以前、小学生が投票する異色の賞レース「“こどもの本”総選挙」ポプラ社の狙いとは?で紹介した、小学生が一番好きな絵本を選ぶ“こどもの本”総選挙の結果が出ました。
小学生が選ぶ、最も人気がある本は何だったのでしょうか。
大人にも人気なあの本が第1位!
昨年11月から今年2月に小学生の”自分が一番好きな本”を募集していたこの総選挙には、合計12万8,055票の投票がありました。
その中で見事第1位を獲得したのは『ざんねんないきもの事典』(今泉忠明 監修/下間文恵, 徳永明子, かわむらふゆみ 絵/高橋書店)です。
シリーズ累計で160万部を突破し、メディアでも取り上げられることもある大人気の書籍ですから、納得の1位という印象ですね。
そして第2位に『あるかしら書店』 (ヨシタケシンスケ 著/ポプラ社)、第3位に『りんごかもしれない』 (ヨシタケシンスケ 作/ブロンズ新社)と続きます。
大人にも大人気の『ざんねんないきもの事典』は、第4位に同シリーズの『続ざんねんないきもの事典』もランクインしており、どこまで売上げが伸びるのか楽しみです。
ヨシタケシンスケ作品の強さが目立つ結果に
また、ランキングを見て思うことは、ヨシタケシンスケ強し!
10位まで見てみると、7位と10位にもヨシタケさんの絵本がランクインし、4作品が選ばれています。
今後もさまざまなヨシタケ作品が多くのこども達に読まれることは間違いないでしょう。
ランキングの傾向は意外?な結果に
ランキングの全体像については、すこし予想外でした。
低学年の子どもたちの投票が多くなり、もっと絵本が主体のランキングになるのかと個人的に思っていたからです。
しかし、児童書の数が想像よりもかなり多く、懐かしい本や面白そうな本がたくさんあります。
わたしが気になったのは『5分後に意外な結末』という児童書で、お話の最後にどんでん返しがある短編集です。
実際に手にとって読んでみると…おもしろい。
1つのお話は2ページから3ページくらいですが、ちゃんとストーリがあってつい騙されてしまいます。
この『5分後に意外な結末』もそうですが、児童書はシリーズ化されているものも多くあり、一度好きになった本を読み続ける習性は小さい頃から出来上がっていくんだなと感じました。
賞を主催するポプラ社の宣伝効果はあったのか?
総選挙を開催したポプラ社の本は、10位までに3作品ランクイン、さらにアニメ化もされた『おしりたんてい』シリーズは100位までに全12作品中8つもランクインする素晴らしい結果となりました。
ポプラ社の宣伝効果についても、いい結果になったのではないかなと推測できます。
また、2018年4月より”あるかしら文庫”というポプラ文庫10周年を記念したイベントが開催されており(期間限定。なくなり次第終了)、今回の“こどもの本”総選挙に『あるかしら書店』が2位になったことで、この文庫フェアにも追い風がふきそうです。
結果重視の印象
”こどもの本”総選挙の結果が出たあと、結果にそって本を紹介している書店が多く見られました。
もちろんそんな結果なんて関係なく通常営業というお店もありますし、選挙の投票よりも結果の方が宣伝されているのではないかと感じました。
人は何らかの受賞作品は手に取りやすいですし、何よりも宣伝しやすいため、当然のことだと思います。
でも、もっとたくさんの子どもたちがこの選挙を知って投票していれば、選挙の後にもっとたくさんのこども達が本を買ってくれたかもしれないと考えてしまうのはわたしだけでしょうか。
自分が参加したり、関わったイベントはただ結果を見るよりも思い入れがあり、つい何か”思い出の品”が欲しくなってしまうと思うからです。
今回の選挙でいえば、投票した子どもたちは必ず結果を見るでしょうし、ランクインした本を”思い出の品”として欲しがるのではないかと思います。
総務省統計局の「人口推計‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級) 男女別人口」によると2017年10月1日時点の6歳から12歳の人口は743万8,000人です。
それに対して今回の選挙の参加人数は12万8,055人。
もし「本なんかまったく読まないから投票なんてしないよ」という子どもたちが全人口の半分いたとしても、12万8,055人は少ない数字です。
以前の記事にも書いたように、出版社がポプラ社1社のままこの選挙を続けるよりも他の出版社と合同で開催したほうが、より効果は大きくなるのではないかなと思います。
とは言え、初めての試みとしては十分な成功を収めたといえるのではないでしょうか。
今回、ピースの又吉さんやヨシタケさんを起用したことで選挙の”認知度”は高まったはずですので、次回の投票数はもっと増えることが期待されます。