夢の中で夢を見ているような小説。絵画の力、人を動かす芸術の魅力『楽園のカンヴァス』

5.0
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こんにちは、アユム [ @kot_book ] です。

「そこまでくわしくはないけど、美術館で絵を見るのは好き」という人が大半だと思います。

僕もその一人なんですが、そんな人にとってちょうどいい小説が『楽園のカンヴァス』です。

ストーリーの題材はアンリ・ルソーという、あまり一般には知られてない画家なんですが、そこに誰もが知る天才画家パブロ・ピカソが関わってくることで多くの人に読みやすい小説に仕上がっています。

自分がいまどの階層の世界にいるのか、わからなくなるくらい引き込まれる小説です。くわしくレビューします。

ルソー研究者が真贋判定で勝負

ニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーターであるティム・ブラウンは、世界的なコレクターから、ある絵画の真贋鑑定を依頼されます(真贋鑑定とは、本物と偽物を区別すること)。

依頼された作品は、アンリ・ルソーの「夢」。本書のカバーにも使われている作品です。

アンリ・ルソーの「夢」

アンリ・ルソー「夢」

真贋鑑定にはもうひとり、日本から早川織絵という研究者が招かれます。

正しい真贋判定をしたものには、この絵画が譲れられるという条件付きです。

「夢」の真贋判定を巡って、意外な事実が次々と明らかになってきます。その中でも最大の衝撃が、「夢」とピカソの作品が大きく関係しているという事実です。

真贋判定という勝負によって二人の対立構造がハッキリするので、感情的にも非常に読みやすい構成になっています。

そして、ルソーに対する二人の無量の想いが炸裂する描写は、ページをめくる手が思わず止まってしまうほど。

登場人物の心情描写を読むと、原田マハ氏がいかに「夢」、ひいてはアンリ・ルソーに心酔しているかがわかります。

読み手を深淵な場所へいざなう

最初は「芸術がテーマの本だから小難しい話が出てきそうだな」と身構えていたのですが、実際に読んでみるとまったくそんなことはありませんでした。

たしかに、カタカナの人物名は多く出てきますが、読みにくさは感じません。

史実とフィクションが混在しているので、「これはどっちだ?」と考えて読むのは少し大変ですが、気づいたらそんなことどうでも良くなるくらい、物語が面白い。

真贋判定をするにあたって、手がかりとなる謎の古書を読むことになるのですが、この発想がすごいんですよ。

小説を読んでいる時点ですでに物語に引き込まれているわけですが、そこからまたさらに別の物語に読者を引き込んでいくのです。要するに、物語のなかに物語が仕込まれている。

この吸引力は凄まじいと思いました。ただでさえストーリーが面白いのに、そこからもっと深い世界に入り込むわけですから。

夢の中で夢を見ているような感覚。物語から現実世界に戻るまでに、少し時間がかかる感覚を味わいました。「いま、俺はどっちの階層の世界にいるんだ?」と、本気で一瞬わからなくなります。

「ああ、こんなにも奥深くまで読み手を連れて行ってくれる小説が存在するのか」と、あらためて物語の凄さを痛感した作品でした。

この物語に出てくるルソーの人柄の描き方も見事。日曜画家とバカにされながらも、ひたすら絵を書く情熱。お金がない中で、苦心しながらもカンヴァスを向き合ってきた生真面目さ。

これを読めば、誰もがルソーを好きにならずにはいられないはずです。

小説ながら、芸術の知識が学べて面白い

本書は小説でありながら、芸術の知識が丁寧に解説されているので非常に読みやすいです。

と同時に、芸術に関する教養も身につけられるから、社会人にとってもありがたい本だと思います。

ふだん生活していると美術館の運営のことなんか考えもしないですが、僕たちが想像しているよりも遥かに多くの人とお金が動いていることがわかります。

そして、無名のアーティストの展覧会を開催するのがいかに難しいことなのか。その説明が端的でわかりやすい。

アンリ・ルソーのような評価の定まらない画家の大展覧会を開催するのは、一種の賭けのようなものだった。成功すれば、画家の評価が高まり、作品の価値もぐっと上がる。実際、オークションでその画家の作品が突然高騰するような現象も生む。展覧会を開催した美術館と企画したキュレーターの評判も一気に高まる。反対に、失敗すればたちまち美術館とキュレーターの評判は失墜する。

そもそも、美術館の展覧会がどのような経緯で、誰がどんなふうに企画・開催しているのか、あまり知られてませんよね。

そこには美術館はもちろん、美術館で働くキュレーターが大きく関与していることがわかります。

眠った才能・作品を掘り起こし、それを世に広く知らしめるのがキュレーターという仕事の醍醐味なのかなと想像したりもします。

いずれにせよ、僕たちが美術館で芸術を嗜んでいるその裏には、多くの人の想いや行動が隠れていることがわかります。

と、最後は本書のストーリー性とは離れた話題になってしまいましたが、『楽園のカンヴァス』を読むと、原田マハ氏の慧眼と発想の凄さに圧倒されるはずです。底が知れない。

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Profile
Ayumu Yuasa

ライター / 散歩好き
書店員および出版社での仕事を経験後、独立。2013年に読書ブログ「コトビー」を開始しました(月間約10万PV)。2017年より株式会社ミシェルベース代表。本と本屋が好きです。このブログでは読書や書評記事を書いています。英語と洋書のブログ「コトビーENGLISH」も運営中。

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