皆さんにはお気に入りの本屋がありますか?
本が売れなくなってから、いわゆる近所の本屋は少しずつ姿を消しつつあります。
大型書店が街を占拠する構図は、いまや当たり前のものとなっています。
そんな現状をただ「悲しいね、寂しいね」と嘆くのもいいですが、やっぱり小さな本屋を守るために何かアクションを起こしたい。
そう思った今日、小さな本屋が存在する意味をあらためて問いたいと思いました。
なぜ、街の小さな本屋が求められるのか?
説明はあとまわしにして、まずは結論から。
なぜ大型書店ではなく、街の小さな本屋さんが必要なのか?
2つの理由を、島田潤一郎著『あしたから出版社』(晶文社)の一節から引用したいと思います。
ぼくは、町の本屋さんには、大きな書店にはない、二つの「強み」があると思うのである。ひとつは、小さいからこそ、全ジャンルの本を見られるということだ。(中略)もうひとつは、数がすくないからこそ全部読んでみたい、と思えることだ。(P180)
コンパクトな空間で最大限の興味を集める
1つ目の理由は、あらゆるジャンルの本を1つの空間で楽しめることにあります。
なにげなく本屋をフラフラしているときこそ、思いがけない本に出会ったりするものですよね。
街の小さい本屋は、わずかな歩数でいろいろなジャンルの本に触れることができます。コンパクトでじつにエコロジー。
興味の対象を広げるのに、小さな本屋はピッタリなのです。
読書好き&初心者にも良心的な本屋さん
2つ目の理由は大型書店では果たせない、全ジャンル制覇という希望を抱かせてくれるところにあります。
本が好きな人は、とにかくあらゆるジャンルの本を読みたいという欲求に駆られます。
でも、大型書店ではあまりの蔵書数に意気消沈。「一生かけても全部は読めないんだよな…」と絶望感すら味わうことも。
とくに、これから読書をはじめようとする人にとっては、膨大な点数はかえってプレッシャーにすらなります。
大型書店にも計り知れないメリットがありますが、それでも街の小さな本屋はなくなってはいけない存在なのです。
- ・小さいと、すべてのジャンルを見渡すことができる
- ・ジャンルを横断的に楽しめるので、興味の対象が広がる
- ・数が少ないからこそ、全部読みたいと思える
- ・読書初心者にとっては、読みたい本を探しやすい
空間づくりで変わる、本の魅力
時間があるときに街へ出かけて、本屋を巡ることがあります。
その時にたびたび起こること。それは、前の本屋では惹かれなかったのに、この店にあるこの本にはなぜか惹かれてしまう。という現象。
1つ前の店で見た本と同じタイトルのはずなのに、別の本屋で手にとってみるとなぜか違って見えるのです。
具体的にいえば、前の店ではイマイチだった本が、次の店では良い本に見える、ということ。
本屋によく行くのなら、同じ経験をされてる方もいらっしゃるかもしれません。
なぜ、そんな違いを感じるのでしょうか?
きっとそれは、本屋それぞれが持つ独自の「色」と、それによって生み出される「空間」に答えがあるんじゃないかと思います。
同じ雑誌や本を扱っているのに、その並べ方、棚の作り方、レイアウト、店内の照明が違うだけで何だか別の本に思えてしまう。
これこそが本屋の独自性です。
これは個人的な所感になってしまいますが、本屋の独自性は売り場単位のものではなく、本屋総体としての独自性でなければいけないと思います。
つまり、ジャンルごとの売り場ではなく、本屋に入った瞬間の「あ、この本屋、イイ」という感覚。
それこそが、どの本屋でも同じはずの1冊の本に、新しい価値を乗っけることなんだと思います。
本は値引きができない。だからこそ場を追求したい
本は空間が大事といいますが、もしかしたらこんな疑問を持たれる方もいるかもしれません。
いえいえ、そんなことはありません。
たとえば洋服。これは値引きができます。もちろん、お店の空間づくりは大事ですが、洋服は安くてデザインが良ければそれだけで十分でしょう。
空間 < 価格
一方の本は、これまでの説明の通り、空間が購買行動を左右するので、
空間 > 価格
となります。
値引きができませんので当然の帰結ですが、本は空間や売り方・見せ方がより重要な要素となるのです。
あとがき
空間については人の感じ方によるところが大きいので上手く伝えられているか自信がありませんが、ひとまず記事を振り返りたいと思います。
- 【街の小さな本屋について】
- ・小さいと、すべてのジャンルを見渡すことができる
- ・ジャンルを横断的に楽しめるので、興味の対象が広がる
- ・数が少ないからこそ、全部読みたいと思える
- ・読書初心者にとっては、読みたい本を探しやすい
- ・本屋は値引きできないので、空間づくりが重要になる
以前から「小さい本屋っていいよね!」という意見は持っていたのですが、ずっと明確な要因を見つけられずにいました。
それが先述の『あしたから出版社』にサラッと書いてあって、目からうろこ。すごくイイ本なので、おすすめです。
なにはともあれ、小さな本屋を守るのは大変です。絶滅しちゃうかもしれません。
「小さい本屋いいよね!」という想いを本好きの人が持つことは大前提で、それを出版業界の大きなうねりにつなげないといけません。
できることは少ないかもしれませんが、地道に応援しつづけたいな。そう改めて感じる1日でした。