストライターで書かれたかどうかを判別する方法はありません。基本的にはあくまで「ゴースト」だからです。
なかには本の最後に名前だけ記載される場合がありますが、ほとんどはゴーストであり続けます。
それ以外で気づくポイントがあるとすれば「この人、処女作なのにやたら読みやすいな…。あ、ってことは(略)」。
本の印税の支払い方法は2パターンある!
ここまで、印税とは「本の売り上げの10%」というスタンスでお話をしてきました。
それを踏まえたうえで、次は印税の支払い方法について見ていきましょう。
むずかしくはないのですが、ややこしいと感じる人も多いはずです。
できるだけわかりやすく解説するので、ゆっくり理解していただければと思います。
本の印税の支払い方法は以下の2つに分かれます。
- ①実売方式
- ②発行部数方式
この2つが本の印税の支払い方法です。それぞれ良いところ・悪いところがあります。
1つずつチェックしていきましょう。
印税の支払い方法①:実売方式ってなに?
実売方式というのは、「実際に売れた冊数」だけ印税が支払われることをいいます。
これまで説明してきたような「本の売り上げの10%が印税になる」というのは、実売方式のことを指しています。
実売方式にはどんな良いところがあるのでしょうか?
それはズバリ「売れた分だけお金(印税)がもらえる夢のような仕組み」です。
出版された本の多くはこの実売方式で印税が支払われています。
出版社から卸会社(出版取次)に流れた本は、最終的に本屋さんまで運ばれます。
その本屋さんで実際に売れた冊数の印税率が、著者の収入となります。
取次を通って本屋に卸しただけでは当然ダメで、本屋で売れた本が印税支払いの対象です。
出版社にとっては売れた分だけ支払えばいいのでメリットは大きい契約方法です。
一方、著者にとっては良し悪しが分かれます。売れればガッポリ儲かりますが、本が売れなければ印税収入になりません。
印税の支払い方法②:発行部数方式ってなに?
発行部数方式というのは、発行した本の冊数(発行部数)だけ印税を支払う方法です。
売れた冊数ではなく、発行した冊数というのがポイントです。
言いかえると、本の売り上げが0冊でも著者は印税が受け取れます。
これは極端な話ではありますが、発行部数方式は著者に有利な契約条件です。
たとえば、新刊の初刷部数が5000部で、定価1,000円の本があったとします。
印税の計算は【本の定価 ☓ 部数 ☓ 印税率】ですので、印税率が10%の契約だとすると、
【1000円 ☓ 5000部 ☓ 10%】=50万円
つまり、発行部数方式だと本が印刷されただけで著者は50万円の印税をもらうことができます。
印税ではない「原稿買い取り」という方法もある
上記で紹介した以外に、本を書いた人の原稿を出版社が「買い取る」というかたちでお金を支払うことがあります。
たとえば1つの作品の原稿を30万円とか50万円で買い取るわけです。
出版社としては、本が売れるたびに印税を支払わなくていいのでお金がかからなくて済みます。
増刷をしても追加で支払われる印税がないので、本がバカ売れしても著者は印税を受け取れません。
どの方法で印税が支払われているかは、出版社によって異なりますし、著者を含めた関係者との条件によっても異なります。
言いかえれば交渉次第で有利にも不利にもなるのが印税の世界ともいえるでしょう。
気になるベストセラーの印税収入!ピース又吉『火花』の印税はいくら?
ここまでは印税の仕組みについて説明してきました。
さあ、ここからは覚えた印税の計算を実際に使ってみましょう。
おそらく多くの人が気になるのはベストセラーの印税収入ではないでしょうか。
ここではお笑い芸人としては史上初めて芥川賞を受賞した又吉直樹『火花』の印税額を計算してみましょう。
発行部数278万部だと印税収入は一体…?
シネマトゥデイによれば『火花』の累計発行部数が278万部となりました(2017年1月現在)。
本当であれば「実売方式」で計算したいのですが、実売数を知ることは困難です。
そのため、ここでは発行部数方式による印税額を計算してみましょう。
印税の計算方法は【本の定価 ☓ 部数 ☓ 印税率】ですので、
【定価1,296円 ☓ 278万部 ☓ 10%】=3億6028万8000円
およそ3億6000万円もの印税収入が又吉さんのもとに入ることになります。
ただし、ピース又吉さんはよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人です。
吉本は印税の半分を持っていくとも言われており、もしそれが本当なら約1億8000万円が又吉さんの懐に入ります。
吉本の取り分が果たして妥当なのかは疑問ですが、いずれにせよ又吉さんには高額の印税収入が入ってくるということです。
これだけ売れれば印税で生活することもできそうですが、反対にこれだけ売れても一生遊んで暮らせるわけではありません。
印税の世界は今後どうなるか?
出版業界は本が売れないことで活気がなくなっていると言われます。
また、紙の本だけではなく最近はキンドルでのセルフパブリッシングも盛んとなっています。
これまでは10%印税というのが一般的でしたが、今後は流れが変わってくる可能性も否定できません。
印税率が下がることも考えられますし、出版社を通さない場合はそもそも印税率という考え方がなくなるかもしれません。
わかりやすい例を挙げて計算してきましたが、実際のところ印税収入だけで生活をするのは困難です。
多くの人が憧れる世界ではありますが、激しい競争を勝ち抜いた人だけが味わえる世界ですね。