こんにちは、アユムです。
カラスといえば嫌われ鳥の代名詞です。僕はハトのほうが苦手なんですが、国民からの嫌われ率でいえばカラスが断トツではないでしょうか。
カラスが嫌われる最大の要因は「ゴミ漁り」です。
人間にとっては不快で迷惑でしかないわけですが、この本を読むと「ああ、カラスのゴミ漁りも仕方ないのかも?」と思えてきます。
カラスへの憎しみや嫌悪感が完全に消えるわけではありません。ただ、カラスは日常生活において、もはや不可避な存在になりつつあります。
ですから、カラスの生態について知っておくだけで多少はストレスの軽減につながるかもしれません。
というわけで、『カラスの教科書』についてくわしくご紹介します。
カラスの研究が全然進んでない理由
この本は、タイトルのとおりカラスの生態や不思議な行動などについて書かれた1冊です。
読んだところによると、カラスの研究ってあまり行われていなくて、わかってないことが多いんですよね。どうやらその理由はカラスの生態にあるようです。
「カラスは行動圏広すぎて見えねえ、捕獲できねえ、標識できねえ、年齢わからねえ、性別わからねえ、巣が高すぎて覗けねえの三重苦どころか五重苦、六重苦。(中略)」カラスは行動生態学的な観点で観察しようとすると、どうにもやっかいな鳥である(それでいて猛禽ほど人気も希少性もないから、余計に誰も調べない)。
正直、僕の感覚としてもカラスは鳥類のなかでも下等な存在として認識しています。もし自分が学者になったとしても、カラスは調べようとは思わないだろうし、学術的な価値があるとも思えない。
唯一、カラスの研究が役に立つとしたら「ゴミ問題」のときに助言や対策を練れるくらいかなと。
そんなふうに思っていたので、カラスの研究が進まない理由には納得しました。
つまり、カラスの研究をしようと思う人は少ないから、本も少ない。そういう意味で、本書はかなり貴重な存在だと思います。
しかも、文体が読みやすく、ユーモアたっぷりに書かれているので、それも含めて本書の希少性は高いです。
カラスの天敵、そして意外な行動を知って思うこと
カラスというと警戒心が強くて、なおかつ頭が良くて、ずる賢い。そんなイメージですよね。
実際、カラスは捕獲されにくいですし、くるみの殻を車に轢かせて割るという芸当も持ち合わせています。
でも、ちゃんと天敵もいるんですよね。その最たる例が「フクロウ類」です。
警戒能力の落ちる夜間にフクロウに襲われると、捕食されることがある。(中略)そのせいだと思うが、カラスはフクロウ類が大嫌いである。
僕は勝手にカラスは無敵だと思っていたので、天敵がいたことに驚いたし、少しホッとしました。やっぱり、心の奥底でカラスに対する嫌悪感は強く根付いているんだろうなぁ。
というのも、僕は中学生のころにカラスに襲われた経験があるからです。学校内の大きな木にカラスの巣があって、その近くを通っただけでカラスの爪で頭を突かれました。本当に怖かった…
幸い、ケガとかはなかったんだけど、それ以来カラスは恐怖の対象であると同時に、憎き存在へと変貌を遂げました。
そんな過去もあるからこそ本書を手にとったわけですが、この本を読んだことでカラスの弱い部分とか可愛い(?)部分も見れたりしたので、少しだけ許してやれそうです。
文章は面白い。が、著者の推測や妄想が含まれているので注意
著者である松原始さんは、京大卒で京大院の博士課程を修了したいわば秀才です。
そんなすごい学歴を持っているんですが、文体は読みやすく、ユーモアたっぷりでスラスラ読み進めることができます。論文向けにむずかしい文章も当然書けるだろうから、文体を使い分けてるんだろうなあ。羨ましい…
ところで、さきほども説明したとおり、カラスの研究はあまり進んでおらず、すなわちまだ解明されてないことも多いようなんですね。
だから仕方ない部分もあるんですが、「〜だろう」「〜だと思う」「〜かもしれない」という推測や妄想を想起させる語尾の多さが、僕はちょっと気になりました。
動物の生態について書かれた本は、そのものズバリを「〜である」と断言してほしいからです。
とはいえ、著者が日々、相当な時間をかけて野生のカラスを観察しているのはすごく伝わってくるし、推測や妄想が書かれているのを見ると「ああ、この人は本当にカラスが好きなんだな」というのがひしひしと伝わってきます。
どんな人に『カラスの教科書』はおすすめか
- ・カラスが嫌いな人(だけど「生態は気になる」という人)
- ・カラスのゴミ漁り問題に悩んでいる人
- ・カラスに生活を乱されている人
- ・カラスが好きな人
僕がこの本を読んだ理由は「嫌いだけど、生態は気になるから」です。
本書はカラスの生態を解説しているのはもちろん、「ゴミ問題にどう対処するか」「カラス避けは効果があるのか?」など、鳥害の役に立つ内容もふんだんに書かれています。
なので、純粋にカラスが気になる人はもちろん、実生活でカラスの被害に悩まされている人にもおすすめの1冊です。
カラスの数は全然減ってない(減らない)みたいなので、カラスを上手く折り合いをつける意味でも一読をおすすめします。相手のことをちょっと知っているだけでも、敵対心や憎しみは薄まりますからね。