こんにちは、アユムです。
本をそこそこ読むようになって本屋に出かける機会が増えると、店内のあるエリアだけ異彩を放っていることに気がつくはずです。
そう、それは岩波文庫コーナー。
アカデミックな匂いに誘われて、つい手を出してしまう岩波文庫。
しかし、読書が好きだからといって調子に乗って岩波文庫に手を出してはいけません。もちろん、読書初心者が手を出すのはもってのほか。
その理由をくわしく解説します。
見た目にそそられる、岩波文庫のデザイン
岩波文庫のことを知らない人のために説明しておくと、岩波文庫は岩波書店という出版社が刊行している文庫シリーズでして、1927年に発刊された日本初の文庫シリーズでもあります。
岩波文庫を”たらしめている”、一番の特徴はブックカバーのデザインでしょう。
大きなタイトルとその下に小さなイラストが配され、背表紙と裏表紙はベージュで統一されています(一部、例外あり)。
どうですか、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」という文字の並びが持つ攻撃力。たまりませんね。
なんともアカデミックで、知識欲をそそられるデザインです。
僕は岩波文庫をスラスラ難なく読める日を夢見て、毎日読書に励んでいるといっても過言ではありません。
一時期、スタバでMacを開いてドヤ顔するのが流行りましたが、僕はそれよりもスタバで岩波文庫を読んでドヤ顔したいと思うくらいです。
要するに、岩波文庫はむずかしい
結論からお伝えすると、岩波文庫に不用意に手を出してはいけない理由は「むずかしいから」。
本をそれなりに読んでいる人や、業界人ならわかると思うんですが、岩波文庫はむずかしい。二回も言うくらい、むずかしいんです。
本当は僕も読書ツウぶって「ああ、岩波ね。面白いよね」くらいにカッコつけたいんですが、嘘はすぐバレるのでここに白状いたします。
僕は5冊程度と冊数こそ少ないんですが、それなりに思い入れを持って岩波文庫を読んだ過去があります。
僕が思うに、岩波文庫がむずかしい理由は大きく分けて3つあります。
- ① 文体が古い
- ② 古典が多く、テーマがむずかしい
- ③ 印刷された文字がいかにも古い印象を与える
① 文体が古い
昔の文章を読むと、いまの言葉づかいとあまりに違いがあって、読みにくいと感じることがあると思います。
岩波文庫はまさにソレで、言い回しや句読点を打つ場所などが現代の文とは違っており、それが岩波文庫の読みにくさを助長しています。
もちろんすべての作品がそういうわけではありませんが、現在の日本語に慣れきっている人間からすると読みにくさを感じずにはいられません。
② 古典が多く、テーマがむずかしい
岩波文庫には古典作品が多く、かなり昔に書かれた本がいまでも人気を博しています。
それこそが岩波文庫、ということでもあるんですが、言わずもがな古典作品はむずかしい。
③ 印刷された文字がいかにも古い印象を与える
僕が岩波文庫に持つ印象として「印刷された文字が古い」というものがあります。
いまでこそ本に印刷された文字は非常にクリアで読みやすいのが当たり前ですが、少し古い本を読むと印刷がかすれているというか、文字がボヤついて見えることってありますよね。
岩波文庫は初版年月が古いせいか、そういった一昔前の印刷技術で刷られた本が多い印象です(最近は印刷がきれいな本のほうが多そうですが)。
印刷技術の古さと本の難易度は関係ないわけですが、いざ読もうとして本を開いたときに印刷された文字が古いと、気を削がれるというか、少し身構えちゃうんですよね。
『方法序説』にだまされた僕の過去
僕にはいまでも忘れられない岩波文庫の失敗があります。
以前、雑誌かなにかの企画で「知識人が教える、初心者に読んでほしい本」みたいな特集が組まれていたんですね。
そこで、あの有名な林修先生が、おすすめ本として『方法序説』という本を紹介していたんです。
表紙だけ見ても伝わりませんが、じつはこの本、ページ数がかなり少なくて、相当薄いんです(全137ページ)。
さらに、あのわかりやすい説明で定評のある林先生がおすすめしているわけですから、俄然期待がかかりますよね。
僕は「今度こそ岩波文庫を読破できるかもしれない!」と思って、心を躍らせて『方法序説』を勢いよく購入しました。
しかし。
結果はあえなく挫折。
- 「なぜ、こんなに薄い本なのに、全然ページが進まないのか」
- 「なぜ、こんなにゆっくり読んでるのに1つも理解できないのか」
僕は本をそっと閉じたあと、自分の愚かさを悔やみ、少しばかり林先生に悪態をついたのでした。
ただ、いま冷静に振り返ってみると、だまされた僕が悪いのは明白です。
岩波文庫はどうしたってむずかしいし、東大出身の林先生の「わかりやすい」と、無名私大出身の僕の「わかりやすい」が同じなわけないですから。
こうして生まれたのが、岩波文庫に対する難読本のイメージ、そしてその裏にある岩波文庫への羨望なのです。
読書好きを幻惑させる、危険な文庫シリーズは他にもある
むずかしさと、それに裏打ちされた学術的な雰囲気という意味で、ブランド力が一番高いのは岩波文庫です。
しかし、読書好きを誘惑し、購入させ、その難解さで読者を落胆させる文庫シリーズは他にもあります。
- ・講談社学術文庫
- ・新潮選書
- ・ちくま学芸文庫
- ・文春学藝ライブラリー
- ・中公クラシックス
新潮選書や中公クラシックスは厳密には文庫ではないんですが、このあたりのシリーズは、読書好きの心をかなりくすぐります。
ただ、下手に手を出すとケガをします。
特に気を付けたいのが、講談社学術文庫とちくま学芸文庫です。
この2つの文庫シリーズは装丁を統一していません。表紙の見た目が1冊ずつ違うため、作品によっては「あれ、初心者でも読めそうじゃん?」と思わせるやさしいデザインをしていることがあります。
しかし、その見た目とは裏腹に、内容的にはアカデミックなことがほとんどで、簡単に読める本であることは極めて少ないと思うべきでしょう。
僕も講談社学術文庫とちくま学芸文庫に手を出して、内容のむずかしさに「やっちまった」と失敗したことが何度もあります。
難解さには、ワクワク感がともなう
これらのむずかしい文庫シリーズが本屋で占める割合は予想以上に大きいです。
本屋に行ったときの本選びのワクワク感は、これらの難解な文庫があってこそ醸成されていると考えることもできます。
共感してもらえるかわかりませんが、難解さとワクワク感って表裏一体だと思うんですよね。
わからないことがたくさんあるから、なんかわからないけど好奇心がそそられる。
わからない本にたくさん囲まれるから、本屋って楽しい。
僕はそんな感覚なので、難解な本があってくれるからこそ、読書が楽しいんだと思います。
なので、いつか難解な文庫シリーズをスラスラ読めるように、日々読書に励んでいくしかないですね…。