小説は非日常を手軽に味わえる最高の娯楽です。
ただ、”本を読む”ということに苦手意識を持つ人はまだまだたくさんいます。
やはり大切なのは「自分にとって読みやすい本に出会えるかどうか」です。
そこで今回は、読書に苦手意識を持つ人におすすめしたい作家・奥田英朗(おくだひでお)の小説についてご紹介します。
奥田英朗ってどんな人?
具体的な作品を見ていくまえに、まずは奥田英朗という人物について簡単にふれていきましょう。ごくごく簡単に紹介すると、こんな感じです。
- 奥田英朗(おくだひでお)
- 1959年10月23日 岐阜県岐阜市生まれ
- ・雑誌編集者、コピーライターを経て小説家になる
- ・デビューのキッカケは出版社への持ち込み
- ・『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞
代表作は「伊良部シリーズ」です。ざっくり説明すると、精神科医の伊良部一郎が患者の悩みを奇想天外な方法で解決していく、というお話です。
ちなみに「伊良部シリーズ」の2作目となる『空中ブランコ』は2005年に阿部寛主演でドラマ化されています。
直木賞を受賞している作家ということもあり、知名度と実績は申し分ありません。
さて、そんな奥田英朗の小説がなぜ読書初心者におすすめなのか?その理由を見ていきましょう。
奥田英朗の小説を初心者におすすめする3つの理由
- ・漢字やむずかしい表現が少ない
- ・余計な情景描写がない
- ・テーマが身近
漢字やむずかしい表現が少ない
読書に苦手意識を持つ人のなかには「漢字が得意ではない」「文学的な表現がよくわからない」という人もいます。そんな人に、むずかしい漢字や難解な表現ばかりの小説を読ませるのは酷というもの。
奥田英朗作品はむずかしい漢字や文学的な表現が少なく、非常にスラスラ読みすすめることができます。
実際、過去のインタビューで奥田氏は自分の作品について以下のように語っています。
たしかに僕はあまり漢字を使わないかもしれないですね。いかにも文芸といった言葉は使いたくないというのもあります。(WEB本の雑誌「作家の読者道」より)
「小説を読むからにはむずかしい漢字や表現を体感したい」というのはあくまでも”玄人向け”の考え方に過ぎません。
これから読書をスタートさせたいという人には、わかりやすい言葉でつくられた作品のほうがいいわけです。
余計な情景描写がない
まずは以下の文章をお読みください。
門は冷えた空気の中でそびえ立ち、楢崎を試すように、何かの判決を下すように見下ろしている。門を見上げ、楢崎は自分の身体の小ささを意識していた。すぐ入る覚悟がなく、門を通り過ぎる。瓦のついた高い土壁で覆われ、中の様子を見ることはできない。
これは中村文則『教団X』のなかに出てくる文章です。
いかがでしょう。小説をよく読む人にとってはなんてことない文章ですが、読書初心者にとってはむずかしく感じられるでしょう。
こうした情景描写は小説に深みを与えるわけですが、作品が抽象的でわかりづらくなるという副作用もあります。
読書が苦手な人に、こうした情景描写が多い小説は向きません。もっと端的に、ストーリーと直接関係のある表現が続いたほうが絶対に読みやすいのです。
奥田英朗作品の多くは、こうしたわかりづらい情景描写がありません。ストーリーの本筋を追える文章が続くので、飽きずに読むことができます。
情景描写や文学的な表現は読者の想像力を試すものですが、読書に不慣れな人はそもそも想像力が乏しい傾向にあることを忘れてはいけません。
いい意味で”読者の想像を許さない”というのは、小説の入門にはうってつけというわけです。
テーマが身近
奥田英朗作品の多くはテーマがわかりやすく、日常生活とリンクしているような小説が多く揃っています。
その最たる作品が『我が家の問題』という小説です。タイトルが示すとおり、家族のなかで起きるさまざまな問題をゆったりとしたペースで前向きに解決していく短編小説です。
なにより素晴らしいのは、読み終わったあと”スカッと爽快な気分”にさせてくれること。これは奥田英朗の真骨頂と言えるかもしれません。
非日常を味わうのは小説の醍醐味ではありますが、さきほど説明したようにそれはあくまでも”想像力が豊かな人”向けの楽しみ方に過ぎません。
これから読書を始めたい人には、やはり身近で日常的なテーマの作品のほうが挫折なく本を楽しめるでしょう。
読書初心者におすすめの奥田英朗作品5選
短編小説が多いですが、読書が苦手な人はやはり短編のほうがおすすめです。ダラダラと話が続くよりは、短くスパッと終わる作品のほうが読みやすいでしょう。
日常的に感じる不満や悩みを扱うことも多い奥田英朗作品は、その読後感の良さから生活を豊かにしてくれる作用すらあります。
「今度こそ読書をするぞ」「小説を読んでみたい!」という人には、奥田英朗作品を強くおすすめします。