本屋は全国チェーンから独立系までさまざまあります。
そのなかでも、やはり全国に店舗がある大手書店チェーンは私たちの読書を支えてくれる存在ですよね。
それぞれの書店チェーンの店舗数はどれくらいあるのでしょうか?
今回はチェーン別に店舗数を集計し、ランキング形式で発表したいと思います。
書店の店舗数ランキング・トップ20
書店名 | 本社所在地 | 店舗数 | |
---|---|---|---|
1位 | 未来屋書店 | 千葉県 | 339 |
2位 | 宮脇書店 | 香川県 | 261 |
3位 | くまざわ書店 | 東京都 | 213 |
4位 | 文教堂 | 神奈川県 | 199 |
5位 | 丸善ジュンク堂書店 | 東京都 | 93 |
6位 | 三洋堂書店 | 愛知県 | 89 |
7位 | 明屋書店 | 愛媛県 | 84 |
8位 | 明林堂書店 | 大分県 | 75 |
9位 | リブロ | 東京都 | 69 |
10位 | 紀伊國屋書店 | 東京都 | 68 |
11位 | トップカルチャー | 新潟県 | 67 |
12位 | アミーゴ書店 | 大阪府 | 56 |
13位 | ダイレクトショップ (平和書店) | 滋賀県 | 46 |
14位 | 有隣堂 | 神奈川県 | 45 |
15位 | 精文館書店 | 愛知県 | 44 |
16位 | 文真堂書店 | 群馬県 | 43 |
17位 | ブックファースト | 大阪府 | 41 |
18位 | 啓文堂書店 | 東京都 | 37 |
19位 | フタバ図書 | 広島県 | 36 |
20位 | 三省堂書店 | 東京都 | 34 |
おそらく、出版社や書店で働く人のなかにも、このランキングには驚く人が多いのではないでしょうか。
ひとことで言ってしまえば「知名度と店舗数は必ずしも一致しない」ということを如実に物語っているからです。
日本の出版産業は東京都に集中しており、有力な本屋チェーンの多くが東京都をはじめとする首都圏に本社を構えています。
そういった理由から、全国的な知名度は紀伊國屋書店、未来屋書店、三省堂書店などが勝ち得ているのが現状です。
しかし、店舗数ランキングを見ると宮脇書店、三洋堂書店、明屋書店、明林堂書店など地方の本屋チェーンが上位に名を連ねています。
地方に本社を置く本屋が首都圏に出店するケースもありますが、その多くは地方に店舗があります。
つまり、わたしたちが知らない本屋は全国に点在していて、それぞれが独自に書店業を営んでいることを改めて痛感させてくれます。
個人的に、聞いたことがない書店チェーンを見たり聞いたりするのが大好きです。
自分がまだ知らない本屋が日本にはまだまだたくさんあるんだな、とワクワクさせられます。
本屋の店舗数と売り上げは必ずしも一致しない
店舗数が多ければ、おのずと売り上げも増えるはず。
ついついそう考えがちですが、言うまでもなく店舗数と売上規模が一致するとは限りません。
なぜなら、1店舗あたりの客数や坪数がちがうからです。
本屋の売上高ランキングをご覧いただければさらにわかりやすいですが、日本の書店業界で売り上げ1位を誇る紀伊國屋書店の店舗数は68。そして、売り上げ2位の未来屋書店は339。
この数を比較するだけでも、店舗数と売上高が必ずしも一致しないということが十分に理解できると思います。
未来屋書店はアシーネを吸収して店舗数を大きく伸ばしました。当然その分だけ売上高は上がりますが、アシーネの1店舗あたりの売上規模は決して大きくないため、紀伊國屋書店を追い抜くような結果にはなっていません。
書店によってちがう出店方針
文教堂のやり方とジュンク堂書店のやり方を比較すれば、店舗数に差がある理由を理解しやすいと思います。
文教堂は都心やターミナル駅にはほとんど出店せず、地方や幹線道路沿いに小型〜中型店を構える傾向があります。
一方のジュンク堂書店はご存知のとおり「図書館然」とした圧倒的な蔵書数で勝負するスタイルです。
「なぜ店舗数と売り上げは比例しないのか?」という疑問には、「出店方針にちがいがあるから」というのが、1つの答えになります。
同じに見える書店チェーンでも、じつは企業文化や出店方針に大きなちがいがある。本屋の店舗数からはそんなことも読み取れます。
ほとんどのお客さんは書店名を意識していない。それが現実
書店の名前に対する認知度って、出版業界人と非・業界人でかなり乖離しているんですよね。
わたしは非・業界人の人によく質問することがあります。それは、
「いまパッと思い浮かぶ書店名ってどれくらいある?」
という質問です。
出版業界にいると、紀伊國屋書店や未来屋書店はもちろん、宮脇書店やフタバ図書、さらには勝木書店やニューコ・ワンなんていう書店まで覚えてしまいます。仕事で書店を回る出版社の営業であれば、なおさらです。
しかし、非・業界人に書店の名前を聞いてみると、なかなかショックを受けます。
なぜなら、紀伊國屋書店や未来屋書店、ひねり出して丸善や文教堂などの名前が出てくる程度だからです。
つまり、業界人をのぞくほとんどの人は、書店名を覚えていません。
それくらい、一般のお客さんにとって書店名は意識されていないんですよね。
紀伊國屋書店のブランド力が別格である理由とは?
本という商品はどこで買っても一緒なので、差別化を図るのが困難です。
それに合わせて、書店が画一化されてしまうは仕方がない部分もあります。
しかし、じつは数ある書店チェーンのなかでも紀伊國屋書店だけは特別視される傾向があります。
いろんな人に書店について聞いてみると、返ってくる答えは「紀伊國屋書店は品揃えが良い気がする」という好感的な意見ばかりです。
これは紀伊國屋書店が長い時間と歴史によって築いてきた”ブランド”が、人を惹きつけている証左に他なりません。

さきほどの店舗数ランキングを見ると、そのブランド力や認知度の高さを実感させられます。
だって、日本一有名な書店なのに店舗数は全国10位(68店舗)なわけですから。
店舗数と認知度、さらには売上高は必ずしも比例しないことを、紀伊國屋書店は物語っていると思います。
少ない店舗でも十分に売り上げを立てることができるということは、多くの書店人が再認識するべきことです。
中小の書店(いわゆる街の本屋)が「紀伊國屋書店から学べることなんてない、比べるのはナンセンスだ」と断じるのは早計です。
少ない店舗でどう戦っていくか?大手書店から学べることはもっとたくさんあるのかもしれません。