カバーデザインが古い雰囲気ムンムンの本を手に取る。奥付を見るとやっぱり昔の本。
本のカバーデザインは不思議なもので、それを見ただけで直感的に時代を感じることができたりします。
そこで今回は過去に売れた本「年間ベストセラーランキング」から何点かピックアップして「年代別カバーデザイン比較」なるものを試みようと思います。データはすべてトーハンの年間アーカイブより。
1990年代のベストセラー編
まずは1990年代のベストセラーから比較してみましょう。
懐かしい作品の数々。若い人にとっては知らない本ばかりかもしれません。
1991年 年間ベストセラー第1位
まずは1991年の年間ベストセラーから。
『愛される理由』二谷友里恵(朝日新聞社)です。
正直、最初は「いったい何者?」と思ったんです。
それで調べてみたら…郷ひろみの元妻なんですね。まったく知らない年代なので驚きでした。
離婚してからは、郷ひろみの暴露本『ダディ』で色々と揉めて大変だったようです。
1994年 年間ベストセラー第1位
1994年に最も売れた本。
『日本をダメにした九人の政治家』浜田幸一(講談社)です。
何ともシンプルなデザイン。
今は白地に黒文字というテイストが売れ筋のデザインでは多いですが、質感が何とも時代を感じさせます。
1996年 年間ベストセラー第1位
次は1996年に最も売れた本。
『脳内革命』春山茂雄(サンマーク出版)です。
410万部を売り上げた驚異のベストセラーです。
著者の春山茂雄さんは、この本で得た収益をもとに健康テーマパークや高級人間ドッグを開業しましたが、数年で閉鎖。
所得隠しや裁判沙汰など、色々と話題を呼んだ本でもあります。
1999年 年間ベストセラー第1位
続いては1999年に最も売れた本。
『五体不満足』乙武洋匡(講談社)です。
初めて見た時の衝撃は今でも忘れらません。
Amazonでの一部酷評はさておき、この本は多くの人に障害について改めて考えさせてくれました。
2000年代のベストセラー編
続いては2000年代を見て行きましょう。少しずつ見慣れた本が多くなってきます。
2000年 年間ベストセラー第1位
さて、2000年です。
『だから、あなたも生きぬいて』大平光代(講談社)は累計260万部突破のベストセラーとなりました。
「いじめによる自殺未遂」「非行」「極道の妻」…壮絶な人生から29歳で司法試験に合格するという異色の経歴が話題を呼びました。
わたし自身、この本は小学校時代に課題図書として選ばれたのでよく覚えています。
大きなメガネに時代を感じます。
2001年 年間ベストセラー1位、3位の場合
次は2001年ですが、2点まとめて紹介します。
まずは第1位『チーズはどこへ消えた?』スペンサー・ジョンソン(扶桑社)。
そして第3位の『金持ち父さん 貧乏父さん』ロバート・キヨサキ(筑摩書房)。
この2点に共通するのは翻訳ビジネス書であること。
そしてカバーデザインのテイスト。イラストのユルさというか軽さというか。
このあたりから翻訳ビジネス書が幅を利かせるようになってきます。
ちなみに『金持ち父さん貧乏父さん』の帯に「震源地アメリカ」とありますが、今の日本では絶対に書けない表現でしょう。
このあたりにも時代を感じられます。
2005、2006、2007年のベストセラー1位の場合
まとめて3冊紹介します。
まずは2005年の第1位『頭がいい人、悪い人の話し方』樋口裕一(PHP新書)。
次に2006年の第1位『国家の品格』藤原正彦(新潮新書)。
そして2007年の第1位『女性の品格』(PHP新書)。
まず感じるのは”新書強し”です。
『バカの壁』が2003年に年間ベストセラー第1位を獲得していますが、1991年の統計以来、3年連続で新書が年間第1位を獲得するのは初めてのこと。
これは推測ですが、本にお金をかけたくない読者が値段の低い新書を選ぶことが自然な流れとなり、それが出版業界全体の売り上げ金額減少につながっているのかもしれません。
2010年代のベストセラー編
さて、いよいよ終盤。
記憶にも新しい2010年代のベストセラーを見ていきましょう。
2010年のベストセラー1位の場合
まずは2010年のベストセラーです。
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』岩崎夏海(ダイヤモンド社)。
ご存知「もしドラ」です。
アニメ画の強烈なインパクトとドラッカーの経営書をマッチングさせた衝撃作。
2013年7月現在で発行部数は255万部で、映画にもなりました。
ちなみにカバーデザインはデジカルが手がけています。
2011年のベストセラー第1位
次は2011年です。
本屋大賞を受賞した『謎解きはディナーのあとで』東川篤哉(小学館)が第1位でした。
カバーデザインはイラストレーターの中村佑介さんが手がけています。
内容的にはAmazonで酷評されていたりもしますが、商業的には大成功を収めた作品です。
2012年のベストセラー第1位
そして2012年。
『聞く力―心をひらく35のヒント』阿川佐和子(文春新書)です。
週刊文春で20年以上、のべ1000人以上のインタビューをしてきた経験をまとめた本書。
購買層は40代の女性が最も多いのが特徴です。
続編として『叱られる力 聞く力 2』も発売されています。
2013年のベストセラー第1位
さて、いよいよラストの2013年。
『医者に殺されない47の心得』近藤誠(アスコム)です。
タイトルのインパクト、帯のキャッチコピー。
そして何より「金スマ」での紹介。
これらの要素が組み合わさり圧倒的な売れを見せました。
この本を境に、実用書のカバーは「白地に黒文字、アクセントに赤文字。赤い帯」というトレンドが発生しました。
まとめ
1990年代から2010年代まで駆け足で紹介してまいりました。
こうして振り返ってみると、ベストセラーになる本のジャンルは毎年違っています。
その年がどんな年で、日本がどんなことに困っていたのか、どんな事で盛り上がっていたのかを感じることができます。
今年も残すところあと半年。2014年のベストセラーは一体何になるのでしょうか?
今から予想してみるのも楽しいかもしれませんね。