今後、出版業界への転職はどのようにすれば上手くいくのかー。
ここ数年「雇われない働き方」、いわゆるフリーランス(ノマド)という生き方が話題です。
起業について書かれた本もたくさん出版され、そこには「がんばれば報われるよ!」といった熱いメッセージがたくさん書かれています。
しかし、そんな言葉は、独立や起業を果たし、努力が報われた側の意見にすぎません。
大多数の人は会社に寄生していくしかないのです。
会社に寄生していくしかないからこそ、やはり自分のやりたい仕事ができる会社ではたらくべきです。
今回は「出版業界に転職したい」と考えている人が知っておくべきことを4つに分けて紹介していきたいと思います。
転職に限らず、今後の出版業界に興味のある方はぜひお読みください。
転職は危険?出版業界はこの先もどんどん縮小していく
就職や転職を考えるとき、みなさんは何を基準にするでしょうか。
給料?
定時で帰れる会社?
やりがい?
見栄?
と、就職・転職先を考える理由はさまざまです。
もう1つの切り口として考えてほしいのが「出版業界の規模と今後の展望」です。
出版業界の将来は厳しい。そうハッキリ言わざるを得ないのが現状です。
あらためて言うまでもないかもしれませんが、もはや「本が好き!」という理由だけで選んでいい業界ではなくなっています。
【出版業界の危機】書籍・雑誌の売り上げ金額が過去最悪の落ち込みをご参照いただくとよくわかりますが、出版業界の売り上げは信じられないくらい下がっています。典型的な斜陽産業です。
まず、本屋の数は激減しています。
2000年に全国で22,296店あった書店が、2014年には13,943店にまで減っているのです。
これに伴って、書店員の数は当然減ることになります。
また近い将来、出版社の営業部員は不要になるでしょう。あまり考えたくない現実ですが、甘いことは言ってられません。
電子書籍の台頭と、書店の閉店が今のまま続けば確実に「営業」はいらなくなります。
縮小を続けているわけなので、何となく出版業界を選んでしまうといつか「路頭に迷う」という現実が待っているかもしれません。
それをきちんと踏まえた上で出版業界を就職・転職先として見て欲しいと思います。
私の場合はただ「本が好き」って理由だけで出版社の営業に転職してしまいました。あちゃー。
出版業界は覚えることが多い。でも他の業界よりは少ない
どんな業界であっても、プロとしてはたらく以上は知識が必要です。
出版業界も覚えなければいけないことが多いのは間違いありません。
ただ、わたしの実体験として言えることがあります。
それは「出版業界は他の業界と比べるといい加減だし、覚える知識の質は高くない」ということです。
以前、わたしは何年間かちがう業界ではたらいていたのですが、そこと比較すると求められる知識量はあまりに少ないです。
出版業界は仕事で覚えなければならない事はそこまで多くない。
本が好きな人であれば、そこまで勉強しなくてもふだんから本屋に通っていれば売れ筋を把握できるはずですし、出版社・書店・取次のいずれも基本的には本を売ることが目的なので難解な知識はほとんど必要ありません。
また、出版業界は物流がアバウトなので書店に本が届くまでの日数がけっこういい加減です。
物流は搬入日ベースやりとりされ、明確に到着日を定めていません。
先ほどと矛盾するかもしれませんが、そういった意味では「本が好き」であれば、どんな人にとっても楽しめる業界です。
出版社・書店・取次のどれを選ぶか?
明確に決まっていればいいのですが、漠然と出版業界に就職・転職したいと考えている人も中にはいるかもしれません。
出版業界の仕事の選択肢として基本的には出版社・書店・取次の3つがあります。
それでは就職・転職先としてのメリット・デメリットを1つずつみていきましょう。
まずは取次への転職について
国内にはたくさんの出版取次があって、小さいながらもきちんと利益をあげている会社もあるのですが、先ほど紹介したようにそもそもパイが小さくなってきているので取次の利益(多くが手数料)もおのずと小さくなっていきます。
現に、大阪屋も太洋社も自社ビルの売却をしているので、収益がきびしい状況にあるのは間違いありません。
つまり、先のことを考えると転職の選択肢としてはトーハンと日販に限られてくるでしょう。
ここ最近、「帳合変更」(書店が取次をのりかえること)が相次いでいます。その多くが「大阪屋⇒日販」「太洋社⇒トーハン」など中小から大手2社への帳合変更です。
つまり帳合変更の数だけ、大手が中小取次を食っている状態なのです。
出版社と書店の直販ルート(中抜き)が話題になっていて取次各社がピリピリしていますが、大手2社に関しては出版取次を複占している状態なので、規模は徐々に縮小していくにしても、将来性でいえば最も安定していることは間違いありません。
書店員への転職は本当の「本好き」じゃないとやってられない
「本当の本好き」と軽やかに韻を踏んでおりますが、これは完全なラッキーパターンです。
さて、ご存知のとおり書店数は以前に比べて激減しています。
売り上げは減っていき、コストカット。現場は人手が足りず、残業は増えるのに給料は減っていく…。
ハッキリ言えば、これが書店の現状です。
私が書店員としてはたらいていた当時は自分の仕事に誇りや楽しさを感じていました。
ただ、「良い仕事だけど、給料が低いよなあ…」という本音は隠しきれませんでした。
本来であれば業界の構造を変えて、もっと書店の取り分を増やすべきなのです。書店の収益をもっと増やさないと、書店が潰れるので結局は取次にとっても出版社にとってもマイナスしかありません。
でも、出版業界は変化をおそれる体質ですからきっとそれは今後も叶わないでしょう。
先の見通しが悪いのを覚悟の上で、書店員という選択肢を選ぶのであれば相応の覚悟が必要です。
今後はますます、本が好きでないとやっていられない仕事になっていくことでしょう。
出版営業への転職はナシ、編集はアリ?
最後に出版社への就職・転職ですが、これは職種によります。
出版社の営業部員は将来性だけでいえば、オススメできません。
やりがいや楽しさという点でいえば、出版社の営業は点数が高いと思います。
いろいろな書店を回れることはもちろん、書店の担当者と協力してフェアを組んだりするのは代えがたい充実感があります。
ただ先にも述べたとおり、本が売れなくなっています。
本が売れずに出版社の収益が悪化して、人員削減を行うとなった場合に真っ先にクビを切られるのは営業部員です。
本を買う場所が書店しかなかった時代は良かったのですが、いまはネットが全盛の時代です。
正直言って、営業なんかいなくても最低限の新刊はリアル書店に入ってきます。
ですから、営業がいなくてもある程度は機能してしまうのが出版社なのです。
一方の編集者は、わかりやすく言えば「手に職」をつけているので今後も一定数は必要とされる職種だと思います。
Amazonのダイレクト・パブリッシング(出版社を通さずに電子書籍をつくれる)などの登場で、「編集者不要論」があるのも確かです。
でも良い本は良い編集者がいてこそのものですし、編集という職業がなくなったら、世の中は箸にも棒にもかからない本であふれてしまいます。
ただしその性質上、編集未経験者の中途採用求人はほとんどないと言っていいと思います。
年齢が若い(目安は25歳以下)のであれば話は別ですが、編集者を目指すならなるべく早いうちから着手する必要があります。
出版社の面接にはとにかく企画書をつくって持参する
いきなり実際的な話になってきますが、就職や転職のときの面接では自分がいかに本が好きで、本を売るアイデアを持っているかをアピールすることが重要です。
本を売るための企画というのは、共通している部分があります。
たとえば書店でフェアを開くとき。これは1つのテーマで選書をして、その時々の読者の興味を喚起する意味合いがあります。
書店員の場合は自分がお店でやりたいと思う企画を企画書にまとめて持参することが大きなアピールになります。
選考段階で課題となっている場合もありますが、何も課題がない場合は勝手に自分で作って持参しましょう。
出版社の場合は本に関するあらゆるテーマの企画書をつくりましょう。
編集者はもちろんですが、営業でも新刊の企画書をつくって持っていきます。
営業は書店で本の注文をとってくることだけが仕事ではありません。書店現場の声を吸い上げて、それを本の企画に活かすという役割も担っています。
ですから、読者や書店員に喜んでもらえる意見を本づくりに活かすことができる営業は重宝されます。
それがきちんとデキるんだ、というアピールをするためにもフェアの企画書と新刊の企画書は持参しましょう。
わたしはフェアを5つ、新刊企画を5つほどまとめて、企画書として面接に持参しました。
熱意を伝えることができるのはもちろん、面接での話題にもなりますし、面接官の反応によってその会社がどんな方針で本をつくっているのかを垣間見ることができます。
出版業界についてはリクナビとリクルートエージェントの求人数が多めです。
まずは登録をしてみるところからはじめてみましょう。
出版業界への転職・まとめ
あらたな業界へ就職や転職はなかなか勇気がいるものです。
ましてや同じ小売り業界であっても、アパレル業界とコンビニ業界では全然ちがいます。
ただ、自分がやりたいと思う仕事を探すときには業界を横断するのが自然な流れになるはずです。
わりとネガティブなことをたくさん書いてしまいましたが、今回の記事が出版業界への就職・転職に興味がある人の後押しになればいいなと思っております。
未経験OKの出版社求人については転職を勝ち取る!未経験から出版社に転職する方法をご参照ください。