最近は、有名な文学作品を漫画化したものが多く刊行されています。読んでいない有名文学作品の内容を漫画で簡単に読むことができるのでメリットが多そうですが、実際のところどうなのでしょうか。
今回は『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』を読んで感じた、メリットとデメリットを紹介します。
本書の概要
『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』の著者であるドリヤス工場は、水木しげるタッチの絵を描くことで有名な、パロディ漫画作家です。
本書には、25作品の有名文学作品の漫画が収録されていますが、短編・長編作品がすべて10ページ前後でまとめられています。
この他にも、『定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』『必修すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』が刊行されています。
いずれも、「未読の方が読んだ気になれる」という趣旨の企画のため、好き嫌いが分かれる内容かもしれません。
有名作品を漫画で読むことのメリット
1.作品のあらすじを短時間で理解することができる
有名文学は数えきれないほど沢山ありますが、以下の作品(『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』の収録作品の一部)をすべて読んだことのある人は、意外と少ないのではないでしょうか。
- ・永井荷風『濹東綺譚』
- ・泉鏡花 『高野聖』
- ・田山花袋 『蒲団』
- ・幸田露伴 『五重塔』
- ・樋口一葉 『たけくらべ』
- ・二葉亭四迷 『浮雲』
- ・夢野久作 『ドグラ・マグラ』
- ・堀辰雄 『風立ちぬ』
そのため、「いまさら時間を割いて読む気はしないが、あらすじだけでも知っておきたい!」という人にはとてもおすすめです。
25話の文学作品が収録されているので、沢山の作品の内容を短時間で知ることができます。
2.気軽に読むことができる
何といっても、漫画なので気軽に読むことができます。
「むずかしい言葉づかいで読みづらいし、イメージしづらい」と思うような内容でも漫画なら簡単に読めますよね。
実際に昔、樋口一葉の『たけくらべ』を読もうとしましたが、とても読みづらい文章で挫折してしまった経験があります。
ただ、この漫画なら容易に読むことができました。
3.文学作品を読むきっかけになる
漫画を読み、内容に興味が持つことができれば原作を読んでみようという気になるのではないでしょうか。
気に入った作品があれば、原作を読んでみると新たな発見があるかもしれません。
4.あとで有名文学を読むときに、物語を理解しやすい
大体のあらすじを知っていれば、物語は頭に入ってきやすいものです。
わたしは受験勉強のときに、古典の授業だけではなかなか内容を理解できなかったので、気分転換も兼ねて漫画で古典作品を読んだことがあります。
『源氏物語』を漫画化した『あさきゆめみし』だったのですが、漫画を読んで理解を深めることで、古典の文章の内容が理解しやすくなりました。
有名作品を漫画で読むことのデメリット
1.漫画を読んだだけで、その作品を理解したつもりになる
あくまでも”あらすじ”のみを追うように作られているので、漫画を読んだだけでは原作の良さを理解することはできません。
そのうえ、すべて1人の作家によって漫画化されているわけですから、作家それぞれの文体などの個性は消えてしまっています。
入門編には向いていますが、漫画を読んだだけでその作品について理解したつもりになるのはやめたほうが良いでしょう。
2.心に残らない
内容が薄いため、心には残りにくいです。
作品が次から次へと移り変わるため、登場人物に感情移入しづらく感じました。
何度も読み返すのなら別ですが、何年か経てば内容を忘れている可能性は高いでしょう。
内容をおおまかに知りたい人にはおすすめ
メリットとデメリットの両方を紹介しましたが、どちらかというとメリットの方が多い印象でした。
そして、デメリットは本書に関してのデメリットなので、『まんがで読破』などの漫画には当てはまらない部分もあります。
使い方次第では、勉強に役立てることができるので、お子さんにもおすすめの一冊です。
読もうと思いつつも読めていない有名作品がありましたら、まずは漫画で読んでみてはいかがでしょうか。