女性ファッション誌の付録に新たな流れが生まれようとしています。
集英社は女性ファッション誌「MORE」の発売において、女性誌の定番となっている付録が「ついているもの」と、「ついていないもの」を併売することで売り上げを伸ばしています。
同誌の販売実績の前年同期比が2号連続で上昇している。10月28日に発売した「MORE」12月号では、付録「あり版」を初版30万部で、「なし版」を同10万部で発売。「なし版」は2万5000部の重版をかけ、2種合計で42万5000部を発行することになった。(「新文化」第3055号より)
まず初版30万部も刷っていることに驚きなのですが、なにはともあれ、付録「あり版」と「なし版」を併売することで、前年よりも売り上げが伸びていることは間違いないようです。
雑誌を担当する編集者にとって、”付録問題”は非常にむずかしいところです。付録の有無をどう判断すべきなのでしょうか?
女性は「お得感」よりも「中身」を重要視するようになったのか?
付録「あり版」と「なし版」、それぞれの価格についてはどうなっているのでしょうか?
12月号の表紙には人気絶頂の「嵐」を起用。定価は「あり版」が730円、「なし版」が580円に設定されています。
この、150円の価格差をどう捉えるか。
ふつうの感覚からいえば、「いや、150円だったら付録ついてるほうがお得じゃない?」と感じるはずです。恐らく。
しかし、「なし版」が重版をかけるほど売れているわけですから、女性読者がその「お得感」よりも「中身」を重要視していることになります。
付録の「あり・なし論」を語る上では、ここが非常に重要なポイントです。
もちろん、価格が安くてお得だから「なし版」が買われている面もあるかと思いますが、今まで「付録ありき」で売れていた女性誌とはトレンドが変わってきていると推察できます。
それを裏付けるのが以下の記述です。
(「MORE」)6月号では、「あり版」と「なし版」の販売比率は9対1だったが、号を重ねるごとに「なし版」のウェイトが高まっている。(同号より)
よく女性から「付録はもう飽きた」という声を耳にしますが、実際に「なし版」が売れていることがその証左なんだと思います。
女性誌の「付録文化」はこのまま終わっていくのか?
とはいえ、「付録なし」の人気が高まっていることを一括りにはできません。
その理由は以下の3つにあります。
- 1、12月号の表紙は「嵐」だから
- 2、販売台を使って、2種類を大きく展開しているから
- 3、「あり版」と「なし版」で表紙デザインがちがう
まず1についてですが、ジャニーズが表紙になると雑誌は売れます。
「【禁断の真相】ジャニーズが表紙になれば雑誌は本当に売れるのか?」でも書きましたが、「嵐」ひいてはジャニーズの表紙効果は抜群なんです。
2については、2種類あることで書店の売り場を大きく占めることができます。
そうすることで普段よりも「祭り感」が打ち出せるので、必然的に読者の目につくのです。
そして3については、「あり版」と「なし版」では表紙のデザインが異なります。
この写真は例にも挙げている「MORE」12月号の表紙です。
ここからもおわかりいただけるかと思いますが、嵐レベルになると、デザインが異なるので2冊同時に買う読者も出てくるわけです。
(ちなみに引用元のブログを書いている方は自分用と母親用で2冊買ったそうです)
これが売り場に2冊並んでいればインパクト大ですし、ファンなら狂気乱舞必至でしょう。
おのずと売れ数も伸びるわけです。
以上、3つの理由があるので「なし版」が手放しに売り上げを伸ばしているとは言いがたい部分もあります。
とはいえ、付録「なし」版を支持する女性読者が増えていることは間違いありません。
今後は付録ではなくコンテンツの質が今まで以上に重要になってくるでしょう。
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