三省堂大辞林によると、”癒し”とは”いやすこと。治癒”と明記されています。
本来の使い方とは異なっていますが、今ではこの言葉を当たり前のように使っています。
ストレス社会を背景に、”癒し”はもはや”衣・食・住・癒”でも不思議はないほど身近な存在です。
癒し系や癒しネコ、ついには癒しフェアというものまで開催されるようになり、いかにわたしたち人間が”癒し”を求めているかわかります。
わたし自身も日々、癒しを求めてさまよっています。
そんな中でわたしが出会った究極の癒し漫画『ねことじいちゃん』をご紹介します。
ねことじいちゃん、そしてばあちゃん
タイトルは『ねことじいちゃん』全三巻(以下続刊)です。
えんぴつ描きの温かみを感じる、可愛らしい絵が特徴です。
主人公は、妻に先立たれ、島で暮らす大吉じいちゃん。
そして大吉じいちゃんと一緒に暮らすのが、猫のタマです。
この家族を中心に、ご近所さんや東京で暮らす息子一家との会話といったゆったりとした日常が描かれています。
雨の日に無理して二人で買い物に行くお話など、大吉じいちゃんとタマがお互い大好きだということが要所要所で伝わってきます。
また亡くなったばあちゃんの登場するお話も多く、二人がどれだけばあちゃんに対して愛情を持っているかが感じられます。
「猫が居る生活」 「島での生活」 「戦争の記憶」といった普段の生活ではなかなか経験できないことが描かれていて、それだけでも読む価値ありです。
絵を見ているだけで癒される。大吉じいちゃんは、まんまる
まず、絵ですが、大吉じいちゃんを一言で表せば”まんまる”に尽きます。
顔がまんまる。目(メガネ)もまんまる。
結果として、太っているわけでもないのに、大吉じいちゃんの雰囲気がまんまるに感じられます。
そして登場人物の目について言えば、大吉じいちゃんのようにメガネの人の目はほぼ見られません。
また、大きさや太さのちがいはありますが、メガネをかけていない人の目は、点か線です。
個人的に漫画で表情を表すとき、目は細かく描くものだと思っていたので、その考えは驚かされました。
登場する食べものも、どれをとっても美味しそうに描かれていますし、この絵だからこそ表れる島の人々のゆったりとした空気感にも癒やされます。
一見すると、手を抜いているのかな?と思ってしまうこの絵が最大の癒しポイントです。
タマがほしい。漫画なのにそう思う
次なる癒しポイントは、タマのねこらしさです。
新聞を読んでいるところを邪魔されたり、掃除を邪魔されたり。
他にも、かまってアピールからの攻撃や猫の集会に参加する様子など「猫を飼っていたら…」と想像してしまいます。
タマの描写が愛らしく、その動きだけでも癒やされます。
また、基本的には大吉じいちゃん目線で話が展開するのですが、たまにあるタマ目線がいい!
大吉じいちゃんについて「やれやれ、仕方のないやつだな」と上から目線で語っているようなシーンもあり、タマにとっても大吉じいちゃんは家族で、ばあちゃんとの想い出を共有できる存在だということが伝わってきます。
タマを見ていると、温かい気持ちになり癒やされていくのがわかります。
大吉じいちゃんの話も実際聞いたら、疲れるのかもしれない
最後の癒しポイントは、大吉じいちゃんの想い出に触れられることです。
わたし自身も年々感じることですが、年齢を重ねるにつれ昔話が増えます。
大吉じいちゃんはご高齢なため、やはり昔話が多いです。
しかし、大吉じいちゃんのそれはもっと読んでいたくなります。
実際に聞いたら疲れるのかもしれませんが(笑)
初めてテレビを見たときの想い出や昔食べたおやつの想い出、戦争の記憶。
そして何よりもばあちゃんとの想い出がなんとも癒やされます。
ばあちゃんと出会ったとき、プロポーズしたとき、ケンカしたときなど。
読むと癒され、自然と笑顔になっている自分がいます。
癒しマンガランキングがあれば、上位に入る作品
本書についてまだまだ伝えきれていない魅力があります!
これからも色々な漫画を読んで、色々な癒し漫画に出会うと思います。
しかし、どんなに癒やされる漫画と出会ってもこの漫画はいつでも癒し漫画ランキングの上位に存在しつづけるはずです。
慌ただしい日常からはなれたいと感じたら、きっと癒しを求めている証拠です。
そんなときは『ねことじいちゃん』を読んでみてはいかがでしょうか。